舟渡国際法律事務所

中国籍ドライバーが過失運転致傷で逮捕されたら|「過失」を争うことと在留資格を守るために

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中国籍ドライバーが過失運転致傷で逮捕されたら|「過失」を争うことと在留資格を守るために

中国籍ドライバーが過失運転致傷で逮捕されたら|「過失」を争うことと在留資格を守るために

2026/05/21

中国籍ドライバーが過失運転致傷で逮捕されたら|「過失」を争うことと在留資格を守るために

東京都内で多重追突事故が発生し、二十代の中国籍男性運転手が過失運転致傷罪(自動車運転死傷行為処罰法5条)の現行犯で逮捕された旨の報道が、在日中国人コミュニティで広く受け止められております。「故意ではない、ただの不注意」という事故であっても、外国人当事者・ご家族にとっては単なる交通事案にとどまらず、在留資格の存続、ひいては退去強制の運命に直結することが少なくありません。本記事では、同種事案を素材としながら、刑事手続の流れ、外国人事件特有の退去強制リスク、そして当事務所が長年主張してきた「行政処分における責任主義の射程」の論点まで、不安を抱えるご家族の方々に向けて整理してご説明いたします。

刑事手続のおおよその流れ

過失運転致傷事件は、故意犯と異なり、多くのケースで事故現場での現行犯逮捕となります。その後の流れは、警察留置(最長48時間)→ 検察官送致(24時間以内)→ 検察官による勾留請求(最長10日間、延長10日間まで)→ 検察官による「起訴/不起訴/略式命令請求」の最終判断、というのが大枠です。

特に重要なのは、逮捕後72時間以内のいわゆる初動期間です。この間に被疑者の方は繰り返し取調べを受け、供述調書がいったん固まりますと、後の公判や処分内容に大きく影響いたします。外国人当事者の場合、供述調書は警察指定の通訳人を介して作成されるため、わずかなニュアンスの違いが「過失の自認」「速度の自白」として後に引用されることもあり、外国人事件に精通した弁護人の選任と専属通訳の手配が極めて重要となります。

在留資格上のリスク(入管法24条の構造)

外国人刑事事件で最も見落とされやすい点は、「執行猶予判決が出ても、必ずしも日本に居続けられるとは限らない」ということです。入管法24条4号リは「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」を退去強制事由とする一方、同号には「全部猶予の場合を除く」旨の例外規定が設けられています。すなわち、全部執行猶予の場合は同号が直接には発動しませんが、一部猶予や実刑(刑期が1年未満であっても)の場合、あるいは他の号(4号チ「薬物関係の有罪」など)に該当する場合には、執行猶予判決を得てもなお在留資格を守れないという構造があります。

過失運転致傷罪は、情状次第で7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されうる罪名です。略式命令で罰金のみで終結する場合は、原則として4号リの要件は満たしませんが、正式に起訴され、しかも1年以上の実刑判決が言い渡された場合には、初犯起訴という事実だけで、中国国内の同種事案の感覚を遥かに超える重大な結果をもたらすことになります。加えて、刑事処分が比較的軽くとも、次回の在留期間更新申請の段階で「素行不良」と評価され、更新が拒否されるおそれも併存いたします。

不起訴処分が決定的に重要となる理由

このような構造ゆえに、外国人刑事弁護の最優先目標は、最初から「不起訴処分の獲得」に据えるべきものであって、「執行猶予判決の獲得」を最終目標とすべきではありません。この点の理解が浅い事務所も少なくなく、ご本人・ご家族に対して「執行猶予を取れば大丈夫です」と説明される場面が、残念ながら現在も散見されます。しかし、入管法24条各号の構造を弁護人が正確に把握していない場合、刑事手続では執行猶予を得たにもかかわらず、その後の退去強制手続によって在留資格を失う、という最悪の結末を依頼者にもたらしかねません。

不起訴処分の獲得に向けて、当事務所では通常、下記の弁護活動を組み合わせて進めます。被害者の方との示談交渉(被害感情の鎮静化、宥恕状の取得)、過失の程度に関する精緻な分析(被疑者に客観的回避可能性があったか、過失認定が合理的か)、検察官に対する意見書の提出(被疑者の社会復帰可能性、家族のサポート体制、退去強制となった場合の苛烈な影響)、被疑者ご本人の陳述書の作成、などです。

初動対応で押さえておきたい3つのポイント

第一に、黙秘権の行使でございます。憲法38条1項及び刑事訴訟法198条2項は、被疑者に「答えなくてよい」権利を明示的に保障しております。「気が付いたら事故を起こしていた」「速度はだいたい○○キロくらいだったと思う」といった曖昧な供述が、後に過失を基礎づける証拠として逆用されることが少なくありません。氏名等の身分事項を除き、刑事手続に精通した弁護人の立会なしには、原則として実質的供述はお控えになるよう、ご家族からもお伝えいただくことが肝要です。

第二に、弁護人の早期選任でございます。逮捕直後から利用できる制度として、当番弁護士制度(初回接見は公費)と私選弁護人の選任とがございます。外国人事件では入管手続と刑事手続が並行進行するリスクがあるため、当初の段階から外国人事件に精通した弁護人を選任されることが、国選弁護への依存よりも、一貫した防御戦略の確保につながります。

第三に、経験のある通訳の確保でございます。警察・検察庁の指定通訳人は、必ずしも法律の専門家ではありません。中国語の方言(北京語・上海語・東北語・広東語等)への対応が十分でない場合もございます。供述調書がいったん通訳のずれによって固まってしまうと、後の公判での修正は極めて困難となります。当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関側の通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳をご利用いただけます。

退去強制事由における「故意・過失」要件論(当事務所独自の論点)

過失運転致傷事件で当事務所が特に重視している論点は、「刑事手続で争われる過失が、その後の入管手続でも審査されるべきではないか」という点でございます。

従来の入管実務は、退去強制事由は行政処分であって、その判断には被処分者の故意・過失を要件としないとの立場を取って参りました。しかしながら、当事務所松村大介弁護士が現在係争中の事例D-2(不法就労助長事案、いわゆる蘇さんの事件)では、この行政実務に対し正面から挑戦し、憲法31条(適正手続)、憲法13条(個人の尊重)、憲法14条1項(平等原則)の解釈上、外国人に重大な不利益を及ぼす退去強制処分の判断にも、責任主義(「責任なくして刑罰なし」)の射程が及ぶべきである旨を主張しております。

この論点が過失運転致傷事件にとって持つ意味は、次のとおりです。すなわち、仮に刑事手続で過失ありとされた場合でも、その過失の程度が極めて軽微である場合(相手車両が急に飛び出してきた、見通しが障害物で遮られていた等の客観事情がある場合)には、後の入管手続において、「当該過失の程度は在留資格を剥奪するに足る程度に至っていない」「責任非難可能性を欠く事案について退去強制を課すことは、責任主義に反する」旨の主張を展開できる、ということでございます。これこそが、刑事弁護段階から伏線を張る「二重の防御線」の発想です。

当事務所の解決事例とご案内

当事務所、舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)を主任とし、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護及び入管手続を主たる業務分野としております。

代表的な解決事例の一つに、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問の準備により無罪判決を獲得した事例がございます(参考事例A-1、弁護士JP、ココナラ法律相談、弁護士ドットコム等の各サイト掲載)。本件は交通事案ではございませんが、ここで展開した「客観事実と主観的構成要件要素の精緻な分離」「捜査の瑕疵の指摘」といった技法は、過失犯の弁護においても応用が効くものです。

もう一つの代表例は、不法就労助長罪(入管法73条の2)の認定事案について、前例のない在留特別許可を獲得した事例でございます(参考事例D-2、現在係争中)。同事例で展開した「退去強制事由判断における責任主義の射程拡張論」は、過失運転致傷事案でも応用可能な、当事務所独自の理論枠組みです。

第三の例として、観光目的で来日した依頼者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法残留で逮捕・起訴された事案がございます。公的書類が殆ど存在しないという困難な状況下で、1発で在留特別許可を獲得した事例を確保しております(参考事例D-1、弁護士ドットコム掲載)。本件は、刑事手続と入管手続が並行する複雑事案について、当事務所が一貫した戦略を提供できる証左でございます。

当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで 全工程を直接担当 いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。外国人刑事弁護では、接見・取調べ立会い・検察官面談・公判の全工程を、同一の弁護士が一貫した戦略のもとに担うことが決定的に重要でございます。また、刑事手続終了後の在留資格更新・変更等の手続は、提携する行政書士と連携してワンストップで対応可能でございます。

結語

過失運転致傷事件は、刑事処分自体は比較的軽微で終結することも多うございますが、外国人当事者にとっては、その後の入管手続こそが、しばしばより大きな試練となります。初動の段階から経験ある弁護士が介入し、「不起訴処分の獲得」を最優先目標としつつ、後の入管手続を見据えた主張の基礎を整えていくことが、依頼者の在留資格を守る最も有効な道筋でございます。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

執筆者情報

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

 

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