Case
数々の事例に裏付けられた豊富な解決実績
弊所では難関事件に果敢に挑み、実務に一石を投じたものも少なくありません。
「現代の弁護士像 社会を変えるプロフェッショナル達」の第1弾に抜擢された実力の一端をご紹介します。
【不法就労助長罪】入管法違反で不起訴
【相談前】
相談者は、株式会社で正社員として勤務していました。
この会社の店舗責任者は、就労資格を確認しないまま、就労資格を有しない外国人を雇用して、業務に従事させていました。
相談者は、平社員であり、採用担当者でもないため、不法就労助長をした認識はありませんでした。
ただし、相談者の方は、不法就労の外国人に対して、寮としてマンションの一室を提供してしまったのです。後にこの行為が引き金となって、あるとき、相談者は、不法就労助長の容疑で逮捕されてしまったのです。
【相談後】
不法就労助長罪は成立が非常に緩やかな犯罪です。
当職は、相談者から事情聴取し、不起訴処分を獲得するため、弁護を展開しました。
このケースでは、相談者の認識は別として、不法就労の外国人に対して、寮としてマンションの一室を提供してしまった行為が、不法就労助長罪の1つ、幇助行為に該当する可能性を秘めていました。実際に、過去の裁判例でも、同様の行為について、不法就労助長の成立を認めた例もあります。したがって、このケースの場合では、客観的に相談者が幇助行為に該当することを争うことは難しいと考え、相談者の主観等を徹底的に争うことにしたのです。
当職の主張は、①そもそも、相談者は、不法就労助長罪の主体となる「外国人との関係で優位な立場」には該当せず、ほぼ対等な立場に過ぎないため、不法就労助長罪の対象とならないこと、②相談者は、採用担当者ではないため、外国人の在留カードを確認する義務がなく、不法就労の認識を有しないこと等を徹底的に論じました。
その結果、相談者は、不起訴処分を獲得することができました。
【松村大介弁護士からのコメント】
弊所では、不法就労助長に関する弁護を勢力的に扱い、メディアでも不法就労助長罪の成立範囲に対して問題提起をしています。
不法就労助長罪は非常に成立の緩やかな犯罪類型であり、事前の防御活動が非常に重要になりますので、早期に弁護士に相談する必要があります。
ご自身に不利益な判例、先例でお困りの方は、難関事件で徹底的に戦ってきた実績がございますので、是非ご相談ください。
【不法就労助長罪】起訴が見込まれる限界事例を略式命令(罰金)で解決
【相談前】
相談者は、中華物産店の現場責任者(勤務)として勤務していました。相談者は、経営、財務管理、採用判断などほぼ全ての業務を担っていました。
相談者は、就労資格を確認しないまま、就労資格を有しない外国人を雇用して、業務に従事させていました。その期間は3年から5年に及び、不法就労助長事件の中では比較的、違反期間が長期間に及ぶものでした。
【相談後】
不法就労助長罪は成立が非常に緩やかな犯罪です。
当職は、相談者から事情聴取し、最大限、相談者に有利な処分を獲得するため、弁護を展開しました。
量刑分析をしたところ、このケースは違反期間が長期間に及ぶものであったため、起訴されて拘禁刑が予想されるほど悪質な部類に入っていることが判明しました。当職は、相談者に認める部分と否認する部分を正確にアドバイスし、検察官に対しては略式命令(罰金)にするよう力強く交渉しました。
その結果、相談者は、起訴されることなく、略式命令(罰金)50万円に処分で終結したのです。
【松村大介弁護士からのコメント】
弊所では、不法就労助長に関する弁護を勢力的に扱い、メディアでも不法就労助長罪の成立範囲に対して問題提起をしています。
不法就労助長罪は非常に成立の緩やかな犯罪類型であり、事前の防御活動が非常に重要になりますので、早期に弁護士に相談する必要があります。
ご自身に不利益な判例、先例でお困りの方は、難関事件で徹底的に戦ってきた実績がございますので、是非ご相談ください。
【在留資格を維持】速度超過(道路交通法違反)で不起訴
【相談前】
相談者の方は、高速道路で時速56キロメートルの速度超過をしてしまいました。このケースで問題であったのは、相談者の方が中国籍の方であり、一定の有罪判決を受けてしまうと、永住権申請などのビザへ大きな不利益を被る可能性があるということでした。
【相談後】
当職は、不起訴を獲得するための戦略を考えました。
まずは、被疑事実を自体の立証ができていないという主張を行いました。
次に、量刑上、資格喪失による不利益を考慮すべきとする裁判例を駆使して、相談者が有罪判決により受ける不利益を考慮し、不起訴処分とすべきであるとの立論を行いました。
その結果、相談者の方は、不起訴処分となりました。
【松村大介弁護士のコメント】
この事案では、資格喪失による不利益を考慮すべきとする弁護の経験がまさに行きた事案であると思います。外国人にとって不起訴処分以外は不利益になる可能性がありますので、外国人の方で刑事事件に巻き込まれた方は弊所にご相談ください。
職務上の地位を利用してポイントを不正に取得した事件で不起訴処分を獲得
【相談前】
相談者は、某アパレル会社の店員でした。相談者は、レジシステムのアクセス権限を付与されており、この職務上の地位を利用して、実際には顧客が買い物をした事実が存在しないのにも関わらず、これがあるかのように装って、不正にポイントを取得し、これを利用して、会社の商品を購入し、それを安く転売したのです。
会社の調査によりこの犯行が明らかとなりましたが、同種事例では逮捕され、実名報道をされるケースも多いものでした。
相談者は、中国籍の方であり、在留資格への影響を最小限度にするために、当職に事件化を阻止することを依頼されたのです。
【相談後】
当職は、相談者から事情を聴取し、今回の行為は、電子計算機使用詐欺罪に該当する可能性が高いこと、この事件が刑事告訴されてしまった場合、逮捕される可能性が高いことを分析しました。
その上で、早急に被害者との間で示談交渉を進めることになりました。地道な示談交渉が成功して、刑事処分を求めない旨の示談を獲得することができ、事件化を阻止することができました。
【松村大介弁護士のコメント】
この事件では事件の初期の段階で弁護士に依頼したことにより、事件のリスクを適切に分析しながら、被害者に対して全面的に事実を認め、示談交渉に注力した点が成功の一因であると思います。事件の性質によって事実関係を専門的に分析し、どの範囲で事実関係に対する供述を行うかどうかで結果が大きく変わり得るものでしたので、弁護士に依頼するメリットは非常に大きかったと思います。
【画期的撤回】身に覚えのないストーカー警告を理由とする猟銃の仮領置処分を、審査請求からわずか9日で撤回させた事例
依頼者:50代 男性(猟友会安全狩猟射撃指導員)
相談前
依頼者様は、約7年間にわたり銃砲所持許可を受け、適法に狩猟・射撃に従事されてきた方で、地元猟友会の安全狩猟射撃指導員として、地域の狩猟安全教育を担う公的役割を果たされてきました。前科前歴は一切ありません。
ところが、元交際相手とのメール上のやり取りをきっかけに、警察から身に覚えのないストーカー規制法違反の嫌疑をかけられ、口頭警告を受けてしまいました。さらにその翌日、警察は同口頭警告の存在を主たる根拠として、銃刀法11条8項に基づき、依頼者様が長年大切にしてきた散弾銃及び特定ライフルを仮領置したのです。事前の告知も弁明の機会も一切なく、約7年間積み上げてきた狩猟活動と、安全狩猟射撃指導員としての公的役割が、突然奪われる事態となりました。
依頼者様は、「身に覚えのない警告を理由に、適法に所持してきた銃を取り上げられるのは納得できない」とのお気持ちを抱き、当事務所にご依頼くださいました。
相談後
当事務所では、二段構えの法的対応を組み立てました。
第一に、茨城県公安委員会に対する仮領置処分の取消しを求める審査請求です。論点としては、銃刀法5条1項18号の「他人の生命等への害悪のおそれを認めるに足りる相当な理由」を充足する具体的・実質的危険が客観的に存在しないこと、約7年間の適法使用実績と安全狩猟射撃指導員としての公的役割が銃刀法の立法趣旨(札幌地判令和3年12月17日参照)に正面から合致すること、仮領置後に依頼者様が一切の問題行動に及んでいない後発的事情を考慮すべきこと(東京地判平成30年3月30日参照)、適正手続を欠いた口頭警告を主要な根拠とすることが憲法31条の趣旨に反することなどを、体系的に主張しました。
第二に、行政手続法36条の2に基づく行政指導中止申出を、警察署長宛てに正式に提出しました。本件口頭警告がストーカー規制法所定の要件を充足しないこと、告知・聴聞の機会を欠いた手続的瑕疵を伴うことを書面で明確に主張する内容です。
その結果、審査請求書を提出してからわずか9日後、茨城県公安委員会から、本件仮領置処分を撤回し、銃砲を返還する旨の通知をいただくことができました。一般に、行政不服審査における裁決は数か月から1年以上を要することも珍しくないなかでの、極めて異例の早期判断となりました。
松村 大介 弁護士からのコメント
本件は、冤罪型のストーカー警告事案が銃刀法の包括条項(バスケット条項)を経由して甚大な不利益処分に転用される、現代の銃刀法運用に内在する構造的問題が顕在化した事例です。「単なる口頭警告」として軽く扱われがちなものが、実際には適法所持下にある銃砲の使用・収益を実質的に不可能にし、長年積み上げてきた既得の地位を一方的に剥奪する力を持つ ―― 本件は、その典型でした。
当事務所は、令和6年に大阪高裁でストーカー規制法4条1項の文書警告について処分性を認めさせる画期的判決(同年6月26日判決)を獲得した実績を有しております。本件においても、ストーカー警告の制度的性格、銃刀法の立法趣旨、適正手続の保障といった重要論点を、複数の裁判例・学説・立法資料に基づいて緻密に組み立て、徹底的に主張しました。審査請求からわずか9日での処分撤回という結果は、これらの法理論が公安委員会にも十分に説得力を持って受け止められたことの証左であると受け止めております。
もっとも、本件で問題となった構造、すなわち「対象者が制度的に争えない口頭警告が、包括条項を経由して甚大な侵益処分の根拠に転用される」という問題は、口頭警告制度それ自体に内在する憲法上の課題でもあります。口頭警告には独立の不服申立手段が法定されておらず、適正手続の保障(憲法31条)との関係で重大な疑義を残します。当事務所では、今後もこの構造的問題について、法廷と言論の両面から継続的に問題提起を続けてまいります。
もし、ご自身、あるいはご家族・知人の方が、身に覚えのない口頭警告ないし文書警告を受けてしまった、それを根拠とする銃刀法上の処分や各種資格制度上の処分が出されてしまった、というご状況がありましたら、決して一人で抱え込まず、お早めにご相談ください。「単なる口頭警告」とお考えにならず、初期段階での法的対応の質が、その後の結果を大きく左右いたします。
偽造有印公文書行使事件で不処分を獲得 ── 中国人留学生の少年事件 ──
依頼者
中国人留学生(少年)
罪名
偽造有印公文書行使(追加で詐欺罪が立件される可能性のあった事案)
管轄
東京家庭裁判所
結果
不処分(2026年5月14日)
1 事案の概要と問題の所在
依頼者は、日本に在留する中国人留学生で、氏名不詳者から「簡単な仕事」として偽造有印公文書の行使行為に関わるよう指示を受け、その関与を強要されました。共犯者との関係や利得関係次第では、詐欺罪の共同正犯としての立件も予想される事案でした。
罪名・関与の態様によっては、家庭裁判所から検察官送致(少年法第20条による逆送)がなされ、起訴・有罪となれば在留資格喪失という最悪の結末も現実的に懸念される事件でした。中国人留学生がSNS等を通じて闇バイト・特殊詐欺に巻き込まれる類型として典型的な事案でもありました。
2 当事務所の対応方針
本件において最も重視したのは、依頼者の在留資格への影響を最小限に抑え、少年法の枠内で保護処分(特に処分歴の残らない不処分)にて事件を終結させることでした。
(1)捜査段階 ── 原則として黙秘を徹底
共犯関係の認定範囲や故意の内容について不利な供述をすることのリスクを回避するため、捜査の早期段階から黙秘で対応する方針を指示しました。これにより、詐欺罪等の追送致・追起訴のリスクを抑制しました。
(2)家庭環境の整備
依頼者の両親及び日本在住の叔母による監督体制を構築し、要保護性が解消していることを家庭裁判所に対して示しました。
(3)本国への帰国手続の準備
観護措置期間中に帰国便を確保し、処分後すみやかに帰国できる態勢を整備しました。
(4)家庭裁判所との折衝
本件は不処分と保護観察のいずれの処分も考えられる事案でしたが、保護観察処分となった場合、間もなく帰国するため処分執行が実質的に不可能となること、要保護性が既に解消していることなどを意見書において丁寧に主張しました。
3 結果
2026年5月14日、東京家庭裁判所において不処分決定を獲得。依頼者は翌15日、予定どおり本国へ帰国いたしました。
4 本件のポイント
不処分決定は、保護処分歴として記録に残らないため、将来的に依頼者が再来日して在留資格を取得する道を残すことができました。中国人留学生の少年事件においては、罪名・捜査機関の対応次第で在留資格喪失の重大なリスクを伴うため、捜査段階の初動と方針判断が極めて重要となります。
本件は、「黙秘」を基本方針として捜査段階の供述リスクを管理しつつ、家庭裁判所段階では保護者監督体制の整備と帰国準備を並行して進め、裁判所との丁寧な交渉によって不処分という最善の結果を得た事例です。
5 同種事案でお困りの方へ
外国人留学生の少年事件・刑事事件においては、事件の早期段階で適切な方針を立てることで、処分結果や在留資格への影響を大きく左右することが可能です。当事務所は、中国語対応を含め、外国人事件に積極的に取り組んでおりますので、お早めにご相談ください。
【身柄解放・押収物還付】税務調査中の公務執行妨害で逮捕された税理士につき、準抗告により身柄を解放するとともに、押収された携帯電話の還付を求めて最高裁特別抗告で「書面性要件」に憲法論を真正面から展開し、特別抗告係属中に検察官をして押収物を任意還付させた事例
依頼者:50代 男性(税理士・所長)
相談前
依頼者様は、ご自身の税理士事務所を率いられ、長年にわたり多数の中小企業の税務をご担当されてきた、経験豊かな税理士でいらっしゃいます。前科前歴は一切ございません。
ある日、依頼者様は、顧問先である地元の中小企業の代表者ご自宅において、市町村の徴税職員による国税徴収法141条以下に基づく捜索の場に立ち会われました。顧問先代表者の奥様がご体調を崩されていたため、依頼者様は、ご自宅の玄関先で代表者をお守りすべく、徴税職員との間に身を入れられました。ところが、後方にいた別の徴税職員が依頼者様を背後から押した結果、依頼者様のお身体が前方の徴税職員の身体に接触してしまい、依頼者様はその場で「公務執行妨害」を理由として現行犯逮捕されてしまったのです。
しかも、捜査機関は、依頼者様の所有にかかる携帯電話機をその場で押収し、税理士業務に支障が生じる旨を再三申し入れたにもかかわらず、これを長期にわたって留置し続けました。確定申告期直前という、税理士業務にとって最も多忙な時期での身柄拘束と業務用携帯電話の押収は、依頼者様ご本人のみならず、顧問先の依頼者の方々にも直ちに深刻な影響を及ぼしかねない事態でした。
依頼者様は、「身に覚えのない『体当たり』を理由に、税理士としての職務執行の場で逮捕され、業務用の携帯電話まで取り上げられるのは納得できない」とのお気持ちを抱かれ、当事務所にご依頼くださいました。
相談後
当事務所では、本件を「身柄」「押収」「公務の適法性」の三方向から同時に組み立てる方針を採り、逮捕翌日からの集中的な弁護活動を展開いたしました。
第一に、勾留決定に対する準抗告の申立てによる身柄解放です。
当事務所は、被疑者勾留の翌日に、管轄の地方裁判所に対し勾留決定に対する準抗告を申し立てました。論点としては、①公務執行妨害罪が成立するためには対象となる公務が「適法」であることを要するという確立した判例理論のもと、本件税務調査は国税徴収法141条以下所定の手続を欠く違法な公務であり、嫌疑の相当性が欠如すること(大阪地決平成30年3月11日・LEX/DB25552928、静岡地判昭和47年2月9日参照)、②現場の全過程を録画した防犯カメラ映像が客観的に存在し、依頼者様が一貫して任意の供述に応じている以上、罪証隠滅の具体的おそれがないこと、③依頼者様は税理士という社会的に定着した地位にあり、ご親族・従業員から身元引受の誓約も得られていることから、逃亡のおそれもないこと、④仮に有罪となる場合でも、税理士法上の資格喪失の不利益を量刑上考慮すべきとする一連の裁判例(東京高判昭和52年2月1日、大阪高判昭和61年12月24日・判タ630号221頁、福岡高判平成24年12月19日等)に照らせば本件の終局処分は不起訴処分が相当であり、勾留の必要性を欠くこと等を、体系的に主張いたしました。
その結果、裁判所は当方の準抗告を認容して勾留決定を取り消し、依頼者様は逮捕からわずか数日で身柄を解放され、在宅事件として捜査が継続されることとなりました。
第二に、押収物(携帯電話機)の早期還付に向けた還付請求と準抗告です。
身柄解放を実現した後も、捜査機関は、依頼者様の業務用携帯電話機の押収を継続いたしました。当事務所は、逮捕から約2週間が経過した時点で、担当検察官に対し、電話により押収物還付請求を行いました。請求の対象は「被押収者である依頼者所有の携帯電話機」であり、押収調書等の客観的記録によりただ一台に特定されるものでした。これに対し、検察官は同日、口頭により「捜査に使用しているのですぐには返還できない」として還付を拒否されたため、当事務所は当日中にその経過を電話聴取書に記録のうえ、管轄の地方裁判所に押収物還付却下処分に対する準抗告を申し立てました。
準抗告では、すでに捜査開始から十分な時間が経過していること、被疑事実との関連性が乏しいこと、税理士業務に対する具体的不利益が継続していることから、押収の必要性は既に消失しており、処分との均衡を逸脱した違法な処分であることを主張いたしました。
第三に、原決定(準抗告棄却決定)に対する最高裁への特別抗告です。
ところが、原審裁判所は、「弁護人が電話で還付を求めたにすぎず、対象を特定して還付を請求したものとは認められない」として、還付請求それ自体および原処分の存在を否定し、本件準抗告を不適法として棄却いたしました。すなわち、刑訴法上明文の根拠なく「書面性」を要件とすることで、被押収者の不服申立ての道を実質的に閉ざす判断でございました。
当事務所は、この原決定に対し、最高裁判所に特別抗告(刑訴法433条)を申し立てました。特別抗告では、①押収処分を受けた者の還付請求権を正面から認めた最高裁第一小法廷平成15年6月30日決定(最高裁判所刑事判例集57巻6号893頁)に違反すること、②黙示の処分でも準抗告の対象となるとした大阪地決昭和45年9月11日・判例時報613号104頁に違反すること、③検察官自身が現に却下処分を行いながら、その前提となる請求が存在しないとする原決定の論理は自己矛盾であること、④押収物の留置は国民の財産権(憲法29条)に対する重大な制約であり、法文上の根拠なく特定方式・書面性という形式的要件を事後的に加重することは財産権保障の形骸化を招き、ひいては憲法31条の保障する適正手続にも違反すること、⑤刑訴法432条が準用する426条に基づく事実の取調べを尽くさず、形式論で申立てを切り捨てた審理不尽の違法があること等を、最高裁判例・憲法論・刑訴法解釈論を統合した形で正面から展開いたしました。
特別抗告申立てと同日付で、当事務所は併せて「押収物還付請求書」を書面化のうえ、改めて担当検察官に交付いたしました。これにより、原決定が問題視した「書面による特定の要件」を充足しても、なお留置の継続を維持する正当な理由がないことを浮き彫りにいたしました。
その後、特別抗告が最高裁判所に係属する中、検察官は依頼者様の携帯電話機を任意に還付するに至り、令和8年5月15日、最高裁判所は、押収物が返還されたことに伴い特別抗告は法律上の利益を欠くものとして抗告棄却の決定を下しました。形式的には「棄却」決定ではございますが、その実質は、最高裁への特別抗告を契機として、原決定が「不適法」として一蹴した還付請求が、検察官の任意還付という形で実体的に達成された、というものでございます。
松村 大介 弁護士からのコメント
本件は、税理士という専門職業人が、顧問先の税務調査の現場における些細な身体接触を理由として現行犯逮捕され、業務に不可欠な携帯電話機まで長期にわたり押収されてしまうという、現代の捜査・押収実務に内在する構造的問題が、典型的な形で顕在化した事案でございました。
まず身柄解放の局面では、公務執行妨害罪が成立するためには対象となる公務が「適法」であることを要するという確立した判例理論を、本件税務調査の国税徴収法141条以下所定の手続違反性に丁寧に当てはめ、嫌疑の相当性の不存在を中核に、防犯カメラ映像による客観的証拠の存在、税理士という社会的地位、税理士法上の資格喪失リスクを考慮した量刑上の不利益等を多角的に組み合わせて主張を構成いたしました。逮捕直後の段階では、被疑事実の客観面が単純であるほど、勾留の要件・必要性を欠くとの主張が形式論として処理されがちでございますが、本件では、嫌疑の相当性の段階から憲法的視座(無令状の捜索が令状主義の例外として限定的に解釈されるべき要請)を意識して論証を組み立てたことが、準抗告認容に結びついたものと受け止めております。
もっとも、本件で最も実務的・憲法論的に意義深いのは、押収物還付請求をめぐる原決定との攻防であったと存じます。原決定は、「電話による還付請求は対象を特定した請求にあたらない」として、申立てそれ自体を不適法と切り捨てたものでございますが、刑訴法は還付請求につき書面性を要件とする明文を置いておらず、最高裁第一小法廷平成15年6月30日決定が押収を受けた者の還付請求権を正面から認め、東京地裁令和4年1月5日決定が方式論を一切論じることなく実体判断に進んでいる先例の流れに照らせば、原決定の判断は最高裁先例の射程を不当に狭めるものでございました。
当事務所は、この原決定に対し、最高裁先例違反に加え、①検察官自身が却下処分を行いながら還付請求の存在を否定する論理矛盾、②刑訴法432条が定める事実の取調べを怠った審理不尽(憲法31条違反)、③憲法29条の保障する財産権制約の合憲的解釈の欠如、という三層構造の憲法論・刑訴法論を最高裁判所に対し正面から提示いたしました。法文上根拠のない手続要件を解釈によって事後的に加重し、被押収者の不服申立権を封じる運用は、適正手続の理念に正面から反するものであり、これを最高裁の場において問い直すことそれ自体に、本件特別抗告の意義があると考えております。
結果として、特別抗告係属中に検察官が押収物を任意還付したことに伴い、特別抗告は法律上の利益を欠くものとして棄却決定となりました。形の上では「棄却」ではございますが、最高裁係属中の検察官による任意還付という流れは、依頼者様のご権利の実体的な回復を意味するものであり、当事務所としては、本件における一連の弁護活動を通じ、依頼者様の身柄と財産権の双方を、可能な限り早期に回復することができたものと受け止めております。
もっとも、本件で問題となった原決定の論理、すなわち「法文上根拠のない方式要件を解釈によって事後的に加重することで、押収を受けた者の還付請求権の行使を実質的に困難にする」という運用は、本件限りの問題にとどまるものではなく、押収物還付請求権という財産権保障の中核的内容(憲法29条)の実効性に関わる構造的課題でございます。当事務所では、押収物還付請求をめぐる手続論・実体論の双方について、今後も法廷と言論の両面から問題提起を継続してまいる所存です。