舟渡国際法律事務所

二〇二六年六月十四日施行・改正入管法における不法就労助長罪 ― 「雇用された外国人本人」はどう巻き込まれるか|中国籍労働者・ご家族の方へ

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二〇二六年六月十四日施行・改正入管法における不法就労助長罪 ― 「雇用された外国人本人」はどう巻き込まれるか|中国籍労働者・ご家族の方へ

二〇二六年六月十四日施行・改正入管法における不法就労助長罪 ― 「雇用された外国人本人」はどう巻き込まれるか|中国籍労働者・ご家族の方へ

2026/05/18

二〇二六年六月十四日施行・改正入管法における不法就労助長罪 ― 「雇用された外国人本人」はどう巻き込まれるか|中国籍労働者・ご家族の方へ

 

1 本記事の趣旨

二〇二五年六月以降、不法就労助長罪(入管法第七十三条の二)の法定刑が、「三年以下の拘禁刑又は三〇〇万円以下の罰金」から「五年以下の拘禁刑又は五〇〇万円以下の罰金、併科可」へと厳罰化されました。さらに二〇二六年六月十四日施行予定の改正入管法では、雇用主側に対する罰則の整理と、並科の常態化、雇用主側の過失追及の強化が一段と進められる見込みでございます。

この点を巡っては、多くの法律事務所が「雇用主の方への注意喚起」という形で記事を発信しております。しかしながら、本罪の拡張的運用は、実は「雇用された外国人本人」にも重大な影響を及ぼします。雇用主が立件された場合、同じ労働者本人も、入管法上の資格外活動罪(第七十条第一項第四号)、不法就労罪(同項第五号)、不法残留罪(同項第七号)等で追加追及され、結果として退去強制手続に直結する事案が少なくございません。

本記事では、中国籍の労働者ご本人と、中国本土・日本国内でご連絡をお待ちのご家族の方々を想定読者として、「雇用主が不法就労助長罪で立件されると同時に、被雇用者である外国人本人はどのように防御すべきか」という観点から、弁護方針の骨格を整理してまいります。

 

2 不法就労助長罪の法令構造と連動条文

(1)入管法第七十三条の二の処罰対象

不法就労助長罪の処罰対象は、主として次の三類型に整理されます。すなわち、(一)不法就労活動をさせること(在留資格を有しない外国人、在留期間を超過した者、資格外活動許可に違反する者等を就労させること)、(二)不法就労活動をさせる目的で外国人を自己の支配下に置くこと、(三)業として、上記の行為を斡旋・あっせんすること、の三類型でございます。

ここで特に留意すべきは、本罪の主観的要件が「過失でも足りる」とされている点でございます。雇用主が在留カードを確認せず「知らなかった」と弁解しても、確認不足は過失として処罰対象となりうるという解釈が、長年にわたり実務に定着しております。在留カード確認義務は、実質的な事前注意義務として構成されているのでございます。

(2)連動して追及される被雇用者本人の罪名

雇用主が不法就労助長罪で追及される場合、被雇用者である労働者本人は、通常、次のいずれかの罪名で追及されます。すなわち、(一)「資格外活動罪」(入管法第七十条第一項第四号、原則として三年以下の拘禁刑又は三〇〇万円以下の罰金)― 「留学」「家族滞在」等の就労が認められない在留資格者が、資格外活動許可の範囲・時間を超えて就労した場合、(二)「不法就労罪」(同項第五号)― 在留資格を有しない者が就労した場合、(三)「不法残留罪」(同項第七号、三年以下の拘禁刑又は三〇〇万円以下の罰金)― 在留期間を超過して日本に在留を継続している場合 ―― の三類型でございます。

本人がこれらいずれかの罪名で追及されること自体が、入管法第二十四条所定の退去強制事由を直接構成するという構造でございます。

 

3 外国人本人の強制送還リスク

中国籍の労働者ご本人にとっては、次の退去強制事由について、最高度の警戒が求められます。

第一に、入管法第二十四条第四号「ハ」(資格外活動関連)― 「留学」「家族滞在」「特定技能」等の指定された就労範囲を有する在留資格をもって、当該範囲を超えて専ら反復的に就労した場合でございます。雇用主が積極的に指示していたとしても、本人が客観的に許容されていない活動を行っていたという事実をもって、同号要件は充足されると評価されてしまいます。

第二に、入管法第二十四条第四号「ロ」― 在留資格を有しない状態で就労し、その結果として拘禁刑に処せられた場合でございます。

第三に、入管法第二十四条第四号「リ」― 無期又は一年を超える拘禁刑に処せられた場合でございます。資格外活動罪の法定刑は「三年以下の拘禁刑」でございますので、理論上は一年超の量刑可能性も存在いたしますが、本罪単独で実刑(一年超)が科されることは実務上それほど多くはございません。しかしながら、他罪と併合して起訴された場合、量刑は容易に一年を超え、本号が触発される可能性が現実化いたします。

加えて、第二十四条の二第四号(永住者の退去強制特例)等、永住者の場合には特別な要件が定められておりますが、すべての場合に永住者が幸いするとは限りません。在留資格の類型は、退去強制リスクの大小を決定的に左右する要素でございます。

入管実務は、長年にわたり、退去強制事由の判断について「行為者の故意・過失を要件としない」運用を踏襲してまいりました。当事務所の松村大介弁護士が現在係争中の事例(不法就労助長の嫌疑で起訴され強制送還の危機にある女性救済の裁判、いわゆるD-2号事案)は、まさにこの実務運用に対し、責任主義の射程を行政処分としての退去強制にまで及ぼすべきこと、これは日本国憲法第三十一条・第十三条・第十四条第一項から導かれる必然であることを正面から問う訴訟でございます。本件のような類型におきましても、「雇用主に虚偽説明をされた」「在留カードの内容を誤って伝えられた」「資格外活動許可の時間制限を超えていることを認識していなかった」等の無過失・無故意を裏付ける事情を、刑事捜査の初期段階から証拠として確保しておくことは、後に万一入管手続段階に進んだ場合でも、一貫して主張を維持できるか否かを決定的に左右いたします。

 

4 なぜ「不起訴処分」の獲得が決定的に重要か

「有罪になっても執行猶予でしょう、大丈夫」という誤解は、本類型事案で最も危険な落とし穴でございます。資格外活動罪、不法就労罪、不法残留罪の多数事例が、確かに最終的には「執行猶予判決」で終わるところでございます。しかしながら、この執行猶予判決こそが、入管法第二十四条各号の退去強制事由の引き金となるのでございます。刑事判決の確定をもって、たとえ本人が日本国内で「収監されずに」生活できていても、入管局は退去強制手続を起動することができてしまいます。

したがいまして、本類型事案の第一目標は、「起訴前段階での不起訴処分の獲得」に置く必要がございます。具体的には、捜査段階において、(一)「資格外活動」の範囲解釈、当該範囲についての主観的認識の有無を法令面から厳格に争うこと、(二)雇用主の虚偽説明・誤った指示によって誤信に陥った経緯を、ご本人に有利な事情として検察官に詳細に呈示すること、(三)家族滞在・永住申請等の手続が進行中である場合は、保護されるべき法益の存在を検察官に説示すること、(四)「不法残留」の故意について、「在留期間満了日の具体的認識を欠いていた」「更新申請受理をもって適法な在留継続と誤認していた」等の主張余地を残しておくこと、を戦略的・並行的に展開する必要がございます。

「自白+反省+情状」の定型的対応のみでは、外国人労働者ご本人にとっては、結果として「執行猶予でも強制送還」という結末を不可避とすることとなります。起訴前段階での「不起訴処分の獲得」こそが、強制送還リスクを根本的に回避できるほぼ唯一の関所でございます。

 

5 雇用主の立件と同時に、本人がとるべき初動対応の三つのポイント

(1)黙秘権の行使 ― 雇用主側の誘導に乗らないこと

雇用主が不法就労助長罪で立件された場合、雇用主側からご本人に対し、「自分(雇用主)に騙されたと言えばいい」「自分は知らなかったと言えば大丈夫」等の指示がなされることが少なくございません。この種の誘導は、雇用主の立場からはなるほど合理的(自らの刑事責任を軽減しようとする動機)ではあるものの、ご本人にとっては必ずしも有利ではございません。ご本人が残された供述は、ご本人の刑事処分の行方のみならず、後の入管手続におけるご本人の主張の信用性をも左右することとなります。最初の取調べを受ける前に、まずは一律に黙秘権を行使し、弁護人と打合せのうえ慎重に対応されるのが鉄則でございます。

(2)早期の弁護人選任 ― 雇用主と同一の弁護人を共用しないこと

不法就労助長罪の共犯構造の下では、雇用主と被雇用者の利害関係はしばしば対立いたします。雇用主は「自分には過失がない(本人の在留資格を知らなかった)」と主張したい一方、本人は「自分には過失がない(雇用主に騙された/資格外活動の範囲について誤信していた)」と主張したいという関係でございます。同一の弁護人を共用すれば利益相反が生じますので、それぞれ独立の弁護人を選任することが肝要でございます。当事務所は、本類型事案を長年にわたり手掛けており、ご本人の立場から独立して弁護方針を設計いたします。

(3)経験ある通訳の確保 ― 警察指定通訳の構造的リスク

被雇用者となられた外国人労働者の方は、日本語能力に限界があるケースが多く、取調べ内容の理解について齟齬のリスクが大きいところでございます。警察・検察が指定する通訳人は、ご本人の立場に立つ通訳人ではございません。訳出の微妙な差異が、供述調書の中でご本人に不利な形で定型化されてしまうという危険がございます。当事務所には、外国人事件に精通した中国語の専属通訳人が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは独立の立場で、接見、取調べ立会い、弁護人との打合せの全工程をサポートいたします。

 

6 当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目四番十号 布施ビル本館三階)は、第一東京弁護士会所属の松村大介弁護士(登録番号五九〇七七、二〇一九年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護及び入管手続を主たる注力分野として運営しております。

当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。

本件類型に関連する解決事例の一部をご紹介申し上げます。

事例一 不法就労助長冤罪事件における前例のない在留特別許可獲得(係争中)

不法就労助長罪で起訴され強制送還の危機に瀕した女性救済の裁判(D-2号事案)において、当事務所は、退去強制事由の判断にも責任主義・過失責任主義の射程を及ぼすべきであるという憲法論・行政法論の立場から、入管庁の長年の実務運用(退去強制事由は故意・過失を要件としない)を正面から問う訴訟を係属させております。本案件は、行政処分としての退去強制について、行為者に故意・過失がないことを理由とする阻却の可否という根本問題を、現に裁判所に問うているものでございます。日本の外国人刑事・入管手続弁護界において、この種の正面挑戦は極めて稀でございまして、当事務所は本領域における実務上の先駆的位置にあると申し上げてよろしいかと存じます。

事例二 特殊詐欺出し子事案で二〇代女性につき不起訴処分を獲得

特殊詐欺の出し子と位置づけられた二〇代女性の依頼者につき、当事務所は、依頼者の主観的事情(指示役からの欺罔・脅迫的状況、犯意の不存在等)を総合的に主張し、不起訴処分を獲得いたしました。本事案の弁護方針(犯罪に巻き込まれた外国人女性の主観面を、故意の不存在という角度から争う構造)は、本記事で論じている「雇用主に誘導されて違法行為に至った」類型にも高度の参考価値を有するものでございます。

事例三 難関の在留特別許可を一発で獲得

観光目的で来日された依頼者が、日本人女性との間に子を授かりながら、在留資格を喪失し、不法滞在で逮捕・起訴されるという困難な局面に立たれた事案で、当事務所は憲法第十四条第一項平等原則の視座から、入管庁公表許可事例の年度横断的分析を通じて当局と正面から交渉するとともに、刑事公判において在留特別許可獲得に資する証拠を収集し、一発で在留特別許可を獲得した解決事例がございます。

加えて、当事務所では、提携の行政書士と連携し、刑事手続終了後の在留資格更新・変更・永住申請等もワンストップでお受けすることが可能でございます。

 

7 結語

不法就労助長罪の拡張的運用は、決して「雇用主側の処罰強化」だけにとどまるものではございません。必ず付随して、「雇用された外国人労働者本人の刑事追及と強制送還」を伴うのでございます。報道が「雇用主側の厳罰化」を大きく取り上げる一方で、現実に最も深刻な不利益を被るのは、被雇用者となられた外国人労働者ご本人でございます。中国本土・日本国内でご連絡をお待ちのご家族の方々におかれましては、ご本人の運命は、刑事処分の軽重のみによって決まるのではなく、入管手続の行方によっても大きく左右されることを、どうかご理解いただければと存じます。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

本記事に記載した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

 

【執筆者情報】

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:五九〇七七/二〇一九年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目四番十号 布施ビル本館三階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

 

舟渡国际法律事务所

网站:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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