ストーカー警告の誤解を解く方法と注意点
2025/10/18
1 はじめに
この記事では、ストーカー規制法に基づく警告を受けてしまった場合に、これを取り消す方法とその注意点ついて解説します。この記事でいうストーカー警告は、口頭警告とストーカー規制法4条1項の文書警告を指すものとします。
ストーカー警告を受けてしまったが、誤解なので納得できないからストーカー警告を取り消したい、というご相談が数多く寄せられています。
2 ストーカー警告の要件
(1)口頭警告の場合
口頭警告それ自体は、厳密にはストーカー規制法に基づく法律上の制度ではありません。
法的根拠としては、警察法2条1項に基づくものと位置付けられています。
口頭警告の場合は、ストーカー規制法に抵触する疑いがある場合に、警察の裁量でなされるものです。口頭警告の場合はこのようなレベルで発令されるものですので、冤罪の場合が非常に多いと言えます。
(2)文書警告の場合
ストーカー規制法4条1項によると、文書警告は、以下の要件を満たす場合に、発令することができるとされています。
①警告申出者(被害者)からの警告を求める旨の申出があること
②つきまとい等又は位置情報無承諾取得等をして、その相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせたこと
③当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認められること
3 ストーカー冤罪の恐怖
上記のとおり、口頭警告、文書警告のいずれも基本的には警察の裁量で発令することができるものです。法的な位置付けとしては、いずれも従来の警察実務上は、「行政指導」と理解されてきたものです。口頭警告、文書警告が「行政指導」であると理解される最大の問題は、これらを発令する際に、行為者の言い分を聞く必要はないとされていることです。
この問題点については、別の記事で解説をしているので参照してください。
【ストーカー冤罪でお困りの方】ストーカー規制法4条1項の警告を取り消す方法
いずれにしても、口頭警告、文書警告のいずれも、「行政指導」と理解されていること、ストーカー規制法の要件が非常に抽象的なものであること等から、ストーカー冤罪を生む温床となっているのです。
4 ストーカー警告を取り消す方法
(1)口頭警告の場合
上記のとおり、口頭警告は、純粋な行政指導ですので、これを取り消すという概念がありません。
警察官から挨拶をされた場合、これを取り消すことは考えられないことと同様です。
口頭警告をなかったことにしたい場合、すなわち、口頭警告の威力を消滅させる現実的な方法としては、口頭警告に該当する事実がないことを警察、被害者に対して説明することです。
このほか、違法不当な口頭警告がなされた場合には、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求をすることが考えられます。
(2)文書警告の場合
上記のとおり、文書警告も、現在の警察実務では行政指導と理解されているので、これを取り消すという概念がありません。しかし、文書警告は、令和6年大阪高判が明確に判断したとおり、明確な法的な法的効果があるので、将来の判例変更によって取り消す余地が否定できません。
現状ではこれを取り消す方法はありません。同様の効果をもたらすものは、警告が付着しない地位の確認訴訟(文書警告が無効であること)という法的手段があります。
文書警告をなかったことにしたい場合、すなわち、文書警告の威力を消滅させる現実的な方法としては、文書警告に該当する事実がないことを警察、被害者に対して説明することです。
このほか、違法不当な文書警告がなされた場合には、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求をすることが考えられます。
5 ストーカー警告の誤解を解く方法と注意点
上記のとおり、ストーカー警告の誤解を解く方法自体は存在します。
しかし、ストーカー警告が発令された場合には、警察からは、被害者と接触しないように指導されますので、現実的には被害者と接触することは非常に危険です。
特に、ストーカー警告を受けた行為者本人からの接触は、それが独立したストーカー行為に該当すると判断される可能性が高いので要注意です。
弊所では、ストーカー警告の誤解を解きたい場合、事前に警察に、ストーカー警告の判断が法的に誤っていることを指摘し警察を牽制した上で、当事者間で交渉をしたいことを伝えてから、警告申出者と交渉をしています。その際に、弁護士による交渉でもストーカー行為として評価されないように細心の注意を払って、ストーカー警告の誤解を解くように交渉しています。
6 最後に
このようにストーカー警告の扱いは非常に難しいものがあります。
したがって、ストーカー警告に納得ができず、誤解を解きたい場合には、ストーカー警告に精通した弁護士にご依頼をすることを強くお勧めします。
誤解のままストーカー警告を受けてしまった行為者のダメージは相当であると思います。前に進むために、弁護士を通じて誤解を解いていきましょう。
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