ホストクラブに対する広告規制を争う方法
2025/09/10
1 ホストクラブにおける広告規制の概要
警察庁は、「接待飲食営業における広告及び宣伝の取扱いについて(通達)」を発令して、ホストクラブによる広告を規制する方針を明らかにしました。
https://www.npa.go.jp/laws/notification/seian/hoan/250603koukokusenden.pdf
具体的には以下のような行為が規制の対象となっています。
具体的には、客の遊ぶ意欲をそそり、ホストなどの間で競争意識を生じさせたりして、「営業に関する違法行為を助長するような歓楽的・享楽的雰囲気を過度に醸し出すもの」が違反になるとされています。
(1) 接客従業者の営業成績を直接的に示すもの
「年間売上〇億円突破」「〇億円プレイヤー」「指名数No.1」「億超え」「億男」
(2) 営業成績に応じた役職の名称等の営業成績が上位であることを推認させるもの
「幹部補佐」「頂点」「winner」「覇者」「神」「レジェンド」「総支配人」「新人王」
(3)「ランキング制」自体の存在、接客従業者間での優位性を裏付ける事実等の接客従業者間の競争を強調するもの
「売上バトル」「カネ」「SNS総フォロワー数〇万人」
(4)客に対して自身が好意の感情を抱く接客従業者を応援すること等を過度にあおるもの
「〇〇を推せ」「〇〇に溺れろ」
2 広告活動の自由は憲法21条1項で保障される
広告活動の事由は、いわゆる営利的表現の自由として、憲法21条1項により保障されるものと考えられます。
3 広告規制は、憲法違反の疑いがある
広告活動の自由は憲法21条1項により保障される憲法上の人権ですから、これを侵害する場合には、広告規制が憲法違反の疑いを生じさせます。
広告活動の自由の違憲性をどのような判断基準で判断するかは議論の余地があるところですが、①規制の目的と、②規制の手段に分けて比較考慮すべきでしょう。
まず、①広告規制の目的ですが、警察庁の通達が参考になります。
要するに、この広告規制の目的は、「接待により作出された歓楽的・享楽的雰囲気の影響に よる客の判断力の低下や、客の恋愛感情等に起因する接客従業者に優位な関係性に乗じた悪質な営業行為によって料金に関する重大なトラブル等が発生している状況が見られ、こうした悪質な営業行為を規制」することにあると理解されます。このような広告規制の目的自体の正当性は直ちに否定することができないと思います。
次に、②規制の手段の点については、憲法上、重大な疑義があるといわなければなりません。
そもそも、私の方で警察庁に通達制定に至った検討過程の行政文書の開示請求をしたところ、驚くほど杜撰なものでした。問題となっている広告規制を正当化するためには、規制の根拠が、立法事実により裏付けられていなければなりません。
広告規制で規制対象となっている事例についていえば、その広告を許容することで、「接待により作出された歓楽的・享楽的雰囲気の影響に よる客の判断力の低下や、客の恋愛感情等に起因する接客従業者に優位な関係性に乗じた悪質な営業行為によって料金に関する重大なトラブル等が発生している状況が見られ、こうした悪質な営業行為を規制」という実害との関連性については大いに疑問があるといわざるを得ません。
4 広告規制を争う方法
問題となるのは広告規制を争う方法です。通達そのものは法律ではなく、直接国民に対する法的拘束力を有するものではありません。しかし、警察庁からこのような実例が明示された広告規制が存在する現在では、いかに通達とはいえども、これに違反した場合には、段階的に行政処分等がなされる危険性が否定できません。
しかし、通達それ自体は、行政内部を拘束するものであり、現在の行政訴訟実務で裁判の対象とされる行政処分には該当しないで、通達を取り消すことはできません。
そこで現実的な方法としては、具体的な個々の行為が通達により規制されないことの地位の確認訴訟です(公法上の実質的当事者訴訟と言います。)。
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