中国籍の方の不法残留 ― 路上の職務質問と現行犯逮捕|入管法24条4号ロの構造と初動対応
2026/05/26
中国籍の方の不法残留 ― 路上の職務質問と現行犯逮捕|入管法24条4号ロの構造と初動対応
近年、日本各地の警察が、在留期間を超過した外国人の方々に対し、路上の職務質問や任意同行を端緒として現行犯逮捕を行う事案が増加しております。2026年5月には、長岡警察署が住民通報を端緒に23歳の中国籍男性に職務質問を実施し、在留期間が2024年1月から超過していることが判明したため、入管法違反(不法残留)容疑で現行犯逮捕したとの報道がございました。当事務所の松村大介弁護士のもとへも、同種事案に関するご相談を多数頂戴しております。本記事では、中国籍の方々およびそのご家族の皆様に向けて、不法残留事件における刑事手続の構造、職務質問の任意性をめぐる争点、退去強制リスク、当事務所の解決実績について、一般的な解説として整理させていただきます。
1.不法残留の罪名構造
入管法70条1項5号は、在留期間を超過して残留した者に対し、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、もしくはこれらの併科を定めております。同条は、不法入国・不法上陸・資格外活動等にも類似の規定を置いております。検察実務において、不法残留事案は略式罰金(数十万円程度)で終結することも多うございますが、背景に偽造在留カード所持・資格外活動・他の犯罪嫌疑等が存在する場合には、公判請求案件へと展開し、拘禁刑(執行猶予付)の判決に至ることもございます。
2.刑事手続の争点 ― 職務質問の任意性
警察官職務執行法2条は、警察官が「合理的に推認される罪を犯し、もしくは犯そうとしていると認められる者」に対して職務質問を行う権限を認めております。もっとも、この「合理的推認」の判断基準は、弁護実務において常に争われる論点でございます。明確な嫌疑の根拠がなく、単に外国人風の外貌・話し方・乗車場所・乗車時間といった事情のみを根拠とする職務質問が、任意性原則に合致するかについては、違法収集証拠排除法則(最判昭和53年9月7日刑集32巻6号1672頁)の射程との関係で、依然として争う余地がございます。当事務所の松村弁護士は、この論点について、2024年以降、国家賠償請求等の方法でシリーズ的な訴訟提起を行っております。
3.外国人特有の退去強制リスク
不法残留は、それ自体が入管法24条4号ロの退去強制事由に直結いたします。刑事手続が略式罰金または起訴猶予で終結した場合であっても、入管手続は独立に進行し、退去強制令書または出国命令書のいずれかの形で終結することとなります。退去強制から5年間は再入国が遮断され(入管法5条1項9号)、「不当に退去強制された者」と認定されますと、上陸拒否期間が10年に延長される場合もございます(同号但書)。松村弁護士が提唱する「責任主義の射程論」は、退去強制事由の判断に故意・過失要件を要求しない従来の入管実務に対し、刑事手続段階で勝ち取った主観的要件の争点成果を行政処分判断にまで及ぼすべきとする立論でございます。
4.不起訴処分・出国命令制度の活用
不法残留事案において、「不起訴処分」と「出国命令書の発付」の組み合わせは、最も望ましい結果の一つでございます。入管法24条の2が定める「出国命令」制度は、自主出頭をなした者・その他類型的に軽微な不法残留者について、退去強制令書ではなく出国命令書を発付するものであり、上陸拒否期間は1年(5条1項9号の2)となり、退去強制の5年と比較して相対的に短くなります。もっとも、出国命令制度の適用要件は厳しく(自主出頭・前科の不存在・他の犯罪嫌疑の不存在・旅費負担能力等)、要件を充たさない事案では、正攻法による不起訴処分獲得・在留特別許可獲得を目指すこととなります。
5.初動対応で押さえておきたい三つのポイント
第一に、入国経緯・在留期間超過の経過・資金源・就労状況等の事項について、徹底的に黙秘権を行使することでございます。第二に、職務質問の段階で弁護人選任を要求することでございます。警察官職務執行法の実務運用上、職務質問の対象者には弁護人立会いを請求する権利がございますが、現場では受け入れられないことが多いため、「警察官が弁護人選任権を告知しなかった手続違法」という形で、後の公判段階での争点として留保することができます。第三に、中国語通訳の質を確保することでございます。不法残留事案では、入国年月日・資格外活動の事実に関する自白調書が、起訴処分の内容を直接左右いたしますから、訳のずれが致命傷になりかねません。
6.当事務所の解決実績と体制
当事務所の松村大介弁護士は、不法残留・資格外活動・在留特別許可関係の事案に豊富な実績を有しております。事例D-1としては、観光目的で来日した依頼者が日本人女性との間に子を授かった後に在留資格を喪失した事案について、入管庁過去公表事例の分析・婚姻認知手続の支援・刑事公判での被告人質問・証人尋問等を組み合わせ、難関とされた在留特別許可を「1発」で獲得した事例がございます。事例D-2としては、不法就労助長罪の冤罪事案において、「退去強制事由は故意・過失を要件としない」とする従来の入管実務に正面から挑戦し、責任主義の射程を行政処分判断に及ぼすべく現に係争中でございます。事例B-1としては、特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代女性につき、主観的要件の不存在を主張立証し、不起訴処分を獲得した事例がございます。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しております。また、提携の行政書士と協働し、刑事手続終了後の出国命令申請・在留資格更新・変更等の手続にもワンストップで対応してまいります。
7.結語
不法残留事案は、一見しただけでは「単純な入管法違反」と捉えられがちでございますが、背景に潜む争点 ― 職務質問の任意性、資格外活動の嫌疑、在留特別許可獲得の可能性、退去強制事由判断における故意過失論 ― は、表面的な印象よりはるかに複雑でございます。松村大介弁護士が堅持する「不起訴目標主義」と「責任主義の射程論」は、中国籍の方々の在留資格を守るための多重防御線の中核でございます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者情報
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野といたしております。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有しております。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------