売春行為と退去強制事由(出入国管理及び難民認定法24条4号ヌ)
2026/01/30
1 はじめに
このブログでは、外国人が売春行為を行った場合における退去強制との関係について解説を行います。
2 売春行為の法的規制
売春行為を行った場合、①刑事事件としての側面、②入管法所定の退去強制事由としての側面に大きく分かれることになります。
①刑事事件としての側面
まず、売春行為を行った場合、売春防止法によって刑事処罰の対象となる場合があります。
刑事事件の場合には、逮捕され不起訴処分(起訴猶予、嫌疑不十分等)になるケースもあれば、有罪判決になるケースもあり様々です。
後述するとおり、外国人が被疑者となる場合、不起訴処分を獲得すべきことはもちろんですが、不起訴処分の中でも、「嫌疑不十分」を獲得することが重要です。なぜなら、「嫌疑不十分」の場合には、「刑事事件において犯罪の疑いはあるものの、有罪を立証できる十分な証拠が足りない場合に、検察官が下す不起訴処分の一つ」を意味するものとされているからです。この場合、イメージとしては、「無罪」に近いという意味合いです。
これに対して不起訴処分の中でも「起訴猶予」の場合には、「捜査機関において犯罪の立証を見込みが得られたものと判断しながら諸般の事情を考慮して、文字通り、起訴を見送る」ということを意味します。この場合、イメージとしては、捜査機関が有罪の判断を行ったに近いという意味です。
この無罪、有罪の違いこそが、外国人が当事者となる場合に、刑事事件としては特に意味がないとしても、退去強制事由としては大きな意味が出てくるのです。
②入管法所定の退去強制事由としての側面
退去強制事由としての売春行為は、「売春又はその周旋、勧誘、その場所の提供その他売春に直接に関係がある業務に従事する者(人身取引等により他人の支配下に置かれている者を除く。)」に該当する行為が、退去強制事由として規定されています(入管法24条4号ヌ)。
「売春又はその周旋、勧誘、その場所の提供その他売春に直接に関係がある業務に従事する者」の解釈については、これらの行為を行ったことそれ自体が退去強制事由なのであり、それが刑事事件で処罰されていることは要求されていません。
すなわち、刑事事件としては、不起訴処分となったとしても、入管の判断において、当該行為を行ったことが事実として判断されえてしまった場合、この退去強制事由に該当することなります。これを避けるためには、刑事事件の段階で、上記のとおり、「嫌疑不十分」による不起訴処分を獲得する必要があるのです。
3 在留特別許可制度における売春行為の取り扱い
外国人が退去強制事由に該当し、在留資格を喪失した後に、継続して日本で在留することができるための制度として「在留特別許可」の制度を指摘することができます(入管法50条)。
在留特別許可は法務大臣の裁量行為になり、積極要素、消極要素の様々な事情が考慮されることになっています。
在留特別許可に係るガイドラインによると、売春行為は、「自ら売春を行い、あるいは他人に売春を行わせるなど、本邦の社会秩序を著しく乱す行為又は人権を著しく侵害する行為を行ったことがあること」として、消極要素として考慮されるものとされています。
したがって、在留特別許可を検討する上でも、売春行為を行ったという事実認定を防止する必要があり、この点でも、刑事事件の段階から「嫌疑不十分」による不起訴処分を獲得する必要性が高いというべきです。
4 最後に
上記のとおり、売春行為は、刑事事件としての側面だけではなく、退去強制事由としての側面を持ちます。将来的な在留特別許可を考慮する場合、刑事事件の段階から「嫌疑不十分」による不起訴処分を狙う必要があるといえます。
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