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公売公告処分の取消しを求める訴えの利益は、公売が不成立になれば失われるのか 滞納処分・公売をめぐる行政訴訟の実務

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公売公告処分の取消しを求める訴えの利益は、公売が不成立になれば失われるのか 滞納処分・公売をめぐる行政訴訟の実務

公売公告処分の取消しを求める訴えの利益は、公売が不成立になれば失われるのか 滞納処分・公売をめぐる行政訴訟の実務

2026/06/22

公売公告処分の取消しを求める訴えの利益は、公売が不成立になれば失われるのか

滞納処分・公売をめぐる行政訴訟の実務

要  旨

滞納国税の換価として行われる公売の手続では、税務署長(国税局長)が公売公告を行う。この公売公告処分の取消しを求める訴訟において、国側は、しばしば本案に入る前の段階で、「当該公売は入札者がなく不成立となったから、公売公告はその効力を失い、これを取り消しても回復すべき法律上の利益はない」と主張し、訴えの利益の不存在を理由とする却下を求める。その典型的な根拠として援用されるのが、東京地判平成24年3月13日(租税関係行政・民事判決集(徴収関係判決)平成24年順号24-17)である。

しかし、この主張は、公売公告処分が当該一回の公売の不成立後もなお残す継続的な法的効果を見落としている。国税徴収法107条2項は、再公売をする場合には公売公告の期間を短縮することができると定める。この特則は、先行する公売公告処分が現に行われたことを当然の前提とするものであり、先行処分が存在する限り、滞納者は、再公売において本来の手続的保護(公告期間)を縮減され得る法令上の地位に置かれ続ける。違法な先行処分を取り消せば、次の公売はもはや「再公売」ではなく当初の公売となり、滞納者は徴収法95条1項本来の公告期間の保障を回復する。この「縮減効」からの解放を求める利益こそ、行政事件訴訟法9条1項括弧書にいう「処分の取消しによって回復すべき法律上の利益」にほかならない。

本稿は、まず公売手続の仕組みと公売公告処分の意義を確認し、平成24年判決の判示とその射程を検討する。次いで、同判決が考慮していない縮減効を国税徴収法107条2項に即して示す。そのうえで、最高裁判所判例とその調査官解説を中心に現在の訴えの利益の解釈論を整理し、公売公告処分の取消しを求める訴えの利益が、形式的な公売不成立によって当然に失われるものではないことを論じる。

第1 はじめに

行政処分の取消訴訟では、本案の当否を論じる前に、そもそもその処分を取り消す実益があるか、すなわち訴えの利益(狭義の訴えの利益)が問われる。これは、違法な処分について司法審査の扉を開くか閉ざすかを決する入口の問題である。これを安易に否定することは、誠実に納税の協議を続けてきた滞納者から、違法な処分を是正する機会を奪い、憲法32条が保障する裁判を受ける権利を実質的に損なうことになりかねない。

公売公告処分の取消訴訟においては、国側が、公売が不成立に終わったことを捉えて、訴えの利益の消滅を主張することがある。本稿は、この主張の根拠とされる東京地判平成24年3月13日の判示を検討し、そこで見落とされている継続的効果(縮減効)を示したうえで、現在の訴えの利益の解釈論に照らして、訴えの利益が当然には失われないことを明らかにするものである。

第2 公売手続の仕組みと「公売公告処分」

滞納処分による換価としての公売は、国税徴収法の各条文を根拠とする一連の手続として段階的に進行する。まず、差押財産を換価するときはこれを公売に付さなければならない(徴収法94条1項)。公売に付するときは、公売の日の少なくとも10日前までに、公売財産の名称、公売の方法、日時、場所等を公告しなければならない(同法95条1項。公売公告)。あわせて、見積価額が公告され(同法98条)、滞納者等に対しては公売の通知がされる(同法96条1項)。その後、最高価申込者の決定(同法104条1項)、売却決定(同法111条)を経て、買受人が買受代金を納付することにより財産の権利が移転する(同法116条)。

ここで重要なのは、公売公告の手続的意義である。公売公告は、買受希望者に対して情報を周知し、高価有利な買受けの申込みを誘引することを目的とするにとどまらない。10日以上の公告期間は、滞納者に対し、その間に任意の納付、換価の猶予の申請(徴収法151条・151条の2)、分割納付の協議、担保の提供、第三者による弁済、対象財産の任意売却による弁済等の手段を講じて、公売による財産の喪失そのものを回避する最終的かつ実質的な機会を保障する手続的保護としての意義を有する。

そして、公売に付しても入札者等がないときは、税務署長(徴収を引き継いだ国税局長を含む。)は、更にその財産を公売に付するものとされ(徴収法107条1項。再公売)、この再公売をする場合には、必要があると認められるときは公売公告の期間を短縮することができる(同条2項)。後に述べるとおり、この再公売の特則が、本稿の中心となる。

第3 先例(東京地判平成24年3月13日)の判示

国側は、訴えの利益を争う場面で、おおむね次のように主張する。すなわち、徴収法107条1項が、公売に付しても入札者がないときは更に公売に付する旨を定めていることからすると、公売に付しても入札者がなく公売が成立しなかったときは、当該公売に係る公売公告や見積価額の公告はその効力を失い、これらの公告がされたことを理由として滞納者に法律上の不利益が生じるおそれもない、というものである。その根拠として援用されるのが、東京地判平成24年3月13日(租税関係行政・民事判決集(徴収関係判決)平成24年順号24-17)である。

もっとも、この判決の位置づけは、慎重に見ておく必要がある。第一に、同判決は地方裁判所の判決にすぎず、訴えの利益に関する最高裁判所の判例を変更するものではない。第二に、同判決は、徴収関係の判決を収録した専門の判決集に登載されたものであって、判例時報・判例タイムズ等の一般の公刊物では全文を容易に確認できない。第三に、そして最も重要な点として、同判決は、当該一回の公売が不成立となったことにより当該公売に係る公告がその効力を失うことを述べるにとどまるとみられる。後述する徴収法107条2項による再公売の公告期間の短縮という、先行公告の継続的・手続的効果を考慮したうえで訴えの利益を否定したのかは、判文上明らかでない。これを考慮していないのであれば、同判決の射程は当該一回の公売の不成立にとどまり、継続的効果が問題となる事案を拘束する先例とはならない。

構造的にみれば、平成24年判決は、処分の効果が執行や目的の達成によって尽きれば訴えの利益も消滅するという「効果が尽きる」類型の発想に立つものといえる。建築確認に係る工事の完了後は確認の取消しを求める訴えの利益が失われるとした最判昭和59年10月26日(民集38巻10号1169頁)が、その典型である。問題は、公売公告処分がこの「効果が尽きる」類型に属するのか、それとも継続的な法的効果を残す類型に属するのか、である。

第4 平成24年判決が考慮していない「縮減効」(国税徴収法107条2項)

本稿の核心は、次の一点にある。すなわち、徴収法107条2項の公告期間短縮の特則は、その文言上も論理上も、「再公売」であること、言い換えれば先行する公売公告処分が現に行われたことを、その適用の当然の前提としている。先行する公売公告処分が存在するからこそ、次の公売は「再」公売となり、滞納者の手続的保護である公告期間を短縮し得るのである。

この前提を裏返すと、公売公告処分が違法として取り消され、存在しなくなった場合には、その財産について次に行われる公売は、もはや法的には「再公売」ではなく、当初の公売にほかならない。したがって、徴収法107条2項の公告期間短縮の特則は適用される余地がなく、処分庁は、徴収法95条1項本来の公告期間(10日以上)を完全に保障しなければならない。

以上の仕組みからすれば、先行する公売公告処分が存在する限り、滞納者は、将来の再公売において公告期間を短縮され、本来享受すべき手続的保護を縮減され得るという、法令上の不利益な地位に置かれ続ける。そして、公売公告処分の取消しは、この不利益な地位を解消し、本来の公告期間の保障を回復させる。これこそ、行政事件訴訟法9条1項括弧書にいう「処分の取消しによって回復すべき法律上の利益」そのものである。公売不成立により一切の法的不利益が消滅したという理解は、徴収法107条2項が、先行公告の存在を前提として滞納者の手続的保護を縮減し得る仕組みを正面から看過するものといわざるを得ない。

要するに、公売には、本来、徴収法95条1項の10日以上の公告期間という原則的な手続的保障がある。違法な先行処分が存在することによって初めて、その原則的手続が、徴収法107条2項の特則により短縮され得るのである。だとすれば、違法な先行処分を取り消して排除すれば、滞納者は、その財産について次に行われる公売において、短縮されない本来の公告期間による手続的保障をあらためて受けられることになる。違法な先行処分を取り消す実益は、まさにこの点にある。これが、平成24年判決の判示において考慮の外に置かれている「縮減効」である。

第5 現在の「訴えの利益」の解釈論

1 判断の枠組み(行政事件訴訟法9条1項括弧書)

行政事件訴訟法9条1項は、処分の取消しの訴えを提起できる者を、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限るとしたうえで、括弧書において、「処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む」と定める。これは、通常は処分の効力が消滅すればその取消しを求める利益もなくなると考えられるところ、処分の効力が消滅しても、その取消しによって回復すべき法律上の利益があれば適法に訴えを提起できることを定めたものであり、一般に狭義の訴えの利益を定めた規定と解されている(南博方ほか編「条解行政事件訴訟法〔第5版〕」)。

狭義の訴えの利益の存否は、判決の時点において、処分が取消判決によって除去すべき法的効果を有しているか否か、処分を取り消すことによって回復される法的利益が存在するか否かという観点から検討される。ここで回復されるべき利益には、実体的な権利利益のみならず、後述するとおり、法令上保護された手続的地位も含まれる。

2 最判平成27年3月3日と調査官解説の類型論

処分の効果が形式的に消滅した後の訴えの利益について、現在の解釈論の中心に位置するのが、最判平成27年3月3日(民集69巻2号143頁)である。これは、風俗営業の営業停止命令について、処分基準(公安委員会規程)が、過去3年以内に営業停止命令を受けた者に対する後続の営業停止命令の量定を、過去の処分回数に応じて加重し、その期間を延長する旨を定めていた事案である。最高裁は、行政手続法12条1項により定められ公にされた処分基準には行政庁がこれに従って処分すべき自己拘束力があるとしたうえで、当該処分基準の定めにより加重(期間の延長)という不利益な取扱いを受けるべき期間内は、なお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有すると判示し、訴えの利益を肯定した。

この判決の調査官解説(市原義孝・最高裁判所判例解説民事篇平成27年度(上)61頁)は、処分の効果が消滅した後の訴えの利益について、次の類型論を示す。すなわち、(ア)処分を受けたことが名誉・信用等の事実上の不利益にとどまる場合(訴えの利益は否定される)、(イ)不利益な取扱いを認める法令の規定がなく、事実上の情状として考慮され得るにとどまる場合(同じく否定される)、(ウ)処分を受けたことを将来の処分の加重事由とするなど、不利益な取扱いを認める法令の規定がある場合(肯定される)、という整理である。さらに同解説は、ウ類型には、過去に処分を受けたことが特定の資格の欠格事由とされ、又は特定の処分の積極若しくは消極の要件とされている場合も含まれるとする(小早川光郎・別冊ジュリスト〔医事判例百選〕172頁参照)。

3 法令上の前歴・加重の仕組み(最判昭和55年11月25日ほか)

右の類型論は、平成27年判決に始まるものではなく、先行する判例の蓄積の上にある。最判昭和55年11月25日(民集34巻6号781頁)は、運転免許の効力停止処分について、処分後1年間を無違反・無処分で経過し、道路交通法施行令の定める前歴としての加重効果が消滅した後は、訴えの利益が消滅するとした(否定例)。その論理を裏返せば、前歴加重という法令上の仕組みにより、先行処分を理由とする不利益な取扱いを受けるおそれが残る期間内は、訴えの利益は消滅しないことになる。

また、最判昭和58年4月5日(判例時報1077号50頁)は、弁護士に対する業務停止処分の後、会の規程によって一定期間被選挙権を失うという関係に着目し、業務停止期間の経過後も訴えの利益を肯定した(肯定例)。団体の自治規範に基づく関係であっても、法律上の関連性が認められたものである。さらに、最判昭和41年11月15日(民集20巻9号1792頁)は、保険医指定取消処分について制度の廃止により訴えの利益を否定したが、その論理(先行処分が後続処分の欠格事由・消極要件とされ、又は先行処分により不利益な結果が当然に生ずる場合には訴えの利益が肯定される)の反対解釈として、本件のように先行処分の存在が後続手続における不利益取扱いの基礎となる場合には、訴えの利益が肯定されるべきことが導かれる。

4 継続的な法的効果を残す類型(最判平成27年12月14日)

処分が継続的な法的効果を有する場合には、後続の事実によって処分の効果が形式的に消滅したように見えても、訴えの利益は消滅しない。この点は、開発許可の取消しを求める訴えの利益に関する一対の最高裁判例に明らかである。最判平成5年9月10日(民集47巻7号4955頁)は、市街化区域における開発許可について、工事完了・検査済証の交付後は、用途地域の規制に従う限り建築は原則として自由であり、開発許可を取り消しても建築は妨げられない(効果が尽きる)として、訴えの利益が消滅するとした。

これに対し、最判平成27年12月14日(民集69巻8号2404頁)は、市街化調整区域における開発許可について、開発許可が建築の原則的制限を解除し予定建築物の建築を適法とする法的効果を有し、その効果が工事完了・検査済証の交付後も存続する(取り消されれば予定建築物を適法に建築することができなくなる)として、訴えの利益が存続するとした。両者を分けるのは、処分が継続的な法的効果を残すか否かである。事実上の原状回復が困難であることと訴えの利益とは区別され、土地改良事業施行認可について工事完了後も訴えの利益を認めた最判平成4年1月24日(民集46巻1号54頁)も、同じ発想に立つ。

5 手続上の地位も直接の法的効果に含まれること(最判昭和38年6月4日・最判平成17年7月15日)

先行する行政上の行為を受けたこと自体が、後続の処分ないし手続における不利益な地位の前提となっている場合、その先行行為には、後続手続上の地位の変動という直接の法的効果が生じる。最判昭和38年6月4日(民集17巻5号670頁)は、保険医に対する戒告について、戒告理由が重なることにより一層不利益な指定取消しを受けるという関係に着目して、戒告それ自体に直接の法的効果を認めた。最判平成17年7月15日(民集59巻6号1661頁)も、病院開設中止の勧告が、これに従わない場合に保険医療機関の指定を受けられないという後続の不利益に連なることを理由に、勧告に処分性(直接の法的効果)を認めている。

処分性にいう法的効果に後続手続上の地位が含まれる以上、これと表裏をなす訴えの利益(行訴法9条1項括弧書の「回復すべき法律上の利益」)の場面においても、手続上の地位は当然に法律上の利益に含まれる。

6 手続的権利の裁判上の保護(最判昭和46年10月28日・最判平成23年6月7日)

行政法上、手続的権利は、それ自体が裁判による保護の対象とされている。最判昭和46年10月28日(民集25巻7号1037頁。個人タクシー事件)は、申請者には公正な手続によって許否につき判定を受ける法的利益があるとして、その手続的利益の侵害を理由に処分を違法とした。最判平成23年6月7日(民集65巻4号2081頁。一級建築士免許取消処分)は、行政手続法14条1項の定める理由提示を受けるという手続的権利の不備それ自体を理由に処分を違法とした。これらの判例は、法定された手続による取扱いを受ける利益が、単なる反射的利益にとどまらず、裁判上保護される法律上の利益であることを示している。

第6 公売の事案への当てはめ

1 所有権を失っていない段階の公告処分

まず、公売公告処分のうち、滞納者がいまだ対象財産の所有権を失っておらず、公告処分の効果が現に存続しているもの(売却決定前の段階にあるもの、最高価申込者の決定後に審査請求等により売却決定以後の手続が停止されているもの等)については、公告の取消しによって売却決定・権利移転を阻止すべき法的利益が現に存する。これらは、行政事件訴訟法9条1項本文により当然に訴えの利益が存続する事案であって、効果消滅後の訴えの利益の類型論を論じるまでもない。国側の本案前の主張は、そもそもこれらの処分には及ばない。

2 公売が不成立となった公告処分

次に、公売が不成立となった公告処分についても、回復すべき法律上の利益が消滅したとは直ちにいえない。前述のとおり、徴収法107条2項により、先行する公売公告処分の存在は、再公売における公告期間の短縮という手続的不利益の基礎となる。これは、先行処分を受けたことが後続手続における不利益取扱い(手続的保護の縮減)の法令上の根拠となる関係であり、最判平成27年3月3日のウ類型に対応する構造を有する。

しかも、本件で滞納者の手続的保護を縮減し得る根拠は、行政規則たる処分基準ではなく、徴収法107条2項という法律そのものである。行政規則の自己拘束力によってすら法律上の関連性が肯定された平成27年判決の事案に照らせば、法律そのものに基づく場合に、より強固な法律上の関連性が肯定されることは、判例理論の当然の帰結である。また、公売公告処分が再公売の手続的基盤として継続的に作用する法的効果を残す点は、効果が存続する類型(市街化調整区域の開発許可に関する最判平成27年12月14日)に対応するものであって、効果が尽きる類型を前提とする平成24年判決の発想とは事案を異にする。

3 縮減される手続的保護の重大性

徴収法107条2項の特則によって短縮されるのは、徴収法95条1項が定める公告期間である。この期間は、単なる事務上の周知期間ではなく、滞納者にとって、公売による財産の喪失を回避するための最終かつ実質的な機会を保障するものである。公告期間が短縮されれば、任意納付・換価の猶予の申請・任意売却等の回避手段を講じる時間的余地が奪われ、滞納者の防御の機会が実質的に縮減される。あわせて、買受希望者への周知期間が短くなることにより、入札参加者の確保が妨げられ、財産が不当に低廉な価額で売却される危険も高まる。

ここで縮減される利益の重大性は、運転免許の効力停止や営業停止における不利益とは性質を異にする。免許の停止も営業の停止も、一定期間の制限にとどまり、期間の経過により原状が回復する。これに対し、公売は、所有権そのものを強制的かつ終局的に剥奪する処分であり、買受人への権利移転がされれば、その回復は事実上も法律上も困難となる。しかも、運転免許の前歴加重や処分基準による加重が時間の経過により消滅するのに対し、徴収法107条2項の公告期間短縮には、そのような期間制限がない。先行する公売公告処分が存在し、対象財産が再公売の対象であり続ける限り、特則の適用可能性は継続する。

4 憲法的視座(手続的保障と裁判を受ける権利)

国税の滞納処分(公売)については、国税通則法74条の14第1項により、行政手続法第3章(不利益処分。聴聞又は弁明の機会の付与)の規定が原則として適用除外とされている。もっとも、この適用除外は、大量・回帰的に行われる税務処分の特殊性に基づく便宜であって、滞納者の手続的権利を軽視してよいとする趣旨ではない。むしろ、行政手続法上の告知・聴聞が及ばない滞納処分手続においては、徴収法が定める公売公告(95条)及び公売通知(96条)こそが、滞納者に法律上保障された数少ない手続的保護であり、その意義は一層重い。

財産を強制的に剥奪する処分について、告知・弁解・防御の機会を確保すべきことは、憲法上の要請でもある。最大判昭和37年11月28日(刑集16巻11号1593頁。第三者所有物没収事件)は、所有物を没収するにつき、その所有者に告知・弁解・防御の機会を与えることなく所有権を奪うことは、適正な法律手続によらずに財産権を侵害するものであって、憲法31条及び29条に違反すると判示した。制限される権利利益が重大であるほど手厚い手続的保障が要請されることは、事前手続の要否を諸事情の総合較量により決すべきものとした最大判平成4年7月1日(民集46巻5号437頁。成田新法事件)の趣旨にも沿う。公売による財産の終局的な剥奪は、期間の経過により回復する制限とは次元を異にする重大な権利制限であり、これに対応する手続的保障の縮減は、軽微な事柄として看過し得るものではない。

以上に照らせば、公売が不成立に終わったという一事をもって訴えの利益を否定し、違法な公売公告処分に対する司法審査の途を閉ざすことは、行政事件訴訟法9条1項括弧書が形式的な効果の消滅をもって司法救済を打ち切ることの不当を避けた趣旨に反し、憲法32条が保障する裁判を受ける権利を実質的に制約することにつながりかねない。

第7 結びに代えて

公売公告処分の取消訴訟において、国側が公売の不成立を理由に訴えの利益の消滅を主張し、東京地判平成24年3月13日を援用することがある。しかし、同判決は地方裁判所の判決であって、徴収法107条2項による再公売の特則が先行公告の存在を前提に滞納者の手続的保護を縮減し得るという継続的効果(縮減効)を考慮した形跡はうかがわれず、その射程は当該一回の公売の不成立にとどまるとみるのが相当である。

現在の訴えの利益の解釈論、とりわけ最判平成27年3月3日とその調査官解説が示す類型論、継続的な法的効果を残す処分について訴えの利益を肯定する一連の判例、そして手続的地位・手続的権利を法律上の利益として保護する判例の蓄積に照らせば、公売公告処分の取消しを求める訴えの利益は、形式的な公売の不成立によって当然に失われるものではない。滞納者の手続的保護と裁判を受ける権利を守る観点からは、この入口の問題を丁寧に争う実益がある。公売をめぐる紛争においては、本案の主張のみならず、訴えの利益という入口の構えにも、十分な目配りが求められる。

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