舟渡国際法律事務所

【勝利のご報告】「不可能」と言われた事案で在留特別許可を獲得 ―― 不法就労助長の壁を、責任主義で打ち破った闘いの記録 ――

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【勝利のご報告】「不可能」と言われた事案で在留特別許可を獲得 ―― 不法就労助長の壁を、責任主義で打ち破った闘いの記録 ――

【勝利のご報告】「不可能」と言われた事案で在留特別許可を獲得 ―― 不法就労助長の壁を、責任主義で打ち破った闘いの記録 ――

2026/04/25

【勝利のご報告】「不可能」と言われた事案で在留特別許可を獲得

―― 不法就労助長の壁を、責任主義で打ち破った闘いの記録 ――

舟渡国際法律事務所 弁護士 松村大介

2026年4月24日

 

はじめに ―― 入管行政の常識を覆した一日

2026年4月24日。この日、私の依頼者に対し、大阪入管が在留特別許可を付与しました。

入管実務に通じた方であれば、この一行の重みを瞬時に理解されるはずです。なぜなら、本件は従来の入管運用において、「許可される可能性は限りなくゼロに近い」と評価されてきた類型の事案だからです。

不法就労助長を理由とする退去強制処分。家族関係なし。長期定着性なし。一審・控訴審ともに敗訴。最高裁係属中。

無罪判決、再審無罪と並び、本件の在留特別許可は、入管行政・行政訴訟の歴史において先例的価値を持つ獲得であると、私は確信しています。

本稿では、この勝利が「画期的」と評しうる理由を、入管実務の構造に立ち戻りながらご説明します。同時に、いま不法就労助長の捜査・退去強制手続に巻き込まれて苦しむ外国人の方々、そしてそのご家族・雇用主の方々に、お伝えしたいことがあります。

「諦めるのは、まだ早い」――この一点を、まずお伝えしておきたいと思います。

 

第一章 報道された「異例の事案」

本件依頼者は、関西の人材派遣会社で契約社員として勤務していた中国人女性です。職務として外国人面接を担当した際、ベトナム人申請者の在留資格を見抜けなかったことを理由に、入管法違反の捜査対象となりました。

刑事手続の結果は、不起訴(起訴猶予)。

すなわち、検察官は、依頼者を起訴しないと判断したのです。

ところが、入管は、この判断とは独立に違反認定を行い、退去強制事由(入管法24条3号の4イ)への該当を認定しました。一審東京地裁、控訴審東京高裁ともに、この認定を支持しました。

本件は、その異例性ゆえに、複数のメディアで取り上げられてきました。

「無過失・不起訴」であってさえ、強制送還が肯定されるという入管法の運用。多くの読者が、その不条理に驚かれたことと思います。

そして、この事案は、現在も最高裁に係属中です。

 

第二章 立ちはだかった「三重の壁」

本件は、外国人の在留権を争う訴訟・申請の中でも、特に困難な部類に属する事案でした。

第一の壁 ―― マクリーン判決という不動の岩盤

外国人の在留に関する行政訴訟において、最高裁判所大法廷昭和53年10月4日判決(マクリーン判決)は、40年以上にわたり、入管行政の事実上の基本判例として機能してきました。

同判決は、外国人の在留更新の許否について、法務大臣に「広汎な裁量」を認めています。この判旨を引用し続ける限り、裁判所が入管庁の判断を覆すのは、極めて例外的な場面に限られます。

東京新聞の取材によれば、2022年に在留資格を巡る判決は154件あったが、入管庁が敗訴したのはわずか7件。敗訴率にして、約4.5%。マクリーン判決を「裁判所の怠慢」と評する元最高裁判事・泉徳治氏の言葉が示すとおり、この岩盤は、なお揺らいでいません。

外国人の権利のために闘う弁護士であれば、誰もがこの岩盤に幾度となく阻まれてきたはずです。

第二の壁 ―― ガイドライン上「最重消極要素」たる不法就労助長

入管庁が公表する「在留特別許可に係るガイドライン」(令和6年3月改定)は、消極要素として「出入国管理行政の根幹に関わる違反又は反社会性の高い違反」を明示しています。

その筆頭として列挙されているのが、

  • 不法就労助長罪
  • 集団密航に係る罪
  • 旅券等の不正受交付等の罪
  • 不法・偽装滞在の助長に関する罪
  • 売春の周旋等
  • 人身取引等

不法就労助長罪は、集団密航・旅券偽造・人身取引と並べて列挙される、消極要素の筆頭格なのです。入管秩序そのものを毀損する重大な違反として、数十年にわたる実務の蓄積の中で確立した評価を受けてきました。

第三の壁 ―― 単身者という積極要素の不在

ガイドラインが想定する積極要素は、

  • 日本人・特別永住者の子であること
  • 日本人・永住者・特別永住者と婚姻が法的に成立し、夫婦の実態があること
  • 日本人・永住者・特別永住者の実子を扶養していること
  • 本邦での滞在期間が長期間(約20年)に及び、定着性が認められること

しかし、本件依頼者は、これらのいずれにも該当しません

積極要素ゼロ、消極要素は筆頭級――入管庁の公表事例を確認する限り、不法就労助長系の退去強制事案で、家族関係・長期定着等の積極要素を欠く単身者に在留特別許可が付与された事例は、見当たりません。

実務に携わる者の感覚として、このような事案で在留特別許可を求めることは、ほぼ望みのない挑戦でした。

 

第三章 突破口 ―― 私が構築した「責任主義による反転」の理論

私は、本件において、従来の実務感覚をそのまま受け入れることはしませんでした。

実務常識に従えば、敗訴は確実。だからこそ、実務常識そのものを問い直す理論を構築する必要がありました。

私が訴訟を通じて立体的に展開してきた理論の核心は、こうです。

不法就労助長を理由とする退去強制処分は、行政上の制裁的処分の性格を有する。

それにもかかわらず、対象者の故意・過失を一切要求しないという従来の実務運用は、責任主義の観点から正当化できない。

少なくとも過失を要求すべきであり、本件依頼者には過失と評価すべき事実が存在しない。

この理論を、私は最高裁係属中の上告理由書、並びに複数の補充書を通じて、多角的に展開してきました。

  • 憲法31条(適正手続)の観点
  • 責任主義の観点
  • 刑事手続における不起訴との整合性の観点
  • 行政法学の比較法的検討
  • 最高裁判例の段階構造

これら多角的な論点を積み上げる中で、「依頼者は、退去強制処分という重大な制裁を甘受しなければならないほどの悪性を有する者ではない」という結論を、強く打ち出しました。

入管行政の本丸であるマクリーン判決の射程を、責任主義という別軸から相対化する。これは、外国人の在留問題における、ひとつのパラダイムシフトを狙った理論構成です。

 

第四章 大阪入管の判断が示したもの ―― 事実上の「無実」認定

入管が在留特別許可の理由を詳細に明示することは、制度上ありません。

しかし、次の事実関係を踏まえれば、大阪入管の判断の意味を、ある程度推測することは可能です。

第一に、本件は、刑事手続において不起訴(起訴猶予)となっている。

第二に、最高裁係属中の上告審において、責任主義を基軸とする理論が、複数の補充書を通じて立体的に展開されている。

第三に、本件依頼者は、ガイドラインの形式的当てはめからすれば、本来「不許可」が強く想定される類型に属する。にもかかわらず、現実には在留特別許可が付与された。

これらを総合すれば、大阪入管は、ガイドラインの形式的当てはめを超えた、何らかの実質的判断を行ったと考えるのが自然です。そして、その実質的判断の方向性は、依頼者が「入管秩序を毀損する悪性ある行為者」には該当しないという評価を、間接的に示すものと読むことができます。

私は、本件における大阪入管の判断を、事実上、依頼者の無実を認めたものと評価したい。

ここでいう「無実」とは、刑事手続における無罪確定とは異なります。それは、退去強制処分という重大な制裁を甘受させるべき悪性ある行為者として依頼者を遇することができない、という入管自身による実質的な判断です。

無罪判決・再審無罪と並ぶ、外国人の権利を取り戻した一日。私は、本件をそのように位置づけたいと考えています。

 

第五章 最高裁での闘いは続く ―― 先例的判断を求めて

本件における大阪入管の判断は、上告審の係属を終わらせるものではありません。

私は、最高裁における上告審理が、本件依頼者の救済のみならず、

  • 不法就労助長を理由とする退去強制処分一般における責任主義の確立
  • ひいては行政法規違反に対する制裁的処分一般における責任主義のあり方

について、先例的判断を示す機会となることを期待しています。

マクリーン判決から半世紀が経過しようとする現在、外国人の在留に関する裁判所の判断枠組みは、転換点を迎えていると考えるべきです。

 

第六章 いま、不法就労助長の捜査・退去強制手続に直面している方へ

ここから先は、本記事を読んでくださっている方の中で、

  • ご自身が不法就労助長の捜査を受けている方
  • ご家族・配偶者が不法就労助長で逮捕・送検された方
  • 雇用主として、外国人従業員に関し入管法違反を疑われている方
  • 退去強制令書が発付され、収容されている方
  • 訴訟で敗訴し、強制送還が現実のものとなりつつある方

このような状況にある方々に、お伝えしたいことがあります。

「過失がない」「不起訴になった」 それでも強制送還される現実

毎日新聞の記事タイトルにあるとおり、現行の入管法運用は、「落ち度なくても強制送還」が起こり得る制度になっています。

検察官が起訴しない、刑事責任を問わないと判断した事案でも、入管は独立に違反認定を行い、退去強制処分を下します。そして裁判所は、マクリーン判決を引用し、入管の判断をほぼそのまま追認する――それが現実です。

「自分は悪いことをしていない。だから大丈夫」――こう考えていると、生活そのものを失います。

「困難な事案だから」と断られた方へ

本件のような事案は、多くの法律事務所が「勝ち目がない」「労力に見合わない」として、受任を躊躇する類型です。

積極要素のない単身者。最重消極要素である不法就労助長。すでに高裁まで敗訴。最高裁の判断見通しも厳しい。

このような事案を、最後まで責任を持って闘い抜く弁護士は、決して多くありません。

しかし、諦めないことには、必ず意味があります

今回の大阪入管の判断は、その何よりの証左です。

私が大切にしている姿勢

困難な事案を諦めず、最後まで闘い抜く――これは、私が一貫して掲げてきた弁護士としての姿勢です。

不法就労助長の事案では、

  • 刑事弁護(取調べ対応、不起訴の獲得)
  • 入管手続(違反審査・口頭審理・異議申出・在留特別許可)
  • 行政訴訟(退去強制令書発付処分取消訴訟、在留資格認定処分取消訴訟)
  • 最高裁での法律論の構築

これらを一気通貫で対応する力が必要です。本件で大阪入管の判断を引き出すことができたのも、刑事段階から最高裁係属に至るまで、各段階で一貫した理論と戦略を維持してきたからです。

 

おわりに ―― ご相談を、お待ちしています

本件は、依頼者にとって、長く厳しい闘いでした。日本社会で生活基盤を築いてきた依頼者にとって、退去強制処分は、生活そのものを奪う重大な処分です。

依頼者を支援し続けてきた雇用主、関係者の方々の真摯な姿勢にも、改めて敬意を表します。

今回の大阪入管の判断は、依頼者個人の救済であると同時に、「入管行政の根幹は、責任主義によって相対化されうる」ことを、実務上示した一例です。同様の苦しみの中にある方々にとって、この判断が一筋の光となることを、私は願っています。

そして、最高裁における上告審理は、なお続いています。引き続き、依頼者の権利擁護に全力を尽くす所存です。

 

ご相談はこちらまで

外国人の在留問題、不法就労助長を理由とする退去強制事案、刑事手続と並行する入管手続、すでに敗訴している案件のご相談、雇用主側からのご相談――これらに関するご相談は、当事務所までお寄せください。

 

困難な事案ほど、私はお引き受けしています。

「他の事務所で断られた」

「もう手遅れだと言われた」

「裁判で負けてしまった」

そのような方にこそ、まずはお話を伺わせてください。本件のように、最後の最後で局面が動くことは、現実にあります。

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