罪名別「強制送還のリスク」Q&A
2026/05/20
罪名別「強制送還のリスク」Q&Aマトリクス
概論:入管法24条の構造
外国人が刑事事件で強制送還のリスクを負う条件は、入管法24条が定める。罪名ごとの結論を出す前に、まず条文の3パターンを押さえる必要がある。
第一に、24条4号リ。無期または1年を超える懲役・禁錮の判決。ただし執行猶予付きは除外される。
第二に、24条4号チ。麻薬・大麻・あへん・覚醒剤、刑法第14章(あへん煙関連)の罪による有罪判決。執行猶予の有無を問わない。
第三に、24条4号の2。別表第一の在留資格保有者(就労・留学・家族滞在等)が、刑法の指定章(窃盗・強盗・詐欺・恐喝・暴行・傷害・住居侵入・偽造・賭博・性犯罪等)に該当する罪で懲役・禁錮に処せられた場合。執行猶予付きを含む。
このほか、入管法違反(不法残留・在留カード偽造・不法就労助長)、人身取引、売春業務従事、テロ関連等が個別事由として規定される。
ここから帰結する命題は一つ。「執行猶予なら強制送還はない」は誤りである。罪名と在留資格の組合せによっては、執行猶予付き判決であっても強制送還のリスクが残る。これが本マトリクスの中核論点である。
罪名別マトリクス(15類型)
① 大麻・覚醒剤・MDMA等の薬物事件
強制送還の根拠条文
入管法24条4号チ。
強制送還のリスク
有罪判決を受けた時点で、執行猶予の有無を問わず強制送還のリスクがある。罰金刑であっても同条の射程に入る。覚醒剤輸入は法定刑下限が無期懲役で、起訴された段階で結論はほぼ決している。
在留特別許可の見通し
薬物事犯歴は消極要素として最も重く評価される。日本人配偶者・実子がいても許可率は明確に下がる。再犯防止プログラムへの参加、医療的更生、家族支援体制の立証で何とか道を残すことになる。
当事務所の方針
起訴前であれば嫌疑不十分による不起訴を狙う。共犯関係の構造を解明し、本人の役割を最小化する立証を組む。有罪見込みになった段階で在留特別許可申請に即時切り替える。
② 窃盗・万引き
強制送還の根拠条文
入管法24条4号の2、累犯で実刑となれば同条4号リも該当。
強制送還のリスク
別表第一の在留資格保有者は、懲役・禁錮判決(執行猶予含む)で強制送還のリスクがある。罰金刑なら直接の事由には該当しにくいが、累犯・常習性で実刑1年超となれば4号リに引っかかる。永住者・日本人配偶者等の身分系資格保有者は、罰金や短期懲役なら直接の事由には該当しにくい。
在留特別許可の見通し
初犯・少額・示談成立であれば、許可獲得の余地は残る。
当事務所の方針
被害者との示談を早期に成立させ、不起訴または罰金で確定させる。万引きで「外国人だから実刑」という運用に流されないよう、丁寧な情状立証を行う。
③ 傷害・暴行
強制送還の根拠条文
入管法24条4号の2、傷害致死は同条4号リ。
強制送還のリスク
別表第一の在留資格保有者は、執行猶予付き判決でも強制送還のリスクがある。傷害致死は実刑1年超でほぼ確実に4号リに該当する。
在留特別許可の見通し
被害者との示談成立、暴力の偶発性、本人の更生プログラム参加の立証で許可余地を残せる。
当事務所の方針
起訴前なら示談を最優先に不起訴を狙う。起訴後は罰金または短期執行猶予で在留資格の維持を目指す。
④ 詐欺・特殊詐欺
強制送還の根拠条文
入管法24条4号の2、実刑1年超なら同条4号リ。
強制送還のリスク
別表第一の在留資格保有者は執行猶予付きでも強制送還のリスクがある。被害金額が大きい特殊詐欺事案では、実刑回避自体が困難になる。
在留特別許可の見通し
被害弁償の完了、犯罪収益の返還、組織犯罪との関与否認が立証できれば、許可の余地を残せる。
当事務所の方針
被害者多数の特殊詐欺では被害弁償が大規模になるが、被害者全体との示談形成の枠組みづくりが鍵になる。
⑤ 強盗・恐喝
強制送還の根拠条文
入管法24条4号の2、実刑なら同条4号リ。
強制送還のリスク
別表第一の在留資格保有者は執行猶予付きでも強制送還のリスクがある。強盗は法定刑が重いため実刑率が高く、4号リの射程にも入りやすい。
在留特別許可の見通し
暴力的事犯ゆえに許可率は低い。共犯関係での従属的役割の立証、被害者との示談、家族要件の存在が積極要素になる。
当事務所の方針
共犯関係の構造解明、被害者との示談、家族関係の立証を一体で構築する。
⑥ 性犯罪(強制性交等罪・強制わいせつ等)
強制送還の根拠条文
入管法24条4号の2、実刑1年超なら同条4号リ。
強制送還のリスク
別表第一の在留資格保有者は執行猶予付きでも強制送還のリスクがある。重大事案で実刑1年超なら4号リにも該当する。
在留特別許可の見通し
性犯罪は消極要素として最も重く評価される。日本人配偶者・実子がいても許可率は大きく下がる。
当事務所の方針
同意の不存在を争えるなら無罪戦略を採る。被害者との示談成立を最優先する。有罪見込み事案では量刑を徹底的に争いつつ、在留特別許可の準備を並行する。
⑦ 公然わいせつ・盗撮・痴漢
強制送還の根拠条文
入管法24条4号の2(懲役・禁錮判決時)。
強制送還のリスク
別表第一の在留資格保有者は執行猶予付きでも強制送還のリスクがある。罰金刑のみなら直接の事由には該当しにくいが、累犯・在留期間更新の素行要件で影響が出る。
在留特別許可の見通し
示談成立、初犯、本人の更生プログラム参加の立証で許可余地を残せる。
当事務所の方針
示談を最優先に、不起訴または罰金で確定させる。実刑回避と前科の質の最小化を狙う。
⑧ 入管法違反(不法残留・オーバーステイ)
強制送還の根拠条文
入管法24条4号ロ。
強制送還のリスク
不法残留それ自体が退去強制事由である。刑事処分の有無や執行猶予の有無を問わず、強制送還のリスクがある。
在留特別許可の見通し
日本人配偶者・実子の存在、長期在留歴、生活基盤の確立で許可余地を残せる。令和6年3月改定の在留特別許可ガイドラインに沿った立証構成が必要となる。
当事務所の方針
出国命令制度の活用判断、自主出頭タイミングの戦略構築、在留特別許可申請の準備を初動から一体で組み立てる。
⑨ 在留カード偽造・行使
強制送還の根拠条文
入管法73条の2以下に基づく罰、24条4号ホ。
強制送還のリスク
執行猶予の有無を問わず強制送還のリスクがある。
在留特別許可の見通し
偽造・行使は悪質性が高く評価される類型ゆえ、許可率は低い。背景に不法残留・資格外活動を伴うことが多く、複合事由となる。
当事務所の方針
偽造の故意の不存在、行使の認識欠如など、事実認定段階での争いを徹底する。
⑩ 不法就労助長(雇用主側)
強制送還の根拠条文
入管法73条の2違反、24条4号ホ・3の4。
強制送還のリスク
執行猶予の有無を問わず強制送還のリスクがある。雇用主自身が外国人であれば、雇用主が強制送還の対象となる。
在留特別許可の見通し
事業継続の必要性、雇用実態の善意性、本人の更生計画の立証で許可余地を残せる。
当事務所の方針
当事務所代表は、不法就労助長事件で「故意・過失不要論」を覆す憲法訴訟を最高裁に係属させている(詳細)。国内でも希少な専門性を持つ。雇用主側・労働者側いずれの立場でも対応する。
⑪ 偽造通貨行使・私文書偽造
強制送還の根拠条文
入管法24条4号の2(刑法第16章=通貨偽造、第17章=文書偽造)。
強制送還のリスク
別表第一の在留資格保有者は執行猶予付きでも強制送還のリスクがある。
在留特別許可の見通し
認識・故意の不存在、偽造への組織的関与の不存在を立証できれば、消極要素を緩和できる。
当事務所の方針
事実認定段階での徹底防御。当事務所代表は聖徳太子旧1万円札偽造行使事件で実刑10年のリスクを完全に回避し、不起訴処分を獲得した実績がある。
⑫ 飲酒運転・無免許運転・交通事故
強制送還の根拠条文
危険運転致死傷罪・過失運転致死傷罪で実刑1年超なら入管法24条4号リ。
強制送還のリスク
道路交通法違反単体での罰金・反則金処分なら直接の事由には該当しにくい。ただし人身事故で実刑1年超となれば4号リの射程に入る。罰金前科の累積は在留期間更新時の素行要件で影響する。
在留特別許可の見通し
人身被害が重大でなければ許可余地は残る。被害者との示談、本人の運転教育の受講が積極要素になる。
当事務所の方針
被害弁償の早期完了、刑事処分と民事責任の一体処理。
⑬ 公務執行妨害
強制送還の根拠条文
入管法24条4号の2(刑法第5章=公務妨害罪)。
強制送還のリスク
別表第一の在留資格保有者は執行猶予付きでも強制送還のリスクがある。
在留特別許可の見通し
暴行の偶発性、警察官との接触状況、本人の更生で余地を残せる。外国人事件では「職務質問」中の小競り合いから公務執行妨害に発展する事例が多い。慎重な事実認定の争いが要となる。
当事務所の方針
職務質問の任意性、警察官の言動、本人の認識を詳細に立証し、犯罪成立そのものを争う。
⑭ 殺人・傷害致死
強制送還の根拠条文
入管法24条4号リ、24条4号の2。
強制送還のリスク
執行猶予が付くこと自体が稀だが、仮に付いたとしても別表第一の在留資格保有者は4号の2で強制送還のリスクがある。実刑となれば4号リも該当する。
在留特別許可の見通し
殺人は最も消極的に評価される類型。許可率は極めて低い。
当事務所の方針
事実関係の争い、正当防衛・過剰防衛の主張、責任能力の争い、被害感情への対応など、全方位的に弁護を構築する。
⑮ 組織犯罪・暴力団関与
強制送還の根拠条文
入管法24条4号の2、24条4号ヨ(法務大臣認定)。
強制送還のリスク
組織犯罪処罰法・暴力行為等処罰法違反で執行猶予付きでも強制送還のリスクがある。さらに「公安を害する者」と法務大臣に認定されれば、4号ヨによる強制送還の対象になる。
在留特別許可の見通し
組織関与の認定があれば許可率は大幅に下がる。
当事務所の方針
組織関与の事実認定段階での争いを徹底する。本人の周辺的役割の立証、組織からの離脱意思の表明、家族基盤の維持を組み合わせる。
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