SNS型暗号資産投資詐欺の高額資金移動役・送金実行役と認定された場合の刑事弁護要点 ― 在日中国人当事者の防御戦略と暗号資産特有の客観性・故意の争点
2026/05/12
SNS型暗号資産投資詐欺の高額資金移動役・送金実行役と認定された場合の刑事弁護要点 ― 在日中国人当事者の防御戦略と暗号資産特有の客観性・故意の争点
近年、SNS型投資詐欺(日本警察実務上の正式名称は「SNS型投資・ロマンス詐欺」)の被害規模が急速に拡大しております。2026年3月には、新潟県警の発表によりますと、東京都内在住の中国籍36歳男性を中心とする複数の共謀者が、2025年8月から9月にかけて岡山県内の50代男性をLINEの投資広告で誘導し、21回にわたり計約8,171万円相当の暗号資産を送金させて詐取したとされる事案が発生いたしました。本被疑事実は当該一連の大規模詐欺事案の一部にすぎず、同男性は同種手口の別の被害により既に複数回にわたって再逮捕されているとのことでございます。
本類型事案で逮捕される中国籍当事者には、「合法的な暗号資産アービトラージ業務」「中国本土からの送金の合法的な変換業務」と認識して関与した結果、客観的には日本国内被害者に対する詐欺行為の資金移動・暗号資産送金の実行役としての一面を有する形となり、刑事追及を受けるケースが多く見受けられます。本類型事案の最大の特徴は、「客観的行為の外観」と「ご本人の主観的認識」との間にしばしば重大な乖離が存することにあり、故意・共謀の認識という争点について緻密な弁護を展開できるかが、事案の結末を左右いたします。
当事務所松村大介弁護士は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護を専門とし、暗号資産関連型詐欺事案におけるご本人の未必の故意・共謀の認識といった争点について、豊富な実務経験を有しております。本稿では、本類型事案の刑事手続の流れ、退去強制リスク、不起訴処分の重要性、初動対応の要点について整理し、中国籍当事者およびそのご家族の参考に供するものでございます。
一、本類型事案における刑事手続の流れ
SNS型暗号資産投資詐欺の高額資金移動役・送金実行役と認定された場合に適用されうる罪名は、詐欺罪共謀共同正犯(刑法246条・60条)、組織的犯罪処罰法3条の団体活動性詐欺加重、組織的犯罪処罰法10条・11条の犯罪収益等隠匿罪、資金決済法上の無登録暗号資産交換業違反(資金決済法63条の2第1項)、犯罪収益移転防止法違反(口座の不正利用関連)等、多岐にわたります。資金額が高額に及ぶ場合(本案の8,000万円規模など)、刑罰の上限は相当に重いものとなります。
本類型事案におきましては、「再逮捕」の頻発性が極めて顕著でございます。各被害事案がそれぞれ独立した被疑事実となるため、警察は被害事案ごとに別々に立件し、再逮捕を繰り返します。本案の東京都内中国籍男性が再逮捕された状況は、まさにこの構造の典型でございます。一連の再逮捕の循環は半年から1年以上に及ぶことがあり、ご本人の身体拘束期間は極限まで累積する場合がございます。
逮捕後72時間以内に警察はご本人を検察官に送致し、検察官は24時間以内に裁判所に勾留請求を行います。勾留期間は原則10日間で、10日間まで延長可能、合計最長20日間でございます。再逮捕の場合は、改めて20日間の勾留が起算されます。
二、外国人事件特有の退去強制リスク ― 入管法24条4号リの直撃
中国籍当事者が本類型事案で特に注意すべき退去強制事由は、入管法24条4号リに定められた「無期又は1年を超える拘禁刑」の処刑でございます。詐欺罪自体の法定刑は「10年以下の拘禁刑」(刑法246条)であり、単独の被害事案の実刑判決でも1年を超える拘禁刑となる可能性が十分にございます。さらに、組織的犯罪処罰法3条1項1号の団体活動性詐欺加重の場合、刑罰の上限は「1年以上の有期拘禁刑」(最高25年)に引き上げられます。
ここで重要な留意点として、4号リには全部執行猶予が付された拘禁刑について除外規定が設けられております。しかしながら、本類型事案では、被害規模が数千万円級を超える事案について実刑判決率が極めて高く、被告人が複数回の再逮捕の積み上げを受ける関係上、量刑実務上、全部執行猶予を獲得することはほぼ不可能でございます。
また、犯罪収益等隠匿罪(組織的犯罪処罰法10条)は法定刑が「5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」とされ、実刑判決の場合には同様に4号リの要件に該当するおそれがございます。
加えて、当事務所松村大介弁護士が現在係争中の事例D-2(不法就労助長事案)は、入管行政が長年踏襲してきた「退去強制事由の判断には故意・過失を要件としない」とする運用に対し、憲法上の責任主義の射程から根本問題を提起する訴訟でございます。本論点は本類型事案におきまして特に実務上の価値を発揮いたします。すなわち、高額資金移動役と認定された中国籍当事者の中には、「参加した活動が詐欺であることを知らなかった」「合法的な暗号資産アービトラージ業務と認識していた」と主張するケースが少なくございません。刑事段階で当該故意・過失の争点を徹底的に争うことは、その後の退去強制段階・さらには再入国段階での主張基礎としての布石となります。
三、不起訴処分の決定的重要性 ― 執行猶予判決ではなお在留資格保護に不足
本類型事案におきましては、執行猶予判決を獲得しても退去強制を回避することの保障とはなりません。これは、執行猶予判決の場合に4号リの「1年を超える拘禁刑」要件には除外可能性があるとしても、4号チ「外国人の不法就労行為に関連する有罪」、4号ヘ「我が国の利益又は公安を害する行為」等、他の号の適用が独立に成立しうるためでございます。
したがって、将来高度に退去強制に発展する可能性が予想される刑事事件におきまして、弁護活動の最優先目標は「執行猶予判決の獲得」ではなく「起訴前段階からの不起訴処分の獲得」に置かれるべきでございます。入管法の構造を十分に理解されていない弁護人を選任された場合、結果として依頼者の在留資格喪失・強制送還につながる重大な不利益をもたらしかねないところでございます。
不起訴処分の獲得は、(一)暗号資産送金行為の客観性と「詐欺被害金」との関係性の争点化(資金の出所、被疑者の関与時点、暗号資産の特定性等)、(二)共謀の認識・指示行為の故意性の争点化(特にLINEグループの招募方法、本人の招募時点における状況認識)、(三)依存度・受指示性等の情状面の主張、(四)被害弁償(暗号資産換算後の被害金)の最大限の努力、(五)検察官面談における意見書の提出、といった一連の活動を総合的に展開することによって達成されます。
加えて、暗号資産関連事案特有の論点として、「暗号資産の特定性問題」(送金時点の暗号資産価値と刑事請求時点の換算価値との差異)、「共謀共同正犯の射程」(一段階の資金移動のみに関与した被告人が全体の詐欺の共謀共同正犯として処罰されうるか)といった専門的論点についての弁護も、事案の結末を大きく左右いたします。
四、初動対応で押さえておきたい3つの要点
(一)黙秘権の行使
本類型事案で最もよく見られる初動の失敗は、ご本人が捜査機関に対し「詐欺とは知らず、合法的な交換業務と思っていた」と説明した結果、それが「未必の故意の自白」として援用されてしまうという状況でございます。「合法的な交換業務」の主張それ自体は誤りではないものの、その叙述の方法、タイミング、詳細の度合い等を弁護人による調整なしに行ってしまうと、捜査機関により歪められて利用される危険性が高うございます。弁護人が到達するまでの間は、憲法38条1項・刑事訴訟法198条2項に保障された黙秘権を徹底して行使されることが肝要でございます。
(二)早期の弁護人選任
本類型事案におきまして、逮捕後24時間以内の初動接見の質が事案の結末を決定いたします。本案で問題となる争点 ― 暗号資産の客観性、共謀の認識、未必の故意の有無 ― はいずれも高度に専門的であり、外国人刑事弁護・組織犯罪事件の経験のない弁護人による対応では致命的な失敗を招くおそれがございます。
(三)経験ある通訳の重要性
本類型事案の核心的争点である共謀の認識・未必の故意の有無は、最終的にはご本人の供述(特に募集された当時の状況説明)の微妙な語意により判定されます。捜査機関の指定通訳人では、こうした微妙な語意を正確に伝達できない場面が少なくございません。本所には、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。
五、当事務所のご案内および解決事例のご紹介
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が中心となり、中国籍の依頼者のSNS型投資詐欺・暗号資産関連詐欺事案について豊富な経験を蓄積してまいりました。
【事例B-2(特殊詐欺受け子・複数回再逮捕も全件不起訴)】 特殊詐欺の受け子として複数回にわたって再逮捕された事案におきまして、徹底した取調べ対応・不当取調べへの抗議・主張立証を通じて、全件について不起訴処分を獲得した事例でございます。本事例の手法は、本類型事案の「複数被害事案を別件立件・再逮捕の繰返し」という構造に直接適用できるものでございます。本所はこのような再逮捕循環下での防御活動について豊富な経験を蓄積しております。
【事例C-1(取り込み詐欺被害事件で7,500万円の解決金を獲得)】 卸業を営む依頼者の取り込み詐欺被害事件におきまして、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、被害金を大きく上回る7,500万円の解決金を獲得した事例でございます。本所の示談交渉力の背景は、加害者側の被害弁償活動においても同等の効力を発揮いたします。本類型事案では、被害弁償(特に暗号資産の換算価値の評価)への緻密な対応が、不起訴判断を左右するところでございます。
【事例F-2(インターネット誹謗中傷被害事件で5,000万円の解決金を獲得)】 インターネット上の誹謗中傷被害事件におきまして、5,000万円の解決金にて成功裡に解決した事例でございます。本所はインターネット・SNS関連の刑事事件の実務運用に通じており、本類型事案におけるSNS誘導の構造・LINEグループ募集モデルの争点化についても、高い水準で活動を展開できるものでございます。
【事例D-2関連(不法就労助長罪認定事件における前例のない在留特別許可獲得)】 入管行政が長年採用してきた「退去強制事由には故意・過失を要件としない」とする運用に対し、憲法上の責任主義の射程から根本問題を提起してきた弁護方針の結実でございます。本類型事案におきまして、「参加した活動が詐欺であることを知らなかった」と主張される中国籍当事者の刑事段階での故意・過失の徹底的な争いが、その後の入管段階での主張基礎を成すものでございます。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。提携の行政書士による刑事手続終了後の在留資格更新・変更等のワンストップサポートも整備しております。
六、結語
SNS型暗号資産投資詐欺の資金移動役・送金実行役と認定される刑事事件は、客観的行為の外観とご本人の主観的認識との乖離が最も顕著な類型でございます。共謀共同正犯の認識、暗号資産の特定性、未必の故意の有無、犯罪収益等隠匿の故意 ― いずれの論点も、専門的な弁護活動を要求するものでございます。ご本人またはご家族におかれまして、このような事案にお悩みの場合は、どうかお早めに当事務所までご相談を賜れれば幸いでございます。接見の初動から、松村大介弁護士が直接対応させていただきます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、不法就労助長罪認定事件における前例のない在留特別許可獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
網站:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京を中心に刑事事件の弁護
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