中国籍の方が違法ポーカー賭博店事案で逮捕されたら|起訴前の不起訴獲得と在留資格を守るために
2026/05/16
中国籍の方が違法ポーカー賭博店事案で逮捕されたら|起訴前の不起訴獲得と在留資格を守るために
1. はじめに
近年、東京をはじめとする大都市の繁華街において、中国籍の方が同胞向けに経営される違法ポーカー賭博店の摘発事案が、警視庁国際犯罪対策課によって相次いで報じられております。2025年5月上旬には、東京都豊島区のマンションの一室が現場摘発を受け、賭博店主3名が賭博開張図利罪の現行犯として逮捕されると同時に、店内にいた9名の客も単純賭博罪の現行犯として逮捕されました。逮捕された客のうち8名が中国籍であったとされ、約10か月間にわたり累計約6,000万円の売上があったと報じられております。
本記事では、こうした類型の事案を素材として、経営側(開張図利側)と客側(単純賭博側)それぞれの刑事手続の流れ、退去強制リスク、そして刑事弁護方針について整理いたします。あくまで一般的な解説でございますが、日本にお住まいの中国籍の方々・そのご家族・ご友人で、同種の嫌疑に直面されている方々のご参考となれば幸いに存じます。
2. 罪名構造と法定刑
日本の刑法は、賭博行為を3段階の構造で処罰しております。
第一段階は「単純賭博罪」(刑法185条)で、50万円以下の罰金又は科料に処せられます。第二段階は「常習賭博罪」(刑法186条1項)で、3年以下の拘禁刑に処せられます。そして最も重い第三段階が「賭博開張図利罪」(刑法186条2項)で、3か月以上5年以下の拘禁刑に処せられます。
「賭博開張」とは営利目的で賭博場を主宰する行為を指し、「図利」とは賭博行為から手数料・抽水(テラ銭)等を収受して利益を図る行為を指します。中国籍の経営者が勝ち金の5%を手数料として収受していた事案は、典型的な賭博開張図利罪の構成要件を満たします。
なお、令和4年改正刑法(令和7年6月1日施行)により、従来の「懲役」「禁錮」は廃止され、両者を一本化した「拘禁刑」が新設されました。本記事においても、現行法の解説として一貫して「拘禁刑」と表記してまいります。
3. 刑事手続の流れ
現場摘発の場合、現行犯逮捕の形態がほぼ全てでございます。逮捕後48時間以内に検察官に送致され、検察官は24時間以内に勾留請求を行うか否かを決定します。裁判所が勾留決定を行えば、勾留期間は10日間、必要に応じて更に10日間延長され、合計最長20日間となります。検察官は勾留期間満了前に起訴・不起訴を決定する必要があります。起訴されれば正式裁判手続に進み、不起訴処分を得られれば釈放となります。
身柄拘束期間中の接見は、原則としてご家族又は弁護人が行います。弁護人が手配する中国語通訳人を通じての接見も可能でございます。この段階では中国国内のご家族との接触が困難な場合が多く、弁護人が依頼者ご本人と外界をつなぐ唯一の橋となります。
4. 外国人事件特有のリスク──退去強制
中国籍の依頼者にとって、刑事処分そのものは問題の終点ではございません。入管法24条4号リは、「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」を退去強制事由として定めております。同号は全部執行猶予判決の場合に除外規定を有しますが、実刑1年以上の場合は例外なく退去強制事由に該当いたします。
賭博開張図利罪の法定刑上限は5年の拘禁刑であり、実刑判決が言い渡される事例も少なくありません。仮に執行猶予判決を獲得できたとしても、在留資格更新や永住申請の段階で「素行不良」と評価され、不許可となるリスクが併存いたします。客側が単純賭博罪のみで罰金又は科料に処せられた場合であっても、入管法24条4号リに該当する形での退去強制事由にはなりませんが、「素行」事由として後日の在留資格更新・永住申請に影響を及ぼします。
実務上、特に留意すべきは、開張図利側の被告人が「経営・管理」の在留資格をお持ちの場合、刑事手続の結果が在留資格更新審査に直接影響することでございます。「留学」の在留資格をお持ちの客側の方が、罰金処分後の次回更新時に不許可となる事例も報告されております。
5. 不起訴処分の絶対的重要性
以上の構造からすれば、外国人刑事弁護の最優先目標は、「起訴前段階で不起訴処分を獲得すること」に置かれるべきでございます。執行猶予判決の獲得を最終目標と位置付けることは適切ではございません。刑事弁護を専門と称される弁護士の中にも、入管法24条各号の精密な構造を必ずしも十分に把握されていない方は存在いたします。「執行猶予がついたから日本に居られる」とのご説明が、結果として依頼者の在留資格喪失・強制送還につながる事例は、外国人刑事弁護の現場では決して稀ではございません。
賭博開張図利事案において、不起訴を求めて主張すべき争点としては、(1)被疑者が単なる雇用従業員であるか経営の中核か、(2)賭博行為に対する「図利意図」の故意があるか、(3)収受していた金銭が賭博の「手数料」の性質を持つか、(4)賭博場所の公然性・継続性などが挙げられます。各争点について、具体的証拠を併せ、勾留段階で弁護人が検察官宛意見書を提出し、検察官面談を通じて交渉することで、最大の効果が期待できます。
客側の単純賭博罪嫌疑につきましては、(a)偶発的な関与であったこと、(b)常習性を欠くこと、(c)社会的有用性が低いこと、(d)反省の度合いと再犯可能性の低さといった事情を積極的に主張し、起訴猶予の形式での不起訴処分獲得を目指すことが適切でございます。
6. 責任主義の射程──当事務所の独自論点
松村大介弁護士が提示する独自の論点として、日本の入管行政が長年「退去強制事由には故意・過失を要件としない」との立場を維持してきた点に対する責任主義(「責任なくして刑罰なし」)の射程の問題がございます。
すなわち、刑事段階で故意の不存在を理由に無罪・不起訴となった場合でも、入管手続では「客観的事実」のみに基づき退去強制事由該当性が認定されうる、という構造に対し、行政処分にも責任主義の射程が及ぶべきではないか、という憲法論・行政法論上の根本問題でございます。
当事務所は現在、この論点を正面から争う訴訟(事例D-2)を係争中であり、その中で、行政処分が故意・過失を要件としない運用は憲法31条(適正手続)・憲法13条(個人の尊重)・憲法14条1項(平等原則)に違反する旨を主張しております。
賭博事案におきましては、客側の「違法賭博と知らなかった」との主観面、経営側の「賭博場所の違法性についての認識」といった主観的要件を、刑事段階で十分に主張し、証拠として保全しておくことが、後の入管段階での第二・第三の防御線の準備として、決定的な意義を持ちます。これが当事務所の提唱する「三重防御線」──刑事段階の故意争点化、入管段階の責任主義主張、在留特別許可段階の平等原則主張──の実体でございます。
7. 初動対応の3つのポイント
賭博関係の嫌疑を受けた中国籍の方々・そのご家族には、下記の初動対応をお勧めいたします。
第一に、黙秘権の行使でございます。警察取調べに対し、捜査官が描く事案構成を肯定するような供述は避けるべきでございます。通訳の補助が不十分な状態で供述調書に署名押印することも厳に避けるべきでございます。賭博事案では、「違法賭博と認識していたか」「経営の意思決定に関与したか」といった核心的な争点が、初期取調べの供述調書に定型化されてしまうと、後の翻意・否認立証が極めて困難となります。
第二に、早期の弁護人選任でございます。逮捕後72時間が黄金期とされ、弁護人への連絡が早ければ早いほど、不起訴処分獲得の可能性は高まります。当事務所では、当番弁護士制度との連携、私選弁護人の即日接見対応など、ご家族からの第一報をいただいた段階で速やかに接見準備に入る体制を整えております。
第三に、当事務所専属通訳の活用でございます。警察・検察が指定する通訳は被疑者ご本人のために動く立場の通訳ではなく、その訳出のニュアンスが供述調書に不利な形で残る危険性が指摘されております。当事務所には、外国人刑事弁護に精通した中国語専属通訳が常時在籍しており、刑事手続の全段階を通じてご本人のために動く立場の通訳をご利用いただけます。
8. 当事務所の解決実績──具体例
松村大介弁護士は、下記の事案類型において、解決実績を積み上げてまいりました。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)における無罪判決の獲得。徹底した証拠分析、被告人質問・反対尋問により、依頼者の所持物の違法性認識の不充足を立証し、無罪判決を獲得した事例でございます。本実績は、「故意」等の主観的要件争点における当事務所の論証能力を示すものであり、賭博開張図利事案の「図利意図」争点においても共通の応用価値を有します。
特殊詐欺出し子事案における20代女性の不起訴処分の獲得。被疑者の主観的事情(指示役からの欺罔的指示、犯意の不存在等)を総合的に主張し、起訴前段階で不起訴処分を獲得した事例でございます。本実績は、当事務所の不起訴処分獲得能力を示すものであり、賭博客側の「常習性」争点においても類推適用が可能でございます。
難関とされる在留特別許可の「一発」獲得。観光来日の中国籍依頼者が日本人女性との間にお子様を授かったところ、不法残留により逮捕・起訴された事案について、松村弁護士が憲法的視座から入管庁と交渉し、最終的に「一発」で在留特別許可を獲得した事例でございます。本実績は、当事務所の在留資格救済における深い経験を示すものでございます。
不法就労助長罪認定事案における前例のない在留特別許可の獲得(係争中)。現在、本所が「行政処分における責任主義の射程」を争点とする係争中訴訟を進めており、実務上初めて入管庁に故意・過失要件論の射程を認めさせた成果を挙げております。本実績は、退去強制段階における当事務所の独自の論証能力を示すものでございます。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。提携の行政書士による在留資格更新・変更等のワンストップ対応も可能でございます。
9. 結語
賭博関係事案において中国籍の方々が直面する最大のリスクは、罰金・拘禁刑そのものではなく、その先に潜在する「退去強制+5年間の上陸拒否」という組合せ、そしてそれによって引き起こされる家族の分断・事業の中断・人生設計の根本的な再構築という困難でございます。逮捕後72時間の黄金期を逃さず、早期に経験豊富な弁護人を選任され、刑事段階で不起訴処分を確実に獲得し、万一の入管段階に備えて主張・証拠を準備しておくことが、最も確実な道筋でございます。
本記事は一般的な解説でございますので、個別事案については弁護士に直接ご相談くださいませ。本記事に記載した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続・行政訴訟を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の「一発」獲得、不法就労助長罪認定事案における前例のない在留特別許可獲得(係争中)等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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