中国籍の経理・会社員の方が日本で業務上横領・特別背任の嫌疑で逮捕されたら|不起訴処分と在留資格を守るために
2026/05/13
中国籍の経理・会社員の方が日本で業務上横領・特別背任の嫌疑で逮捕されたら|不起訴処分と在留資格を守るために
(2026年5月時点/松村大介 弁護士 監修)
1. はじめに ― 在日中国系企業における経理職と刑事リスク
在日中国系企業の事業展開が拡大するに伴い、経理・会計・財務等の職務を担当される中国籍の方が、業務上横領罪(刑法253条)・特別背任罪(会社法960条)等の嫌疑で追訴される事案が、年々増加傾向にございます。これらの類型は、「典型的な外国人犯罪」というよりむしろ、企業内部のご紛争・株主間の対立・取引先との債権債務関係の緊張といったご事情を背景として発生する性質のものでございます。
本記事では、こうした類型の事案を契機として、中国籍のご当事者の方の刑事手続の流れ・退去強制リスク・企業内部背景を踏まえた弁護方針について、一般的な解説を試みるものです。特定個人・特定企業に関する論評ではなく、汎用的な論点整理として位置づけられるものでございます。
2. 適用罪名と法定刑の構造
日本刑法253条の業務上横領罪は、「業務上自己の占有する他人の物を横領した者」につき、10年以下の拘禁刑(令和7年6月施行の現行法における自由刑)を定めております。
会社法960条の特別背任罪は、株式会社の取締役・代表取締役・執行役・監査役その他特別地位者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、株式会社に財産上の損害を加えた場合に、10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科を定めております。
両罪の根本的要件は、「主観的な不法領得の意思」「図利加害目的」「任務違背性」でございます。客観的には資金移動の事実があっても、主観上「他人の物」の占有関係の認識を欠く場合、または図利加害目的が認められない場合は、本罪は成立いたしません。
3. 外国人事件特有の退去強制リスク
入管法24条4号リは「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」を退去強制事由として定めております。業務上横領罪・特別背任罪はいずれも法定刑が10年以下の拘禁刑であり、損害金額が大きい事案では1年を超える拘禁刑(執行猶予付きであっても)が言い渡される可能性が相当程度ございます。同号末尾の執行猶予全部の場合の除外規定の適用範囲が限定され、退去強制リスクが顕著に高まる構造でございます。
また、外国人企業経営者・代表者の方の事案では、在留資格の類型(「経営・管理」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」等)と刑事処分との関係を精密に分析する必要がございます。罰金または比較的少額の事案であっても、退去強制事由に直接該当しないとしても、在留資格更新拒否(入管法21条)のリスクは併存いたします。
企業内部での追訴において、告訴人である被害企業との交渉次第で最終処分が大きく変動する点も、本類型の特徴でございます。被害企業が同一中国系経営者の関連企業や、ご当事者と家族・血縁関係のある企業である場合は、告訴の取下げ・宥恕状取得の可能性が比較的高く、弁護活動の重要な切り口となります。
4. 不起訴処分獲得の中核的位置づけ
在日中国籍のご当事者の方にとって、業務上横領・特別背任事案の不起訴処分獲得は、在留資格の保全、企業経営者としてのご資格の維持、ご家族・お子様の教育環境の維持といった、多層的なご利益の保護を意味いたします。
不起訴処分獲得のための主たる論点としては、(1) 不法領得意思の争点化(資金移動が経営判断・適法な社内貸付・合理的な報酬支払等に基づくものか)、(2) 任務違背性の争点化(特に「図利加害目的」の主観面の争点化)、(3) 被害企業との実質的損害賠償・告訴取下げ・宥恕状取得交渉、(4) 企業内部紛争のご背景の客観化(代表権争い・株主間紛争・派閥対立等)、(5) 業務上の記帳・会計関係の客観資料の体系的整理、が挙げられます。
企業内部紛争を背景として、「刑事告訴を手段として企業の実質支配権を奪うことを企図した」事案も少なからずございます。こうした事案では、弁護人は刑事手続への精密な対応のみならず、民事的・会社法的視点との併合的分析を行うことで、はじめてご依頼者の方の全方位的な保護が可能となります。
5. 初動対応で押さえておきたい3つのポイント
第一に、黙秘権の行使でございます。日本国憲法38条1項、刑事訴訟法198条2項は被疑者の黙秘権を保障いたしております。弁護人と面会する前は、警察・検察の取調べに対し詳細な供述をなさることは避けるべきでございます。特に「資金移動の経緯」「会社との関係性」等の中核的事項に関する供述は、慎重を期されることが肝要でございます。
第二に、早期の弁護人選任でございます。「当番弁護士」制度により警察留置中に弁護士の初回接見を無償でご利用いただけますが、企業犯罪類型の事案は法律論点が複雑かつ資料が膨大でございますため、経験ある私選弁護人を可能な限り早期にご選任いただくことが望ましいと存じます。
第三に、資料の保全でございます。業務上横領・特別背任事案の中核的証拠は、業務上の会計帳簿・契約書・社内決裁文書等でございます。弁護人と協議のうえ、客観証拠資料を体系的に整理・保全されることが、その後の弁護活動の基礎となります。
6. 当事務所の弁護体制と解決事例
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、第一東京弁護士会所属の松村大介弁護士(登録番号59077・2019年登録)が、中国籍のご依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野として運営する事務所でございます。
業務上横領・特別背任事案と論点を共有する当事務所の解決事例として、以下のものがございます。
第一に、虚偽の株主総会決議による代表取締役解任事件において、本所松村弁護士は株主総会決議の不存在を主張し、東京地方裁判所・東京高等裁判所のいずれにおいても勝訴判決を獲得いたしました。本案件において発揮された「会社内部紛争の精密分析能力」は、本罪類型における「企業内部紛争を背景とする刑事追訴」の争点と、高度に同型の能力体系でございます。
第二に、外資系企業の支配権紛争において、当事務所はご依頼者側の勝訴を獲得しております。加えて、取込詐欺被害事件の代理活動においては、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、最終的に被害額を大幅に上回る7,500万円の解決金を獲得いたしました。こうした「民事・刑事を併合した戦略」能力は、企業内部の業務上横領・特別背任事案の防御においても方法論的価値を有するものでございます。
第三に、不法就労助長罪認定事件において、本所松村弁護士は前例のない在留特別許可を獲得し、責任主義の射程を行政処分判断にまで及ぼすことを可能といたしました。これは、業務上横領・特別背任事案における「不法領得意思」「図利加害目的」の争点の深化にも、理論的価値を有するものでございます。
第四に、難関とされた在留特別許可案件において、当事務所は入管庁公表事例の横断的比較と憲法14条1項の平等原則の論証を通じて、複数件の許可実績を有しております。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、ご依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたりご利用いただけます。加えて、中国語の会計資料・中国語契約書等の解読に関し、相当程度の実務経験を蓄積しております。
7. 結語
業務上横領・特別背任事案は、中国籍の企業経営者・会計担当者・経理担当者の方にとって、単なる刑事手続の試練にとどまらず、在留資格・企業経営基盤・ご家族の生活基盤を根底から脅かす類型でございます。72時間の最重要局面において、日本の入管法に精通し、かつ企業法務実務経験を有する弁護人にご相談いただき、刑事不起訴処分と在留資格保全の二重防御線を構築されることが、もっとも肝要かと存じます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。本記事に記載した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍のご依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得、不法就労助長罪認定事件における前例のない在留特別許可の獲得、虚偽の株主総会決議に基づく代表取締役解任事件の地裁・高裁勝訴判決等の解決実績を有する。
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