在留期限切れのまま長期滞日していたところ「不審者通報」で職務質問——突然摘発された中国籍ご依頼者の初動対応
2026/05/17
在留期限切れのまま長期滞日していたところ「不審者通報」で職務質問——突然摘発された中国籍ご依頼者の初動対応
一 報道の概要と本記事の背景
2026年5月、新潟県の長岡警察署は、「不審者がうろついている」との住民通報を受けて現場に駆け付け、職務質問を実施した中国籍23歳の男性について、在留期限が既に切れていることを確認し、入管法違反(不法残留)の疑いで逮捕したと報じられました。報道によりますと、当該男性は2023年11月に中国政府発行の旅券を所持して成田国際空港から入国したものの、在留期限であった2024年1月までに更新・変更手続を行わず、約2年間にわたり不法残留状態にあったとのことでございます。
このような類型——「目的不明確な短期滞在ビザで入国後、何らかの事情で帰国できず、在留期限切れのまま沈黙して長期滞在を続ける」事案は、近年中国籍の若年者の方々の間で決して稀ではございません。本記事では、こうした「在留期限切れ後、どうしてよいか分からないまま、ある日突然警察に摘発される」中国籍ご依頼者ご本人および日本国内・中国本土のご家族の方々に向けて、刑事手続と在留特別許可手続の双方の観点から、初動対応のあり方を整理させていただきます。
二 不法残留の罪と刑——「執行猶予判決」は終点ではない
入管法70条1項5号は、在留期限を経過して残留した外国人について、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科を定めております。初犯事案では「執行猶予判決」が標準的な処分とされておりますが、外国籍ご依頼者にとって問題はそこで終わりません。
入管法24条4号ロが定める退去強制事由には、「刑罰法令に違反して拘禁刑に処せられた者」が含まれます。すなわち、刑事公判で執行猶予判決を獲得したとしても、入管法24条の構造上、退去強制事由として認定される余地が残ります。「執行猶予判決が出れば日本に居続けられる」という安易な理解は、外国人事件において最も致命的な誤解の一つでございます。
三 不法残留事件の三類型と発覚経路
3-1 出頭申告型
ご本人またはご家族が自主的に出入国在留管理局に出頭し、「在留期限が切れていた」と正直に申告される類型でございます。近年入管庁が公表している在留特別許可事例を分析すると、出頭申告型の許可率は摘発型に比して明らかに高いことが分かります。これは、自主出頭が遵法意識の表れとして評価される行政庁側の運用が定着しているためと考えられます。
3-2 偶発摘発型(本件報道の類型)
本件のように、住民通報による職務質問、軽微な交通違反、他の事件の被害者・証人としての接触等、偶発的な接触の中で警察が身分確認を行い、在留期限切れが発覚する類型でございます。受動的な発覚であるため、在留特別許可獲得の難度は出頭申告型に比して相対的に高くなる傾向がありますが、刑事段階から在留特別許可に有利な資料の収集を意識することで、結論を覆す余地は十分にございます。
3-3 組織摘発型
入管庁・警察が特定業種(建設業、風俗業、農業等)を集中摘発する類型でございます。本件には直接該当いたしませんため、詳述いたしません。
四 在留特別許可——「運次第」のグレー制度ではない
在留特別許可(入管法50条)は、形式上は法務大臣の自由裁量事項とされますが、出入国在留管理庁は平成16年(2004年)以降、許可・不許可事例を年度別に公表してきております。これらの公表事例は単なる参考資料ではなく、行政庁自身が「許可相当」と判断した先例集としての重要な意義を持っております。
松村大介弁護士の弁護方針においては、本件と本質的事情を同じくする先例について許可しないことは、行政の自己拘束法理および憲法14条1項の平等原則に違反するものとして、論証を組み立てます。具体的には、弁護人は年度横断的に許可事例を精査し、ご本人の個別事情と類似する事例を抽出のうえ、「過去、本件と同種の事情を有する事案について在留特別許可が付与された実績がある」旨を明示的に主張することで、結論の転換を促してまいります。
在留特別許可で重視される主たる事情は、以下のとおりでございます。
- 在日期間(特に10年以上の長期在留)
- 日本人配偶者の有無と婚姻の実質
- 日本国籍を有するお子様の有無と養育・就学状況
- 発覚の経緯(出頭申告か摘発か)
- 素行(前科前歴の有無、税・社会保険納付状況)
- 人道的配慮を要する事情(本国情勢・健康状態等)
五 刑事弁護と入管手続の一体化戦略
不法残留事件において、刑事弁護と入管手続を切り離してお考えになることは禁物でございます。具体的には、刑事段階から下記の三つの防御線を意識した活動が肝要でございます。
5-1 第一の防御線——故意・過失の徹底的な争い(刑事段階)
「在留期限が切れていることを認識しながら残留した」という故意は、不法残留罪の構成要件でございます。ご本人が「日付の管理ができていなかった」「更新手続を済ませたものと誤信していた」「行政書士その他の代理人に手続を委任したが結果的に欺かれていた」等の事情をお持ちの場合は、刑事段階から故意・過失の有無を徹底的に争うべきでございます。
5-2 第二の防御線——退去強制事由における故意・過失要件論(入管段階)
万一刑事公判で有罪判決(執行猶予を含む)に至った場合に備え、本所は「退去強制事由の判断にも責任主義の射程が及ぶ」「故意・過失なくして行政処分を課すことは憲法31条・13条・14条1項に違反する」との主張を展開しております。本所の松村大介弁護士は、現在係争中の不法就労助長事件(蘇さんの事案)において、まさにこの争点を正面から問う訴訟を進めております。不法残留事件においても、「行為者の在留期限経過に対する認識可能性」を巡る議論として応用が可能でございます。
5-3 第三の防御線——平等原則に基づく在留特別許可主張(入管段階)
刑事手続終了後の入管手続段階において、弁護人は入管庁公表事例の分析を通じて、ご本人の事情と類似する過去の許可事例を抽出し、「過去、本件と同種の事情を有する事案について在留特別許可が付与された実績があるにもかかわらず、本件についてのみ不許可とすることは、合理的な理由なく異なる取扱いをするものであって、法の下の平等を定める憲法14条1項に違反する」旨を強力に主張してまいります。
六 舟渡国際法律事務所のご案内と解決事例
当事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、弁護士松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が主宰し、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野としております。
不法残留・在留特別許可に関する主な解決実績
案例D-1:観光目的で来日された相談者と日本人女性との間にお子様が出生したものの、在留資格を喪失し不法滞在で逮捕・起訴された事件。当局から婚姻・認知手続を一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を視野に入れた被告人質問・証人尋問を実施し、入管当局の過去の許可事例の分析を通じて、難関とされた在留特別許可を「1発」で獲得した実績がございます(出典:弁護士ドットコム「難関な在留特別許可に成功」)。
案例D-2(係争中):冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕する女性を救済する裁判で、「退去強制事由には故意・過失が不要」とする従来の実務を覆すべく、責任主義・過失責任主義の射程を問う訴訟を係争中でございます(出典:about-me.md、弁護士JP)。
案例E-1:当事務所は、国際刑事事件・世界的に報道された重大事件への対応経験を豊富に有し、中国籍ご依頼者の重大事件にも数多くお応えしてまいりました(出典:弁護士JP)。
当事務所の最大の特徴
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審、入管手続まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。さらに、提携の行政書士による在留資格・ビザサポートにも一貫してご対応いただける体制を整えております。
七 結語——既に在留期限を過ぎている方も、まずはご相談を
在留期限が切れたまま手続を行えずにいらっしゃる中国籍ご依頼者にとり、最も避けるべきは「沈黙を続け、時間が経つのを待つ」姿勢でございます。日本の入管手続においては、「自主的な出頭・正直な申告」は在留特別許可の判断に少なからぬ積極的意味を持ちます。もっとも、出頭申告の具体的な方法、ご持参いただくべき資料、刑事手続と入管手続の時間軸管理は、いずれも経験ある弁護士の伴走が不可欠でございます。
万一既に警察に摘発されて逮捕に至った場合も、決して絶望なさる必要はございません。当事務所は、刑事段階での故意・過失の争い、入管段階での責任主義に基づく主張、入管庁公表事例の平等原則違反主張という三つの防御線を駆使し、ご依頼者の在留資格を全力でお守りいたします。
本記事は一般的な解説でございまして、個別具体的な事案については、弁護士に直接ご相談ください。
本記事に紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国际法律事务所
网站:https://matsumura-lawoffice.jp/
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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東京を中心に刑事事件の弁護
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