舟渡国際法律事務所

中国系国際詐欺組織の幹部・指南役と認定された場合の刑事弁護要点 ― 犯罪収益没収制度が未整備な日本における中国籍当事者の防御戦略

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中国系国際詐欺組織の幹部・指南役と認定された場合の刑事弁護要点 ― 犯罪収益没収制度が未整備な日本における中国籍当事者の防御戦略

中国系国際詐欺組織の幹部・指南役と認定された場合の刑事弁護要点 ― 犯罪収益没収制度が未整備な日本における中国籍当事者の防御戦略

2026/05/12

中国系国際詐欺組織の幹部・指南役と認定された場合の刑事弁護要点 ― 犯罪収益没収制度が未整備な日本における中国籍当事者の防御戦略

2026年5月11日、共同通信は、米英両国政府が「アジア最大級の犯罪集団」として経済制裁を発表したカンボジアの中国系組織「プリンス・グループ(太子集団)」の最高幹部級の人物が、制裁公表前後に小型のプライベート機を用いて成田空港・プノンペン空港間を複数回往復し、日本に出入国を繰り返していたとみられる旨を独自報道いたしました。同報道の核心は、日本国内において犯罪収益の没収に関する法整備が立ち遅れているため、結果として国際特殊詐欺組織から「資産保全のための安全港」と看做されている、という重大な構造的問題提起でございます。

もっとも、この現状の裏面にあるのは、今後、日本の捜査機関が、中国系国際詐欺組織との関連が疑われる中国籍の企業経営者・出入国者・資金移動の関係人等に対し、これまでにない強度で刑事捜査の射程を広げていく ― という現実的な見通しです。すなわち、本日以降、関与の度合いが軽微であった、あるいは認識を欠いていたと主張すべき中国籍当事者についても、刑事手続上「指揮層」「指南役」と一括して取り扱われ、長期身体拘束・実刑判決・退去強制という三重の不利益に直面するリスクが高まっているといえます。

当事務所松村大介弁護士は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護を専門とし、中国系国際詐欺組織の指揮層・指南役と認定された刑事事件に対する防御方法について豊富な経験を有しております。本稿では、本類型事案の刑事手続の流れ、退去強制リスク、不起訴処分の決定的重要性、初動対応の要点について整理し、中国籍当事者およびそのご家族の参考に供するものでございます。

一、本類型事案における刑事手続の流れ

国際特殊詐欺組織の指揮層・指南役と認定された場合に適用されうる罪名は、詐欺罪共謀共同正犯(刑法246条・60条)、組織的犯罪処罰法3条の団体活動性犯罪加重、犯罪収益移転防止法違反、組織的犯罪処罰法10条・11条の犯罪収益等隠匿罪等、極めて多岐にわたります。さらに、日本国内の金融機関の口座操作、暗号資産交換業者の利用が絡む場合は、資金決済法、外国為替及び外国貿易法(外為法)の併合適用も予想されるところでございます。

本類型事案の最大の特徴は、「再逮捕」の頻発性にございます。1回の逮捕に係る被疑事実は通常、個別の被害事案または個別の資金移動行為に限られますが、その後の捜査の進展に伴い、別の被害事案・別の資金移動行為が新たな被疑事実として次々と追加され、被疑者の身体拘束期間が結果として半年から1年以上に及ぶことが多く見受けられます。本人の孤立感、ご家族の心理的負担はいずれも極限に達し、初動対応を誤ると、本人の供述が後の公判で決定的な不利な証拠となるおそれがございます。

逮捕後72時間以内に警察は被疑者を検察官に送致し、検察官は24時間以内に裁判所に勾留請求を行います。勾留期間は原則10日間で、10日間まで延長可能、合計最長20日間の身体拘束が許されます。その後、新たな被疑事実で再逮捕される場合は、改めて20日間の勾留が起算されます。この「再逮捕・再勾留」の循環こそが、本類型事案が長期化する構造的原因となっております。

二、外国人事件特有の退去強制リスク ― 入管法24条各号の重畳的適用

中国籍当事者が本類型事案で特に注意を払うべき点が、入管法24条各号に定められた退去強制事由でございます。本類型事案の罪名群は法定刑が比較的重いものが多く、入管法上の射程も相応に広範に及ぶところでございます。

まず、入管法24条4号リは、「無期又は1年を超える拘禁刑」に処せられた者を退去強制の対象としております。詐欺罪自体の法定刑は「10年以下の拘禁刑」(刑法246条)であり、単独の実刑判決でも1年を超える拘禁刑となる可能性がございます。さらに、組織的犯罪処罰法3条1項により団体活動性詐欺として加重される場合、刑罰の上限は「1年以上の有期拘禁刑」に引き上げられ、4号リの要件への該当はより容易となります。

ここで重要な留意点といたしまして、4号リの要件には、全部執行猶予が付された拘禁刑について除外規定が設けられております。しかしながら、本類型事案の実刑率は極めて高く、特に「指揮層」「指南役」と認定された当事者について、全部執行猶予判決を獲得した実例はほとんどございません。すなわち、刑事裁判で一部執行猶予や執行猶予を獲得したとしても、退去強制リスクを完全に阻却することはできない、というのが実務の現実でございます。

加えて、犯罪収益等隠匿罪(組織的犯罪処罰法10条)は、法定刑が「5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」とされ、実刑判決の場合には同様に4号リの要件に該当いたします。

また、当事務所松村大介弁護士が現在係争中の事例D-2(不法就労助長事案)は、入管行政が長年踏襲してきた「退去強制事由の判断には故意・過失を要件としない」とする運用に対し、憲法上の責任主義の射程が行政処分にどこまで及ぶかという根本問題を正面から問う訴訟でございます。本類型事案におきましても、「参加した組織が犯罪集団であることを知らなかった」「合法的な商業サービスの提供と認識していた」と当事者が主張する場合、刑事手続段階での故意・過失の争点は、その後の退去強制手続における第二・第三の防御線への重要な布石となります。これがいわゆる「刑事と入管の二重防御線」と称される松村流弁護方針の核心でございます。

三、不起訴処分の決定的重要性 ― 執行猶予判決ではなお在留資格保護に不足

本類型事案におきましては、執行猶予判決を獲得した場合でも、結果的に強制送還となるケースが極めて多く見受けられます。これは、執行猶予判決の場合に4号リの「1年を超える拘禁刑」要件には除外可能性があるとしても、4号チ「外国人の不法就労行為に関連する有罪」、4号ヘ「我が国の利益又は公安を害する行為」等、他の号の適用が独立に成立しうるためでございます。すなわち、「執行猶予が付いたから日本に居られる」という説明自体が、入管法24条各号の構造についての誤解に基づく可能性が否定できません。

したがって、将来高度に退去強制に発展する可能性が予想される刑事事件におきまして、弁護活動の最優先目標は「執行猶予判決の獲得」ではなく「起訴前段階からの不起訴処分の獲得」に置かれるべきでございます。この点について入管法の構造を十分に理解されていない弁護人の選任は、結果として依頼者の在留資格喪失・強制送還につながる重大な不利益をもたらしかねず、ここに本所が一貫して警鐘を鳴らしてきた所以がございます。

不起訴処分の獲得は、(一)身体拘束初動段階における取調べ対応の助言、(二)共謀の認識・指示行為の故意性等、決定的争点に関する証拠収集と主張、(三)依存度・受指示性等の情状面の主張(特に指示役内部での上下関係における当事者の相対的な位置取り)、(四)被害弁償・宥恕状の取得、(五)検察官面談における意見書提出、といった一連の活動を総合的に展開することによって達成されます。

四、初動対応で押さえておきたい3つの要点

(一)黙秘権の行使

中国籍当事者が捜査段階で陥りやすい最大の落とし穴は、「早く帰宅したい一心で、捜査機関に対して全面自白してしまう」という心理にございます。しかしながら、本類型事案におきましては、ご本人の供述により構成される共謀の認識・指示行為の具体的内容こそが、後の公判で決定的な不利な証拠となります。弁護人が到達するまでの間は、憲法38条1項・刑事訴訟法198条2項に保障された黙秘権を徹底して行使されることが肝要でございます。

(二)早期の弁護人選任

中国本土在住のご家族は接見に来日できないことが多く、弁護人がご家族との状況共有の主たる窓口を担います。逮捕後24時間以内の初動接見が、事案の結末を大きく左右することが少なくございません。本類型事案におきましては、当番弁護士制度を入口とすることも考えられますが、外国人事件・組織犯罪事件の経験を有する私選弁護人を早期に選任することが望ましく、ご家族から本所にご相談を頂戴する際は、初動から松村大介弁護士が直接対応いたします。

(三)経験ある通訳の重要性

捜査機関が指定する通訳人は必ずしも法律用語の専門家ではなく、中国語の方言(北京語・上海語・広東語等)への対応が十分でない場合も見受けられます。通訳人を介して作成される供述調書のニュアンスのずれが、後の公判で致命傷となる例は決して稀ではございません。本所には、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。

五、当事務所のご案内および解決事例のご紹介

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が中心となり、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野としてまいりました。

【事例A-1(覚醒剤取締法違反・営利目的所持事案における無罪判決の獲得)】 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された事案におきまして、捜査手続の適法性、所持の故意、営利目的の不存在等の争点について徹底的な証拠分析を行い、裁判員裁判対象事件・世間的にも報道された重大事件を含む案件で無罪判決を獲得いたしました。本類型事案におきましても、「指揮層」「指南役」とされる方々の共謀の認識・指示行為の具体性について、同様の証拠分析手法を援用し、徹底的な反論を展開いたします。

【事例E-1(裁判員裁判対象事件・国際刑事事件への対応実績)】 国際刑事事件、裁判員裁判対象事件、世界的に報道された重大事件に対し、豊富な対応経験を有しております。中国籍当事者の重大事件において直面することの多い、複数回の再逮捕・長期身体拘束・メディアの集中報道といった特殊な困難に対し、本所は一貫した対応体制を整備しております。

【事例F-1(外国SNS侮辱被害事案で国際刑警機構経由での刑事告訴受理)】 外国SNSを利用した侮辱被害事案において、日本の警察と国際刑事警察機構(インターポール)との連携により刑事告訴が受理された事例がございます。本所は国際捜査共助の実務運用にも通じており、被疑者・被告人側の防御戦略の構築にも活かしてまいります。

【事例D-2関連(不法就労助長罪認定事件における前例のない在留特別許可獲得)】 入管実務が長年採用してきた「退去強制事由には故意・過失を要件としない」とする運用に対し、憲法上の責任主義の射程から根本的な問題提起を行ってきた弁護方針の結実でございます。刑事段階での防御線にとどまらず、退去強制段階の防御線を前例のない形で押し広げた画期的な成果でございます。本類型事案で「参加した組織が犯罪集団であることを知らなかった」と主張される場合、刑事段階で故意・過失を徹底して争うことが、後の入管段階の主張基礎を成します。

【事例D-1(難関とされた在留特別許可を1度の申請で獲得)】 資料が極めて限られた困難な状況下で、入管庁の過去の許可事例の精密な分析を通じて憲法14条1項違反の主張を展開し、第1回目の申請で在留特別許可を獲得した事例でございます。本類型事案が最終的に退去強制段階に進んでしまった場合でも、本所は同種の分析・主張体制を直ちに発動いたします。

当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。さらに、提携の行政書士による刑事手続終了後の在留資格更新・変更等のワンストップサポートも整備しております。

六、結語

国際詐欺組織の指揮層・指南役と認定される刑事事件は、外国人刑事弁護のなかでも最も複雑かつ困難な類型のひとつでございます。共謀共同正犯の認識、指示行為の具体性、犯罪収益等隠匿の客観的行為と主観的認識との乖離、退去強制事由の重畳的適用 ― いずれの論点も、高度な専門性を備えた弁護活動を要求するものでございます。このような事案にお悩みの依頼者ご本人またはご家族におかれましては、どうかお早めに当事務所までご相談を賜れれば幸いでございます。接見の初動から、松村大介弁護士が直接対応させていただきます。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、不法就労助長罪認定事件における前例のない在留特別許可獲得等の解決実績を有する。

 

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網站:https://matsumura-lawoffice.jp/

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


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