舟渡国際法律事務所

警備業法欠格事由の違憲性と最高裁大法廷

お問い合わせはこちら

警備業法欠格事由の違憲性と最高裁大法廷

警備業法欠格事由の違憲性と最高裁大法廷

2026/01/16

1 事案の概要

 改正前の警備業法は、被保佐人であることを警備員の欠格事由として定めていました。

 原告は、被保佐人であったため、この規定が適用され、雇用契約終了の通知を受けて退職をしました。

 原告は、被告国に対し,国会が憲法22条1項等に反する本件規定を改廃せず存置し続けたことは違法であるとして、国家賠償を求めました。

 第1審(岐阜地判令和3年10月12日)は、一定の時点から退職時点までに本件規定を改廃しなかった国会の立法不作為は国賠法1条1項の適用上違法と評価されるというべきであるとして10万円の慰謝料の請求を認容しました。

 第2審(名古屋高判令和4年11月15日)は、第1審判決をさらに前進させ、警備業法を違憲無効と判断し、被告国に対し、損害賠償を命じました。

 

2 第1審(岐阜地判令和3年10月12日)の判断

 裁判所は、最高裁判所昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁参照を参照し、職業選択の自由に対する制限の判断枠組みを踏襲しました。

 具体的には、「憲法22条1項は,何人も公共の福祉に反しない限り,職業選択の自由を有すると規定している。職業は,人が自己の生計を維持するためにする持続的活動であるとともに,分業社会においては,これを通じて社会の存続と発展に寄与する社会的機能分担の活動たる性質を有し,各人が自己の持つ個性を全うすべき場として個人の人格的価値とも不可分の関連を有するものである。その一方で,職業は,本質的に社会的な,しかも主として経済的な活動であって,その性質上,社会的相互関連性が大きいものであるから,職業の自由は,それ以外の憲法の保障する自由,特に精神的自由に比較して公権力による規制の要請が強く,同項も「公共の福祉に反しない限り」という留保を付している。しかし,職業の自由に対する規制措置は事情に応じて各種各様の形をとるため,当該規制措置が憲法に適合するかどうかを一律に論じることはできず,具体的な規制措置について,規制の目的,必要性,内容,これによって制限される職業選択の自由の性質,内容及び制限の程度を検討し,これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない。そして,その合憲性の審査にあたっては,規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上,その具体的内容及び必要性と合理性については,立法府の判断がその合理的裁量の範囲内にとどまる限り,立法政策上の問題としてこれを尊重すべきものである。しかし,かかる合理的裁量の範囲については,事の性質上おのずから広狭があり得るのであって,裁判所は,具体的な規制の目的,対象,方法等の性質と内容に照らして,これを決すべきものと解される。(最高裁判所昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁参照)」と説示しています。

 裁判所は、一定の欠格事由を設けたことは、一般的に立法府の合理的な裁量の範囲内であるとしつつ、本件での問題は、法定後見までも欠格条項に取り込むことが立法府の裁量の範囲内であるか否かです。

 裁判所は、法定後見の制度趣旨は、本人の財産保護のためのものであると位置付けました。そして、このような法定後見の制度趣旨に照らし、法定後見を受けたイコール、警備業務の適正な実施のために必要な認知能力や判断能力の有無・程度を直接判定する制度ではないと判断しました。そして、法定後見を受けた者を警備業に従事させることでの警備上の弊害について、国会において、これを裏付ける資料を踏まえた具体的な検討がなされておらず、このような弊害は観念上のものに過ぎないと判断しました。裁判所は、最終的に、「本件規定による規制は,昭和57年改正当時から,あらかじめ警備業務の適正な実施を期待できない類型の者を欠格事由として定めて警備業務から排除し,警備業務の実施の適正を図ることにより,国民の生命,身体,財産等に対する危険を防止するという目的のために必ずしも必要かつ合理的な措置であるとはいえず,より緩やかな規制によっては上記の目的を十分に達成することができないとは認められないものであって,本件規定を設けるに当たり,その必要性と合理性に関する立法府の判断が合理的裁量の範囲内にとどまっていたとはいえない。」として、法定後見を欠格事由とする警備業法は憲法違反であると断じました。

 

3 一定の事由を欠格事由として取り込むことの問題点

 欠格事由は、様々な法律の分野で採用されています。

 そもそも、欠格事由とは、特定の資格、許認可、地位などを取得・維持することができない、法律で定められた条件や事柄のことです。国家資格の場合にも、一定の有罪判決を受けた場合等には、その資格が認められていないものが非常に多く存在します。

 欠格事由の効力の発生時期は、欠格事由に該当する事実が存在した瞬間です。ここでの問題点は、一定の欠格事由に該当すると認定されてしまったその瞬間に、法律上の資格が剥奪され、法律上の地位の変動が生じることなのです。

 

 このような問題は警備業法だけではありません。

 ストーカー規制法4条1項の文書警告を受けた事実は、銃刀法5条1項15号において、銃刀法の上の所持許可の欠格事由となっています。

 上記の警備業法の事案では、要するに、一定の欠格事由を設けて、職業選択の自由を制限することが、意味があることなのか否かが問われています。警備業法の事案では、これは観念上のものに過ぎず、「意味がない」と判断したのです。

 これをストーカー規制法4条1項の文書警告と銃刀法5条1項15号の関係についてみると、これを欠格事由として組み込むことは果たして意味があるのか否かという視点で検討すべきことになります。

 そもそも、ストーカー規制法4条1項の文書警告の実務的な取り扱いは「行政指導」であり、警告を受けた行為者が、本当にストーカー規制法に違反する行為を行ったか否か、適正に判断される制度ではありません。実務上は、「なんとなく危険そうであるから警告をしておこう」というようなレベルで発令されてしまうのがこの文書警告なのです。

 このように考える時、文書警告を受けた事実は、イコール、銃刀法上の危険性を意味しないのです。

 

 私が担当したストーカー警告事件(大阪高判令和6年6月26日)は、ストーカー冤罪の場合の画期的な救済方法を開拓したものです。このブログで述べたようなストーカー規制法の文書警告を銃刀法の欠格事由として取り込むことの問題点については、いずれ是正されるべき問題であると断言します。

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京を中心に刑事事件の弁護

東京にて行政事件に関する対応

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。