舟渡国際法律事務所

「中国大使館」「中国公安局」を装う詐欺電話の被害──在日中国人留学生・就労者の被害者代理戦略

お問い合わせはこちら

「中国大使館」「中国公安局」を装う詐欺電話の被害──在日中国人留学生・就労者の被害者代理戦略

「中国大使館」「中国公安局」を装う詐欺電話の被害──在日中国人留学生・就労者の被害者代理戦略

2026/05/16

「中国大使館」「中国公安局」を装う詐欺電話の被害──在日中国人留学生・就労者の被害者代理戦略

 

1. はじめに

 

近時、警視庁及び早稲田大学・東海大学・中央大学・龍谷大学・東京外国語大学等の各大学から、「中国大使館」「中国公安局」「中国国際刑警組織」等を名乗る詐欺電話に対する注意喚起が相次いで発出されております。在日の中国籍留学生・就労者の方々を狙ったこの類型の詐欺被害事案では、1件あたり2,000万円を超える被害事例も報告されております。

 

本類型の詐欺は、加害者の拠点を海外(カンボジア、フィリピン、中国本土等)に置き、電話とSNSにより在日中国籍の方々を遠隔で標的とする「国際化・越境化」を顕著な特徴とするものでございます。

 

本記事では、こうした類型の事案を素材として、被害者側の視点から、被害発生後の刑事告訴戦略、被害金回収戦略、そして外国人当事者特有の在留資格保全戦略について整理いたします。日本にお住まいの中国籍の方々・そのご家族・ご友人で、同種の被害に遭われた方々のご参考となれば幸いに存じます。

 

2. 典型的な詐欺の手口

 

本類型の事案には、下記のような典型的手口がございます。

 

第一段階。発信者が「中国大使館領事部」「中国公安局」「中国国際刑警組織」等の機関を名乗り、被害者に対し、「あなたの銀行口座が犯罪に利用された」「あなたの携帯番号が振り込め詐欺に使われた」「あなたが中国から送付した郵便物に違法物品が含まれていた」「中国国内で既にあなたに対する逮捕状が発出されている」等の虚偽事実を告知いたします。

 

第二段階。被害者を特定のSNSグループ(多くは微信又はTelegram)に誘導し、「事件担当検察官」を自称する別の人物が引き継ぎ、「捜査協力」と称して被害者の個人情報、パスポートのコピー、銀行通帳の写真等を取得いたします。

 

第三段階。「事件関係金」を「捜査用の指定保管口座」に送金するよう要求し、応じなければ強制送還の上で中国国内において刑事審判を受けることになる旨、又は中国国内のご家族に対し強制処分が及ぶ旨を威迫いたします。

 

第四段階(最も悪質な手口)。被害者がそれ以上の送金に応じられなくなった場合、被害者ご本人に「自身が誘拐された」状況を演じさせ、加害者がその拘束写真又は動画を撮影し、中国国内のご両親に対し身代金を要求する手口が報告されております。実際に、この手口により合計2,000万円を超える被害が発生した事例もございます。

 

3. 罪名構造(加害者側)

 

本類型事案における加害行為は、複数の罪名を構成いたします。

 

詐欺罪(刑法246条)。法定刑は10年以下の拘禁刑。被害者を欺罔して送金させる中核的行為が、本罪を構成いたします。

 

電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)。法定刑は10年以下の拘禁刑。ATM又はインターネットバンキングを利用した不正送金の態様が、本罪を構成いたします。

 

組織犯罪処罰法の「組織的詐欺」(組織犯罪処罰法6条の2)。法定刑は5年以上の拘禁刑。海外拠点の加害行為は、通常本条の構成要件を満たします。

 

逮捕監禁罪(刑法220条)。法定刑は3か月以上7年以下の拘禁刑。偽装誘拐の手口において、被害者を演技させる行為が、本罪を構成する可能性がございます。

 

恐喝罪(刑法222条)。法定刑は2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金。「協力しないと強制送還される」等の威迫言論は、本罪を構成いたします。

 

なお、令和4年改正刑法(令和7年6月1日施行)により、従来の「懲役」「禁錮」は廃止され、両者を一本化した「拘禁刑」が新設されました。本記事においても、現行法の解説として一貫して「拘禁刑」と表記してまいります。

 

4. 被害者の刑事告訴戦略

 

被害発生後、被害者がまず行うべき行動は、警察に対する刑事告訴でございます。在日中国人の被害者の方々に特有の留意事項として、下記がございます。

 

第一に、被害者ご本人は加害者ではなく被害者である点を明確にご認識いただく必要がございます。詐欺組織は、威迫の手段(強制送還、ご家族への処分等)を用いて被害者が通報を躊躇するよう仕向けます。これは詐欺の手口の中核そのものであり、被害者の方が一切顧慮される必要のないものでございます。

 

第二に、弁護人の早期選任が肝要でございます。日本の警察に対応する際、中国語通訳の補助が必要となる場面が多うございます。当事務所には、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常時在籍しており、告訴状の作成、証拠の整理、警察聴取への立会いの全段階を通じて、翻訳のご支援を提供できます。

 

第三に、証拠の保全を徹底することでございます。具体的には、(a)発信元電話番号(IP電話や「+86」プレフィックス表示であっても保存)、(b)SNSグループのスクリーンショット(強制脱退させられる前の保存)、(c)送金記録、(d)被害金の送金経路、(e)加害者が使用した銀行口座、(f)加害者が被害者に指定した送金先口座、(g)偽装誘拐の手口における写真・動画等を、可能な限り網羅的に保全することが望まれます。

 

第四に、刑事告訴と並行して、民事上の被害金回収戦略の検討も重要でございます。実際に、国際刑事警察機構(インターポール)の連携を通じて、警察が資金フローを追跡し中国本土・東南アジア拠点に至った結果、被害金の一部回収が実現した事例がございます。

 

5. 在留資格保全の独自論点

 

在日中国人の被害者の方が直面する事案には、「二次被害」のリスクが伴うことがございます。すなわち、詐欺組織の要求に応じて被害者ご本人の銀行口座や在留カードの写真を加害者に提供されたところ、その後これらの口座が加害者によって資金洗浄等に利用され、被害者が逆に警察から加害組織への協力者として疑われる、というリスクでございます。

 

このような場合、被害者の主観面(「犯罪組織であると認識していなかった」という故意の不存在)の主張が、決定的に重要となります。刑事段階でこれを十分に主張し、証拠として保全しておかなければ、後の在留資格更新や永住申請の段階で、入管庁から「素行不良」と評価され、在留資格の取消し又は更新拒否に至るリスクが現実化いたします。

 

松村大介弁護士が提示する独自の論点として、日本の入管行政が長年「退去強制事由には故意・過失を要件としない」との立場を維持してきた点に対する責任主義の射程の問題がございます。当事務所は現在、この論点を正面から争う訴訟(事例D-2)を係争中であり、その中で、行政処分が故意・過失を要件としない運用は憲法31条(適正手続)・憲法13条(個人の尊重)・憲法14条1項(平等原則)に違反する旨を主張しております。

 

詐欺被害事案におきましては、被害者が協力者として疑われた場合、刑事段階の早期から主観的認識の不存在を十分に主張し、証拠として保全することにより、後の入管段階での第二・第三の防御線の準備を整えることが、決定的に重要となります。

 

6. 当事務所の解決実績──具体例

 

松村大介弁護士は、下記の事案類型において、解決実績を積み上げてまいりました。

 

取り込み詐欺被害事案における7,500万円解決金の獲得。卸業を営む依頼者が取り込み詐欺の被害に遭われた事案について、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、被害金額を大きく上回る7,500万円の解決金を獲得した事例でございます。本実績は、当事務所の詐欺被害者代理における実務能力を示すものであり、国際詐欺被害者代理においても応用価値を有します。

 

インターネット上の侮辱被害事案におけるインターポール経由の刑事告訴受理。海外SNSで行われた侮辱被害について、日本の警察と国際刑事警察機構(インターポール)の連携により刑事告訴を受理させた事例でございます。本実績は、当事務所の越境的組織犯罪事案における調整能力を示すものであり、越境的詐欺被害事案において直接の応用価値を有します。

 

インターネット誹謗中傷被害事案における5,000万円解決金の獲得。被害者代理人として、インターネット上の誹謗中傷被害事案で5,000万円の解決金を獲得した事例でございます。本実績は、当事務所のインターネット犯罪事案における損害評価・交渉能力を示すものでございます。

 

Facebookなりすましアカウントの仮処分による削除。仮処分手続を通じて、なりすましFacebookアカウントを削除した事例でございます。本実績は、SNS犯罪事案における当事務所の実務的即応能力を示すものでございます。

 

難関とされる在留特別許可の「一発」獲得・不法就労助長罪認定事案における前例のない在留特別許可の獲得(係争中)。前者は、当事務所の在留資格救済における深い経験を、後者は退去強制段階における当事務所の独自の論証能力を、それぞれ示すものでございます。後者の実績は、詐欺組織に巻き込まれて在留資格に不安を抱える被害者の方々にとって、特に重要な参考価値を有します。

 

当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。提携の行政書士による在留資格更新・変更等のワンストップ対応も可能でございます。

 

7. 初動対応の3つのポイント

 

第一に、被害発生後速やかに警察に通報されることでございます。詐欺組織の威迫言論(「通報すれば強制送還される」等)は全て虚偽の威迫であり、信用なさる必要は一切ございません。在日中国人の方々は、日本の警察に対し告訴することができ、そのことによる不利益は何ら存在いたしません。

 

第二に、経験豊富な弁護人を直ちに選任されることでございます。本類型事案における被害金回収は、刑事告訴の迅速性と証拠保全の体系性に依存いたします。当事務所では、被害者代理の即日接見対応の体制を整えております。

 

第三に、当事務所専属通訳をご活用いただくことでございます。本類型事案では、SNS会話・送金記録・通話録音等の電子証拠が大量に登場するため、翻訳の正確性が極めて重要となります。当事務所には、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常時在籍しており、刑事手続の全段階を通じてご本人のために動く立場の通訳をご利用いただけます。

 

8. 結語

 

「中国大使館」「中国公安局」を装う詐欺電話の事案において、在日中国籍の被害者の方々が直面する最大の困難は、被害金額そのものではなく、「騙された→巻き込まれた→協力者として疑われた→在留資格にリスクが及ぶ」という負の連鎖でございます。被害者の方々は、まず自身が被害者の地位にあることを明確にご認識いただき、速やかに通報・証拠保全・弁護人選任の三点を実行されることが肝要でございます。協力者として疑われる場合には、更に刑事段階で主観的認識の不存在を十分に主張し、在留資格を保全することが必要となります。

 

本記事は一般的な解説でございますので、個別事案については弁護士に直接ご相談くださいませ。本記事に記載した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

 

執筆者

 

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

 

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続・行政訴訟を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の「一発」獲得、不法就労助長罪認定事案における前例のない在留特別許可獲得(係争中)、取り込み詐欺被害事案における7,500万円解決金獲得等の解決実績を有する。

 

 

 

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

 

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京を中心に刑事事件の弁護

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。