「初犯だから絶対に不起訴」という構造的誤解 ― 中国籍の方の刑事事件における「初犯」の実務的意義
2026/05/26
「初犯だから絶対に不起訴」という構造的誤解 ― 中国籍の方の刑事事件における「初犯」の実務的意義
当事務所の松村大介弁護士のもとへは、「家族は初犯ですから、不起訴になるはずです」「前科がございませんから、絶対に不起訴ですよね」とのお問合せをしばしば頂戴いたします。しかしながら、「初犯」と「不起訴処分」の関係は、自動的な等号で結ばれるものではございません。本記事では、中国籍の方々によくお見受けする誤解について、一般的な解説として、「初犯」の実務的意義と不起訴処分獲得の実際の構造を整理させていただきます。
1.「初犯」の三つの意味
実務上、「初犯」という言葉には三通りの用法がございます。(1)前科前歴が一切ない(過去に刑事処分・略式罰金・起訴猶予処分も受けていない)状態、(2)同罪種の前科がない(他罪の前科はあるが本罪種は初めて)状態、(3)本件で初めて検察官の受理対象となった(過去に他事件で取調べを受けたが起訴されたことはない)状態でございます。検察官実務は、「初犯」の評価として(1)を最も有利と判断し、(2)が次点、(3)が最も弱いと位置付けております。中国籍の方々が母国・他国で前科をお持ちの場合は、日本で「初犯」であっても、「外国前科」の援用により不利な影響を受け得ることに留意が必要でございます。
2.不起訴処分の四類型と「初犯」の位置付け
日本の不起訴処分は、(a)嫌疑なし(犯罪嫌疑自体が認められない場合)、(b)嫌疑不十分(証拠不足の場合)、(c)罪とならず(構成要件・違法性・責任のいずれかが欠ける場合)、(d)起訴猶予(成立要件は備わっているが情状により起訴しない場合)、の四類型に整理されております。このうち「起訴猶予」の考慮要素は、刑事訴訟法248条が「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況」と規定しており、初犯であることは「犯人の性格・境遇」上の有利な情状ではございますが、決して決定的なものではございません。
3.「初犯」と罪種の差異 ― 起訴猶予が困難な事案類型
実務上、初犯であっても起訴猶予の獲得が困難な罪種としましては、(1)組織的犯罪処罰法が適用される事案(強盗・特殊詐欺等)、(2)薬物事犯(覚醒剤・大麻等の依存性物質に係る事犯)、(3)性犯罪(強制わいせつ・強制性交等)、(4)殺人・強盗致死傷等の重大事案、(5)組織犯罪・資金洗浄等、が挙げられます。これらの罪種は、初犯であっても実刑または執行猶予判決(つまり起訴)に至るのが通例であり、その理由は「類型的反社会性」の高さにあり、個人の「初犯」事情とは独立した判断構造でございます。
4.外国人特有の複雑な構造 ― 在留資格への影響
中国籍の方の刑事事件では、「初犯」の意義は在留資格の類型によって相当に変動いたします。(1)技術・人文知識・国際業務等の就労資格をお持ちの方の場合、「初犯」の事実は在留期間更新時の「素行善良性」要件充足に資します。(2)留学資格の方の場合、「初犯」の事実は卒業後の資格変更に資します。(3)定住者・永住者の方の場合、「初犯」の事実は在留資格取消し(入管法22条の4第1項2号)の回避に資します。(4)短期滞在の方の場合、「初犯」の事実は上陸拒否事由の累積回避に資します。いずれの場合も、「初犯」のみで在留資格が自動的に守られるわけではなく、個別の事情に応じた弁護活動が必要となります。
5.当事務所の実務戦略 ― 「初犯依存」を超えて
当事務所では、こうした事案について、「初犯」のみを唯一・決定的な論点とすることはございません。むしろ、(1)主観的要件の争点化(故意・過失・違法性の認識)、(2)客観的事実の精緻な整理(行為の具体的内容・被害の軽微性)、(3)被害弁償・贖罪寄附の実施、(4)反省状況・更生環境の整備(ご家族の支援・就労の確保等)、(5)入管庁公表事例の平等原則適用(在留特別許可事案の場合に限る)、(6)責任主義の射程論(退去強制事由事案の場合に限る)、という多層的な論点構築を徹底してまいります。「初犯」は、これらの論点の背景情状として位置付けられるものでございます。
6.当事務所の解決実績と体制
事例B-1としては、特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代女性につき、指示役の欺罔・脅迫的状況・犯意の不存在を総合的に主張立証し、不起訴処分を獲得した事例がございます。本件において「初犯」は決定的な論点ではなく、主観的要件の徹底的争点化が勝因でございました。事例B-2としては、特殊詐欺受け子で複数回再逮捕された事案 ― すなわち「非初犯」の極端な例 ― について、徹底した取調べ対応・違法取調べへの抗議・主張立証を通じて、全件について不起訴処分を獲得した事例がございます。事例A-1としては、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)の案件で無罪判決を獲得した事例がございます。これは「罪種類型の反社会性が高い」極端な例でありながら、主観的要件の徹底的争点化により無罪に至ったものでございます。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しております。また、提携の行政書士と協働し、刑事手続終了後の在留資格更新・変更等の手続にもワンストップで対応してまいります。
7.結語
「初犯だから絶対に不起訴」という誤解は、中国籍の方々の刑事事件においてしばしば見受けられるものでございます。「初犯」の事実は有利な情状の一つではございますが、決して決定的なものではございません。当事務所の松村弁護士が堅持する「多層的な論点構築」戦略は、「初犯依存」を超え、主観的要件の争点化・客観的事実の精緻な整理・被害弁償・反省状況・在留資格保護を総合的に組み合わせて、不起訴処分の獲得を確実に追求してまいります。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者情報
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野といたしております。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有しております。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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