入管法24条4号チ詳解 ― 薬物関係退去強制事由の精密構造と中国籍の方への刑期要件不要論の含意
2026/05/26
入管法24条4号チ詳解 ― 薬物関係退去強制事由の精密構造と中国籍の方への刑期要件不要論の含意
入管法24条が列挙する退去強制事由のうち、4号チ ― すなわち薬物関係の有罪に関する規定 ― は、他号と顕著に異なる構造を有しております。それは「刑期要件を要求しない」という極めて厳しい規定でございます。覚醒剤・大麻・麻薬・あへん・向精神薬等の有罪判決を受けますと、罰金刑・執行猶予判決のいずれであっても、直ちに退去強制事由に該当いたします。本記事では、中国籍の方々およびそのご家族の皆様に向けて、入管法24条4号チの精密な構造と当事務所の実務的対応について、一般的な解説として整理させていただきます。
1.入管法24条4号チの文言と構造
入管法24条4号チは、「麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚醒剤取締法又は国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律の規定に違反して有罪の判決を受けた者」と規定しております。注目すべき点は、(1)文言中に「無期又は1年を超える拘禁刑」のような刑期要件が存在しないこと、(2)「有罪の判決」という文言が罰金刑・執行猶予・実刑のあらゆる判決形態を包含すること、(3)対象法令が薬物関係5法(麻薬向精神薬・大麻・あへん・覚醒剤・国際協力法)に限定されていること、でございます。
2.4号リとの比較 ― 「刑期要件」の有無という重大な差異
入管法24条4号リは、「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」と規定し、「執行猶予期間中」を除外する規定を併せて備えております。これに対し、4号チはこのような限定を一切備えておりません。具体例として、(1)覚醒剤取締法違反(自己使用)で罰金30万円の判決を受けた場合、4号リに該当しませんが、4号チには直ちに該当いたします。(2)大麻取締法違反(所持)で執行猶予付2年の拘禁刑の判決を受けた場合、4号リは執行猶予期間中の除外規定により該当しませんが、4号チは執行猶予期間中であっても直ちに発動いたします。
3.4号チの立法趣旨 ― 「薬物の社会侵害性」の厳格評価
4号チの立法趣旨は、入管法が薬物事犯の「社会侵害性」を極めて厳格に評価する点にございます。日本の薬物対策政策は、長期にわたり「ゼロ・トレランス」方針を採用してまいりましたから、外国人の薬物事犯は日本社会の公共秩序に対して特に高い脅威を与えるものと評価されております。もっとも、当事務所の松村弁護士は、この立法趣旨の妥当性について、弁護方針.mdの原則6(制度・条文・判例が依頼者に不利ならば制度設計の変更を提言する)の精神に従い、立法論的疑問を正面から提起してまいります。
4.当事務所の実務戦略 ― 4号チ事案の三層防御
当事務所では、4号チ事案について、次の三層防御を採っております。(1)第一の防御 ― 刑事段階での無罪・嫌疑不十分・嫌疑なしの起訴前不起訴処分の獲得。覚醒剤・大麻事案では、「所持の故意」「使用の故意」「薬物性の認識」等の主観的要件を徹底的に争うことを基軸といたします。事例A-1の無罪判決獲得が典型でございます。(2)第二の防御 ― 「有罪判決」自体の回避(つまり「公判審理の回避」)。仮に刑事段階で有罪が避けられない場合でも、罪種の縮小(覚醒剤所持から単純所持へ、大麻所持から旧法事案への適用排除等)を争ってまいります。(3)第三の防御 ― 入管段階での在留特別許可申請。責任主義の射程論・入管庁公表事例の平等原則論を基軸とします。
5.「拘禁刑」時代の新たな争点(令和7年6月1日施行)
令和4年改正刑法(令和7年6月1日施行)により、従来の自由刑(拘禁刑施行前の2類型)が一本化され、新たに「拘禁刑」が新設されました。もっとも、4号チの文言は変更されておらず、依然として「有罪の判決」と記載されております。これは、拘禁刑の分類・形態の如何が4号チ該当性に影響を及ぼさないことを意味します。しかしながら、新設拘禁刑の「処遇・改善更生」目的の強調は、刑事手続における執行猶予獲得の容易化・量刑緩和傾向をもたらし、間接的に4号チ事案の退去強制処分発動数に影響を及ぼし得るものと予想されます。当事務所の松村弁護士は、この動向に高い関心を払い、最新の動向と整合する弁護戦略を構築してまいります。
6.当事務所の解決実績と体制
事例A-1としては、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)の案件において、所持の故意・営利目的という主観的要件を徹底的に争い、無罪判決を獲得した事例がございます。本件は典型的な「第一の防御の成功」 ― すなわち無罪判決獲得により、4号チが一切発動しなかったケースでございます。事例D-2としては、不法就労助長罪の冤罪事案において、「退去強制事由は故意・過失を要件としない」とする従来の入管実務に正面から挑戦し、責任主義の射程を行政処分判断にまで及ぼすべく現に係争中でございます。同事案の論点は、4号チ事案の第三の防御にも直接活かせるものでございます ― すなわち、「薬物関係の有罪判決後の退去強制処分」における故意・過失要件論を提起する素地となります。事例D-1としては、難関とされた在留特別許可を「1発」で獲得した事例がございます。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しております。また、提携の行政書士と協働し、刑事手続終了後の在留特別許可申請・在留資格更新等の手続にもワンストップで対応してまいります。
7.結語
入管法24条4号チは、中国籍の方々が最も陥りやすい退去強制の落とし穴でございます。「罰金・執行猶予で済めば安心」という誤解は、この規定により完全に打ち砕かれます。当事務所の松村弁護士が堅持する「不起訴目標主義」「主観的要件の徹底的争点化」「責任主義の射程論」という三層防御戦略は、中国籍の方々の在留資格を守り、薬物関係事案による絶対的な退去強制効果を回避するための核心でございます。同種事案でお悩みの方々におかれましては、どうぞ早期に当事務所へご相談くださいますようお願い申し上げます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者情報
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野といたしております。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有しております。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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