中国籍のご家族が「特殊詐欺の見張り役・出し子・受け子」で逮捕された方へ|不起訴処分と在留資格を守るための初動対応
2026/05/14
中国籍のご家族が「特殊詐欺の見張り役・出し子・受け子」で逮捕された方へ|不起訴処分と在留資格を守るための初動対応
(2026年5月時点/松村大介 弁護士 監修)
1. はじめに:日本の特殊詐欺組織の末端に巻き込まれる中国籍の若年層
近時、日本国内で報道される特殊詐欺事件には、ひとつの顕著な傾向が見られます。逮捕されている方々の多くは、十代後半から二十代前半の中国籍の若年層であり、その役割は詐欺組織の中枢ではなく、ATM周辺で警戒に当たる「見張り役」、被害者口座から現金を引き出す「出し子」、被害者から直接現金や金塊・貴金属を受け取る「受け子」など、末端の役どころです。最近の一例として、札幌市内の高齢男性から金塊約4,200万円を騙し取った事件で、中国籍の18歳の男性が「見張り役」として成田国際空港入国時に逮捕され、同組織の三人目の被疑者となった旨が報じられています。
この類型の事件では、当事者の多くが、微信(WeChat)グループ・抖音(中国版TikTok)の求人投稿・留学生コミュニティ内の紹介などを通じて、「楽に稼げる」「日給数万円」といった高額報酬の誘いに乗ってしまい、十分に「これは詐欺だ」という認識を持たないままに加担に至っています。もっとも、日本の裁判実務における「未必の故意」(漠然とした犯意)の認定はかなり厳格であり、「詐欺だとは知らなかった」という単純な主観的抗弁では刑事責任を免れることは困難です。
本記事では、報道された個別事件を素材としつつ、被疑者・被告人を特定する記述は行わず、同種類型の事件に置かれた中国籍ご本人・ご家族が押さえておきたい刑事手続の流れ、退去強制リスク、起訴前段階での不起訴処分獲得の意義、初動対応の要点を、一般的な解説としてご説明します。
2. 適用罪名と刑事手続の大まかな流れ
受け子・出し子・見張り役の行為は、原則として刑法第246条の詐欺罪(10年以下の拘禁刑)の共同正犯を構成します。組織犯罪処罰法第3条第1項第13号の加重が適用される場合には、法定刑の下限が1年以上の有期拘禁刑となります。すなわち、「初犯で末端役にすぎない」事案であっても、決して「微罪」と楽観できる類型ではないことをまずご理解いただく必要があります。
逮捕後、48時間以内に警察から検察官へ送致され、検察官は24時間以内に裁判官に対し勾留を請求します。勾留期間は原則10日、延長されると最長20日に及びます。この「逮捕から勾留決定までの72時間」が、弁護活動上もっとも決定的な局面です。その後、検察官が起訴・不起訴を判断します。
特殊詐欺事案では、捜査機関が余罪追及を理由に再逮捕・再勾留を重ねる運用が常態化しています。一度この循環に入ると、身柄拘束が長期化し、ご家族との連絡や在留資格更新の準備に支障が生じやすくなる点には特にご注意ください。
3. 外国人事件特有の退去強制リスク
入管法第24条第4号リは、「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」を退去強制事由と定めています。詐欺罪(刑法第246条)の法定刑は10年以下の拘禁刑ですが、組織犯罪処罰法の加重が適用されれば下限が1年以上に引き上がります。一旦1年以上の拘禁刑が宣告されると、たとえ全部執行猶予が付されていても、原則として本号の退去強制事由に該当しうる構造です。同号末尾には執行猶予全部の場合の除外規定が置かれていますが、その適用範囲は実務運用上、限定的に解されています。
「執行猶予判決が付いたから日本に居られる」という認識は、中国籍当事者にとって極めて危険です。多くの事例では、執行猶予判決を得たにもかかわらず、その後の退去強制処分により日本を離れざるを得ない結果となっています。また、退去強制水準に達しない事案でも、「素行不良」と評価されて在留資格更新拒否(入管法第21条)や在留資格取消し(入管法第22条の4)のリスクが残ります。
そもそも、退去強制事由の判断にあたり「故意・過失」の要件を要するか否かは、現在の入管行政実務における根本的な論争点です。当事務所の松村大介弁護士は、この論点を正面から問う訴訟を係争中であり、責任主義の射程は行政処分の判断にも及ぶべきであると主張しております(後述の解決事例D-2参照)。詐欺事案の末端役で逮捕されたご本人の将来の退去強制手続における防御線としても、極めて意味のある論点です。
4. 起訴前段階における不起訴処分獲得の決定的な意義
日本に家族・お子様・就学就業基盤を有する中国籍当事者にとって、弁護活動の最優先目標は「起訴前段階で不起訴処分を獲得すること」に置かれるべきです。「公判で執行猶予を取れば足りる」という方針では、その後の退去強制リスクを正面から防げない可能性が高いからです。
不起訴処分を獲得するためには、起訴前段階で次のような活動が必要となります。(1) 客観証拠の精密な分析(ATM映像・移動経路・通信記録・所持金額等から、ご本人の現場での実際の役割を解明すること)。(2) 主観的要件の争点化(「これは詐欺だ」という認識の不存在、指示役による欺罔・脅迫的状況の具体的主張)。(3) 被害者方との示談・宥恕状の取得(特殊詐欺の被害者は高齢の方が多く、弁護士を介した被害者代理人や警察との慎重な間接交渉が必要です)。(4) 上申書・不起訴意見書の検察官への提出。
日本の入管法に精通した弁護士は、起訴前段階の時点で既に「退去強制事由該当性」を視野に入れ、刑事面の不起訴獲得と入管面の在留資格保全という二重の防御線を意識して活動します。これに対し、入管法に不慣れな弁護士が「公判で執行猶予を獲得すれば足りる」との方針で進めた結果、依頼者が在留資格を失う結末に至った事例は、決して珍しくありません。
5. 初動対応で押さえておきたい3つのポイント
第一に、黙秘権の行使です。日本国憲法第38条第1項、刑事訴訟法第198条第2項は、被疑者に黙秘権を保障しています。弁護人と接見する前に、警察・検察の取調べに対し詳細な供述を行うことは避けるべきです。特殊詐欺の末端役事案では、捜査機関が「素直に話せば早く出られる」という誘導的な話法で供述を引き出そうとする傾向が強く、日本の刑事手続に不慣れな外国人当事者にとっては特に危険です。
第二に、早期の弁護人選任です。「当番弁護士」制度により、警察留置期間中に1回だけ無料で弁護士の接見を受けることはできますが、その後の手続を継続的にカバーするものではありません。「これは詐欺だったかもしれない」という疑念に思い当たった時点で、できる限り早く私選弁護人を選任することが望まれます。
第三に、通訳の質の確保です。捜査機関側が指定する通訳人の中立性には限界があり、訳出のニュアンスの僅かな違いが、供述調書の内容を通じて公判に致命的な影響を及ぼす場合があります。当事務所では、独立した中国語専属通訳を常時配置することで、このリスクを大幅に低減しています。
6. 当事務所の弁護体制と解決事例
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、第一東京弁護士会所属の松村大介弁護士(登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野としております。
特殊詐欺の受け子・出し子・見張り役事案と論点を共通にする当事務所の解決事例として、次の3点を簡潔にご紹介します。
第一に、特殊詐欺の出し子事案において、20代女性の弁護人として、ご依頼者の主観的事情(指示役からの欺罔・脅迫的状況、犯意の不存在)を総合的に主張し、起訴前段階で不起訴処分を獲得した事例がございます。この事案で展開した「未必の故意」の争点化と、指示役に利用された状況の具体化は、受け子・見張り役事案でも構造的に共通する論点です。
第二に、特殊詐欺の受け子事案で複数回の再逮捕を経つつ、徹底した取調べ対応支援・不当取調べへの異議申立て・主張立証の精密化を通じ、全件について不起訴処分を獲得した実績がございます。長期化する身柄拘束と再逮捕の循環に対して、当事務所が実戦的に対応してきた裏付けとなる事例です。
第三に、不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に瀕した依頼者について、前例の少ない在留特別許可を獲得した実績がございます。これは責任主義の射程を行政処分の判断にまで及ぼした画期的な成果であり、当事務所が掲げる「刑事不起訴・執行猶予判決・退去強制」の三重防御線の実証的な基盤となるものです。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員や若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。さらに、提携する行政書士と連携し、刑事手続終了後の在留資格更新・変更等の手続まで、ワンストップでご対応いたします。
7. むすびに
「故郷で急に大金が必要になった」「短期で稼いで帰国するつもりだった」――そのような軽い気持ちが、10代・20代の若い方を特殊詐欺組織の末端へと一気に引き込んでしまうことがあります。逮捕後の72時間が決定的な勝負所です。ご家族・ご友人がこの種の事件に巻き込まれた場合は、その「黄金の窓」のうちに、日本の入管法に精通した弁護士へご連絡いただき、刑事面の不起訴と在留資格面の保全という二重の防御線を整えていただければと存じます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得、不法就労助長罪認定事件における前例の少ない在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
連絡先
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
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