舟渡国際法律事務所

中国籍の方が薬物の「運び役」「荷物の運搬」「代理発送」で逮捕されたら ― 「中身が薬物だとは知らなかった」をいかに主張するか

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中国籍の方が薬物の「運び役」「荷物の運搬」「代理発送」で逮捕されたら ― 「中身が薬物だとは知らなかった」をいかに主張するか

中国籍の方が薬物の「運び役」「荷物の運搬」「代理発送」で逮捕されたら ― 「中身が薬物だとは知らなかった」をいかに主張するか

2026/05/20

中国籍の方が薬物の「運び役」「荷物の運搬」「代理発送」で逮捕されたら ― 「中身が薬物だとは知らなかった」をいかに主張するか

1. はじめに

近年、日本国内の各空港(成田・関西・中部)および国内の郵便物流センターにおいて、中国籍の方が「薬物の運搬役」「他人の荷物の代理運搬」「代理発送」に関与したとして、覚醒剤取締法違反・麻薬及び向精神薬取締法違反・大麻取締法違反(近く「大麻草栽培規制法」に統合される予定です)等で逮捕される事案が、一定の頻度で続いております。この種の事案では、ご本人が「中身が薬物だとは知らなかった」「ただの中国土産・普通の荷物だと思っていた」「SNS等で知り合った知人・取引先・委託者から運送を頼まれただけだ」と説明されているケースが、しばしば見受けられます。

本記事は、ご家族・ご友人が薬物関連法令違反の疑いで拘束されておられる中国籍当事者の方々を念頭に、同種事案の共通論点を一般論として整理するものです。外国人当事者にとって薬物事犯がもたらす強制送還リスクは、他の刑事事件類型に比して格段に重く、執行猶予判決を獲得しても原則として退去強制対象となります。それゆえ、本類型の弁護の要諦は、「公判段階で執行猶予を獲得する」ことではなく、「起訴前段階から故意の不存在を中核に据え、不起訴処分の獲得を最優先目標とする」ことに他なりません。

2. 「中身が薬物だとは知らなかった」をどう争うか ― 薬物事犯の故意要件論

覚醒剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法等の薬物関連法規は、いずれも「当該物品が薬物であることの認識」、すなわち故意(刑法38条1項)を犯罪成立要件としております。客観的に「薬物を所持・輸入・譲渡した」という事実があるだけでは足りず、「それが薬物であるとの認識」という主観状態が必要です。

もっとも、実務上、故意の認定基準はそれほど厳格ではなく、最高裁判所は、次のような客観的諸事情から、故意(未必の故意――「もしかすると薬物かもしれない、それでも構わない」という心理状態を含む)の存在を推認することを是認してまいりました。①報酬の異常な高額性(通常の「土産物の運搬」と比較して明らかに不釣り合い)、②委託者の身分の不自然性(SNS等で知り合っただけで本名すら知らない等)、③包装方法の不自然性(過剰な重ね包装・真空パック・他物品で隠蔽する等)、④入国時の挙動(緊張・発汗・視線回避等)、⑤取調べでの供述の矛盾・不自然等です。

したがって、弁護人としては、上記の客観的諸事情について、一つ一つ精査・反論を組み立てる必要がございます。たとえば、①報酬は確かに高額に見えても、被告人の置かれた経済・文化的背景の中で「越境運搬」の相場感が日本人と異なる可能性、②委託者がSNSのみでの知り合いでも、中国の社交ネットワークの利用実態としては必ずしも稀ではない取引形態であること、③包装は不自然でも、被告人は包装過程を見ておらず、既に包装済みの物品を受け取っただけであること、④入国時の挙動の異常さは、長時間移動の疲労や言語の不安・取調べへの緊張等、薬物の認識とは別の原因によっても十分説明可能であること――これらは、当事務所が長年の外国人薬物事犯弁護で積み上げてまいりました、項目別の反論フレームでございます。

3. 不起訴処分こそが唯一のセーフハーバー ― 執行猶予でも退去強制を回避できない

中国籍の方は、入管法24条4号チに特にご注意いただきたく存じます。同号は、「アヘン・麻薬・大麻・覚醒剤等の薬物関連法令に違反して刑に処せられた者」を退去強制対象とし、執行猶予が付されたとしても退去強制対象から除外されないという、薬物事犯特有の極めて厳しい構造を有しております。他の号(たとえば4号リ)には執行猶予全部の場合の除外規定が置かれておりますが、4号チにはそのような除外規定がございません。

この構造ゆえ、薬物事犯の外国人事案において、「公判段階で執行猶予を獲得する」という従来型の弁護戦略は、依頼者の利益保護として根本的に不十分でございます。日本人事件であれば執行猶予判決が弁護の成功例として評価されますが、外国人事件においては、執行猶予判決は「刑事手続終了後直ちに開始される退去強制手続」の入り口に過ぎません。「執行猶予=在留資格保持」というご誤解は、入管法24条の号別構造に通じていない弁護方針の典型例と言わざるを得ません。

したがって、当事務所が一貫して採用してまいりました方針は、「起訴前段階から不起訴処分の獲得を最優先目標とする」というものです。具体的には、①初動接見の段階から徹底的に黙秘権行使を指導する、②捜査機関の誘導尋問・不正確な通訳による不利な供述調書化を予防する、③故意の不存在を早期に主張し、検察官に対して客観的反証を提供する、④検察官への不起訴意見書の段階で故意争いの論拠を明確に提示する――これらの活動は、起訴後では取り返しがつきません。

4. 退去強制事由の判断にも故意・過失要件を要するか ― 当所松村弁護士の係争中論点

当事務所の松村大介弁護士は、現在、「退去強制事由の判断に当たっても、故意・過失要件を要するのではないか」という、憲法論・行政法論上の根本的論点を正面から問う訴訟を係争中でございます。

具体的には、不法就労助長罪(入管法73条の2)の認定事件において、刑事事件として雇用対象者の不法就労認識(故意)の不存在を正面から争っているにもかかわらず、入管庁が「退去強制事由の判断には故意・過失を要件としない」という従来の実務運用に依拠して退去強制処分を発出したことの違憲性・違法性を、正面から争うものでございます。本論点の核心は、日本の刑事法における責任主義(「責任なくして罰なし」の原則)の射程を、行政処分の領域にもどこまで及ぼすべきか、という問題です。憲法31条(適正手続)・13条(個人の尊重)・14条1項(平等原則)を根拠とする責任主義の原理が、退去強制処分という重大な不利益処分にも及ぶべきではないか――これが本論点の正面でございます。

本論点は、薬物の運搬事案にもきわめて重要な意義を有します。仮に刑事事件において故意の認定が覆らなかったとしても、続く入管手続の段階で、「退去強制事由の判断にも故意・過失要件が及ぶべきである」という責任主義の射程論を展開しうるからです。これが、当事務所が外国人薬物事案で採用してまいりました「刑事・入管の二段防御戦略」の中核でございます。なお、本論点は現在係争中であり、当事務所として勝訴の予測を断定的に申し上げることはいたしませんが、刑事段階から故意・過失について丹念に争った記録を残しておくことが、後続の入管手続における責任主義射程論の展開の事実的基礎となります。

加えて、当事務所は、入管庁が平成16年以降年度別に公表している在留特別許可事例を詳細に分析し、同種事情・同種背景の事案について、憲法14条1項平等原則違反を理由に、平等の取扱いを求める手法を、外国人事件における独自の方法論として展開しております。

5. 当事務所の解決事例と体制

当事務所では、薬物事件・故意争い事件・在留特別許可獲得事件において、複数の解決実績を有しております。

事例A-1(覚醒剤取締法違反〔営利目的所持〕で無罪判決獲得):覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された中国籍被告人について、捜査側証拠の徹底解析と、被告人質問・反対尋問の精緻な展開を通じて、無罪判決を獲得いたしました。本所は故意・目的等の主観要件の争いに豊富な実務経験を有し、とりわけ薬物事犯における主観要件の争いについて、十分な実務的蓄積を有しております(弁護士ドットコム掲載)。

事例B-2(特殊詐欺受け子事案・複数回再逮捕でも全件不起訴):特殊詐欺の受け子行為に関与したとされ、複数回の再逮捕という連続した打撃を受けた事案において、徹底した取調べ対応、不当な取調べへの抗議、主張立証の反復的展開を通じて、全件について不起訴処分を獲得いたしました。捜査機関の反復的な追及・勾留請求に対峙してなお、主観要件の精緻な争いによって不起訴を獲得しうるという、本所の実務的姿勢の結実でございます(弁護士ドットコム掲載)。同じ方法論は、薬物事犯における運搬・受領・譲渡型事案にも応用可能です。

事例D-2(不法就労助長事件における責任主義の論点・係争中):冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した中国籍女性を救済する事案で、松村大介弁護士が「退去強制事由の判断にも責任主義の射程が及ぶ」「故意・過失なくしての退去強制は許されない」という、従来の入管実務の枠組みを覆す主張を展開しております。本論点は現在係争中ではございますが、責任主義の射程を行政処分にまで及ぼす松村流弁護方針の現実の結実であり、薬物事犯の入管手続段階においても、重要な前哨論点となるものでございます。

事例D-1(難関な在留特別許可を「1発」で獲得):在留資格を喪失した中国籍依頼者について、入管庁過去許可事例の精査、依頼者に有利な証拠の発掘、憲法14条1項平等原則の主張展開等を通じて、1発で在留特別許可を獲得いたしました(弁護士ドットコム掲載事例79877号)。刑事手続後に退去強制手続に移行された場合でも、当事務所は最後の救済を狙う体制を備えております。

当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行は行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関の指定通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。

6. 結語

「中身が薬物だとは知らなかった」――このご本人のお言葉が、刑事手続の中で正当に取り扱われ、尊重されるか否かは、中国籍の依頼者が退去強制を回避し、日本で生活・就業を継続できるか否かに直結いたします。初動接見から公判の結審、さらにはその後の入管手続に至る全工程を、外国人事件特有の論点を理解した弁護士が担当する必要がございます。当事務所は創業以来、外国人薬物事犯について、当初から不起訴処分の獲得を目標とし、退去強制リスクの最小化を視野に入れた弁護方針を一貫して採用してまいりました。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。本記事に記載した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。ご家族・ご友人が薬物関連法令違反の疑いで逮捕されておられる緊急の場面では、どうかお早めに当事務所にご連絡くださいませ。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士 第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録) 舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階) 中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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