TOEIC等語学試験の組織化替え玉受験・小型マイクカンニング事件において「リクルーター役」「指示役」と認定された中国籍留学生・大学院生当事者の方とそのご家族へ|有印私文書偽造・不正アクセス・組織的犯罪処罰法適用と在留資格保全の実務
2026/05/11
TOEIC等語学試験の組織化替え玉受験・小型マイクカンニング事件において「リクルーター役」「指示役」と認定された中国籍留学生・大学院生当事者の方とそのご家族へ|有印私文書偽造・不正アクセス・組織的犯罪処罰法適用と在留資格保全の実務
一、はじめに|事件構造の広がりと中国籍当事者の方々が巻き込まれる経路
近時、警視庁国際犯罪対策課は、TOEIC等の語学試験における大規模な組織化カンニング事件をめぐり、複数の中国籍当事者を相次いで逮捕いたしております。事件には試験会場内での小型マイクを用いた不正、替え玉受験票の偽造、同一住所に数十名同時申込みといった組織化犯罪の態様が含まれており、嫌疑者の一部は日本の大学院に在籍する中国籍留学生でもあるとのことでございます。捜査機関は組織内部に「リクルーター役・指示役・実行役・実音伝達役」等の役割分担が存在することを認定しており、中国SNS(微信・小紅書等)を介した大規模な募集ネットワークの存在も明らかになっております。同種事件はTOEICに限られず、他の英語・日本語・中国語・その他第二外国語試験、さらには各種入学試験・資格試験においても、類似する組織化カンニングの摘発例が散見されるところでございます。
このような事件は、中国籍の留学生・大学院生・在留資格更新申請者の方々にとって、その人生計画に深刻な影響を及ぼし得るものでございます。嫌疑者の方が「暴力」「窃盗」等の明白な犯罪行為を実行されていなかったとしても、適用される罪名は、有印私文書偽造・同行使罪(刑法159条1項・3月以上5年以下の拘禁刑)、不正アクセス禁止法違反(最高3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)、組織的犯罪処罰法違反(加重処罰類型では1年以上の有期拘禁刑)等、複数にわたる可能性がございます。結果として、入管法24条4号リの退去強制要件にも容易に到達しうる構造でして、在留資格更新拒否のリスクも極めて高くなります。
本記事では、中国籍の語学試験カンニング事件当事者の方とそのご家族の方々を対象として、関係罪名の構造・退去強制リスク・不起訴処分獲得・在留資格保全の実務戦略について、当事務所の経験を踏まえご説明申し上げます。
[手続流れ]
TOEIC等語学試験のカンニング事件に関する日本国内の刑事手続は、おおむね通常の刑事手続の流れに沿って進行いたしますが、事件の組織性および国際性から、次のような特徴を呈します。第一段階(任意捜査)として、捜査機関は試験運営機関(運営会社・大学試験部門等)の協力のもと、不審な答案・受験者写真・同一住所からの申込記録・通信履歴等について、数か月にわたる任意捜査を実施いたします。第二段階(逮捕)として、有印私文書偽造・同行使罪等の基礎罪名により逮捕(多くの場合は通常逮捕、すなわち令状を伴うもの)に至ります。第三段階(再逮捕)として、本件が組織化犯罪と認定されることから、別途の試験回(3月試験・6月試験等)や別罪名(偽造・不正アクセス・組織的犯罪処罰法等)ごとに、警察は分別して再逮捕を行います。結果として、累計数か月にも及ぶ身柄拘束が現実化することがございます。第四段階(送致・勾留・起訴)として、各再逮捕ごとに勾留10日間、最長さらに10日間を経て、検察官が起訴の可否を決定いたします。第五段階(公判)として、被告人の多くが中国籍で、かつ複数の共犯者が関与する事件ゆえに、公判期間も長期化する傾向がございます。
特にご留意いただきたいのは、留学・技人国等の在留資格の状態が、刑事手続の進展に応じて連鎖的に影響を受ける点でございます。勾留期間が数か月に及びますと、在留期間が満了し、更新手続が遅滞することがございますし、また身柄拘束期間中の出席率の低下により、留学資格が活動実態に適合しないと判断され、在留資格取消し(入管法22条の4)の直接の事由となりうる場合もございます。
[退去強制リスク]
本類型事件における退去強制リスクは、多層構造を有しております。第一層:4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑)——有印私文書偽造罪の法定刑は「3月以上5年以下の拘禁刑」でして、基礎罪名のひとつとして、宣告刑が1年を超える可能性は決して低くはございません。不正アクセス禁止法違反は法定刑自体は軽いものでございますが、他罪名との併合罪により加算されます。組織的犯罪処罰法の加重類型に至っては、法定刑の下限自体が1年以上であり、海外拠点詐欺事件と同様に、全部執行猶予の保護範囲は極めて限定的でございます。
第二層:在留資格取消し(入管法22条の4)——同条は、虚偽事実により在留資格を取得した場合や、在留期間中に当該資格に対応する活動を行っていない場合等に、入管庁が在留資格を取り消しうる旨を規定しております。留学資格を有する中国籍当事者の方が、カンニング事件で数か月勾留され、大学院出席率が顕著に低下し、研究成果が停滞する場合、「もはや留学資格に対応する活動を行っていない」と認定され、資格取消しの対象となる可能性がございます。一旦資格が取り消されますと、14日から30日以内に出国が義務付けられ、「カンニング事件があっても在留資格は存続する」という従前の見込みは完全に崩れ去ります。
第三層:在留資格更新拒否(入管法21条)——たとえ有罪判決が執行猶予にとどまり4号リに該当しない場合でも、次回の在留期間更新申請の際、入管庁は「素行不良」を理由に更新を拒否することがございます。同様に「不起訴処分の獲得」のみが必ずしも次回更新の獲得を保証するものではございませんが、実務上「無前科・無前歴」状態は、執行猶予判決と比べ更新獲得において遥かに有利でございます。
第四層:再入国不能——一旦退去強制が執行されますと、原則として5年から10年は日本への再入国が認められません(入管法5条1項9号・9号の2)。中国籍の留学生・大学院生の方にとって、これは将来のキャリアプラン・人生設計に対する破滅的打撃となります。
ここでも、当事務所が一貫して主張しております退去強制事由判断における故意・過失要件論(事例D-2)が、重要な意味を持ちます。組織化カンニング事件においては、中国籍嫌疑者の一部の方は実際には末端の「実音伝達役」や「受験票テンプレート提供役」を担われたに過ぎず、組織全体の構造を十分にご認識でなかった場合もございます。こうした被告人類型は、まさに「刑事の故意要件+退去強制処分の故意要件」の二重防御構造が最も実益を発揮するケースでして、当事務所の弁護戦略は接見の初動段階からこの論点を布石としてまいります。
[不起訴処分の重要性]
TOEIC等試験カンニング事件における中国籍当事者の方は、必ず起訴前段階での不起訴処分獲得を最優先目標とすべきでございます。理由は、上述の退去強制リスクに加え、在留資格更新が「無前科・無前歴」状態に強く依存することにございます。具体的な弁護活動の要点としては、第一に、「リクルーター役」嫌疑につき、実際の不正行為との主観的関連性が不十分であることを争い、幇助犯への降格または不可罰的事前行為の主張をいたします。第二に、「実行役」嫌疑につき、組織上層部からの欺罔・脅迫的状況を主張し、犯意の主体性の不十分性を争います。第三に、受験票偽造行為の「行使目的」の争点につき、単純な保持にとどまり行使意図はない(行使前段階)旨を主張いたします。第四に、不正アクセス禁止法における「特定電子計算機」の該当性等の技術的争点を充分に主張いたします。第五に、被害者(運営会社・大学等)との和解、社会内復帰条件の整備(在日活動の中止・帰国準備等)を通じて、検察官の起訴裁量に働きかけてまいります。
執行猶予判決の獲得のみを目標とする弁護方針は、留学生・大学院生類型の中国籍当事者にとって、その意義が極めて限定的でございます。執行猶予が宣告されたとしても、在留資格更新拒否のリスクは依然として存続し、結果として卒業・就職という人生の重要な節目において、帰国を余儀なくされる事態に直面することになります。入管法上の在留資格申請審査と、刑事手続の寛厳との間には、単純な対応関係は存しません。したがいまして、刑事手続段階から「前科の発生回避」を目標として、一貫した戦略を組み立てる必要がございます。
[初動対応3ポイント]
第一に、黙秘権の冷静な行使でございます。本類型事件の被疑者の方は、日本の捜査手続に初めて触れる場合が多く、過度に緊張されて「積極的に説明したい」「誤解を解きたい」というお気持ちになりがちでございます。しかしながら、組織内部の役割分担・他の共犯者の氏名・通信内容等のセンシティブな事項については、弁護人到着前には一切お話しにならないでください。一旦供述調書に署名されますと、後日の翻意は予想を遥かに上回る困難を伴います。第二に、早期の弁護人選任でございます。本類型事件は、事件数が多く、共犯者数も多く、再逮捕が頻発する性格を持っており、留学生・大学院生当事者の方には特に「刑事+入管+在学資格」の三位一体の対応に習熟した弁護人をお選びになることが重要でございます。第三に、専属通訳の確保でございます。捜査機関指定の通訳人は一般的な翻訳能力を有しておりますが、TOEIC・語学試験関連の専門用語(「小型マイク」「イヤホン送信」「替え玉」「受験票」等)について、双方向に正確な訳出ができない場合、調書内容が嫌疑者ご本人の真意から乖離してしまう危険性がございます。当事務所の中国語専属通訳は、本類型事件で頻繁に登場する用語に習熟しており、初期段階での誤訳に起因する根本的な不利を回避いたします。
[事務所案内]
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が独力で運営する事務所でして、中国籍の依頼者の方々を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野としております。本所の代表的な解決事例としましては、以下のようなものがございます。
事例C-1——卸業を営む依頼者が取り込み詐欺の被害に遭われた事件において、当事務所は刑事告訴を端緒として相手方を特定し、被害金を大きく上回る7,500万円の解決金獲得を実現いたしました。この実務能力は、本類型事件における被告人側の賠償和解交渉にも同様に適用可能でございます。事例G-1——令和6年6月26日大阪高裁判決のストーカー規制法警告処分取消等請求控訴事件において、当事務所は「警告は単なる行政指導ではなく法的効果を持つ」とする先例的価値の高い判決を獲得し、警察の行政処分の処分性論点を正面から突破いたしました。この行政法・憲法論の深厚な土台は、TOEIC等試験事件で問題となる入管行政処分・在留資格争点においても、決定的な作用を発揮いたします。事例D-2——入管法73条の2不法就労助長罪認定事件において、入管実務上前例のない在留特別許可を獲得し、責任主義の射程を行政処分の領域にまで及ぼす論点を、現実の実務において結実させた成果も有しております。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。当事務所は提携の行政書士事務所との連携により、在留資格更新・変更・在留特別許可申請等の手続にもワンストップでご対応申し上げます。万一、退去強制手続段階に進んでしまった場合にも、事例D-1として困難な事案を「一発」で在留特別許可獲得まで至らせた実績を踏まえ、刑事手続後の入管局面にも一貫して対応可能でございます。
[結語]
TOEIC等試験事件の中国籍当事者の方々は、その多くが「将来有望な留学生・大学院生・職業人」でいらっしゃいます。こうした事件におきまして、単に執行猶予判決を追求するのみで在留資格保全をないがしろにする弁護方針は、当事者の方々の今後の人生計画に致命的な打撃を与えかねません。何卒、逮捕された最初の時点から、入管法に精通した弁護人にご相談いただき、不起訴処分・無前科状態の保全を最優先目標として、数年あるいは永久に日本へ再入国できなくなるという最悪の結果を、お避けいただきますよう心より願う次第でございます。
本記事は一般的な解説でございまして、個別の事案については弁護士に直接ご相談くださいますようお願い申し上げます。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものでございまして、同様の結果を保証するものではございません。
[執筆者]
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得、不法就労助長罪認定事件における前例のない在留特別許可獲得等の解決実績を有する。
二、刑事手続の流れ(逮捕から起訴までの概要)
三、退去強制(強制送還)リスクの多層構造
四、起訴前段階での不起訴処分獲得の決定的重要性
五、初動対応における3つの重点(黙秘・早期弁護人選任・専属通訳)
六、当事務所の代表的な解決事例と対応体制
七、結語
執筆者情報
連絡先
舟渡国際法律事務所
網站:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
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