中国籍の方が関わる法人口座悪用・特殊詐欺資金洗浄事案|組織的犯罪処罰法10条と犯罪収益移転防止法の構造
2026/05/26
中国籍の方が関わる法人口座悪用・特殊詐欺資金洗浄事案|組織的犯罪処罰法10条と犯罪収益移転防止法の構造
近時、警視庁および各道府県警が、法人口座を媒介とする特殊詐欺資金洗浄の大型事案を相次いで摘発しております。2026年1月には、警視庁が複数の詐欺グループのために累計3億円超を経由する口座を管理していたとして、中国籍男性4名を詐欺および犯罪収益移転防止法違反の容疑で逮捕したと報じられました。背景には大規模な中国人犯罪組織の関与が疑われております。当事務所の松村大介弁護士のもとへも、この類型の事案に関するご相談が増加してまいりました。本記事では、中国籍の方々およびそのご家族の皆様に向けて、特殊詐欺資金洗浄事案の罪名構造、主観的要件をめぐる争点、退去強制リスクについて、一般的な解説として整理させていただきます。
1.罪名構造 ― 組織的犯罪処罰法10条の資金洗浄罪
特殊詐欺資金洗浄事案で問題となる主たる罪名は、(1)組織的犯罪処罰法10条1項の「犯罪収益等隠匿」罪(5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金)、(2)同条2項の「犯罪収益等収受」罪(3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)、(3)犯罪収益移転防止法28条の「無届出移転罪」(2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)、(4)刑法246条の詐欺幇助・共謀共同正犯(10年以下の拘禁刑)でございます。このうち、組織的犯罪処罰法10条の資金洗浄罪は、行為者に「犯罪収益等」であることの認識を要求しており、ここが弁護人として最も争うべき核心となります。
2.主観的要件 ― 「犯罪収益等の認識」の争点
組織的犯罪処罰法10条の「犯罪収益等」認識要件は、未必の故意を含むとされております(最判平成19年12月17日刑集61巻9号813頁参照)。もっとも、当事務所のご相談者の多くは、知人・友人からの「合法的な資金移動」との説明を信じて口座を提供した方であり、「特殊詐欺・賭博・違法ネットショップの収益」であるとの具体的認識は極めて希薄です。松村弁護士は、こうした事案において未必の故意の不存在を徹底的に争い、最判平成15年7月10日刑集57巻7号903頁の示す「具体的認識不要・抽象的認識必要」基準を踏まえ、抽象的認識のレベルも故意認定に足りないことを主張してまいります。
3.外国人特有の退去強制リスク
資金洗浄事案の退去強制リスクは、入管法24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑)の問題となります。組織的犯罪処罰法10条1項の法定刑の上限は5年の拘禁刑であり、実務上、1年から3年の拘禁刑(執行猶予付)が言い渡されることも多く、4号リが直ちに発動いたします。法人代表者・会社役員の中国籍の方の場合、会社法上の責任(取締役解任・損害賠償請求)に加え、在留資格「経営・管理」の取消し(入管法22条の4第1項2号)にまで波及するリスクがございます。
4.不起訴処分獲得の戦略
当事務所では、この類型の事案について、「主観的要件の徹底的争点化」を戦略の基軸としております。具体的には、(1)依頼者が受領した指示・送金内容・口座管理委託の経緯の精緻な整理、(2)通常の法人活動で知り得る資金移動パターンと本件の対比、(3)依頼者が受領した報酬額と「犯罪収益分配」の実務相場との対比、(4)合理的に推認される「無認識」の間接証拠の抽出、を行ってまいります。検察官が「犯罪収益等」認識の立証に確信を持てない場合には、起訴猶予の余地が現実的に開けてまいります。
5.初動対応で押さえておきたい三つのポイント
第一に、「なぜ資金の出所が詐欺だと知っていたのか」「なぜ複数の法人口座を管理することになったのか」といった質問に対して、徹底的に黙秘権を行使することでございます。第二に、法人取締役・代表者の立場で署名した書面(口座解約届・取締役会議事録・委任状等)の保存でございます。捜査段階で書面が押収されるタイミングは、弁護戦略の展開に決定的な影響を及ぼします。第三に、経験ある中国語通訳の確保でございます。資金洗浄事案では、「貸与」「借用」「委託」「贈与」等の微妙な概念区分について、訳の精度が供述調書の内容を直接左右いたします。
6.当事務所の解決実績と体制
当事務所では、こうした主観的要件をめぐる争点について、豊富な解決実績がございます。事例B-1としては、特殊詐欺出し子行為に関わったとされた20代女性につき、指示役の欺罔・脅迫的状況・犯意の不存在を総合的に主張し、不起訴処分を獲得した事例がございます。事例B-2としては、特殊詐欺受け子で複数回再逮捕された事案について、徹底した取調べ対応・違法取調べへの抗議・主張立証を通じて、全件について不起訴処分を獲得した事例がございます。事例D-2としては、不法就労助長罪の冤罪事案において、退去強制事由判断における故意・過失要件論を主張し、現に係争中でございます。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しております。また、提携の行政書士と協働し、刑事手続終了後の在留資格「経営・管理」更新等の手続にもワンストップで対応してまいります。
7.結語
特殊詐欺資金洗浄事案の核心は、行為者の主観的要件 ― 「犯罪収益等」であることの認識 ― の有無に尽きます。当事務所が堅持する「主観的要件の徹底的争点化」戦略は、中国籍の方々の在留資格を守り、強制送還を回避するための多重防御線の核心でございます。同種事案でお悩みの方々におかれましては、どうぞ早期に当事務所へご相談くださいますようお願い申し上げます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者情報
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野といたしております。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有しております。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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