【ストーカー冤罪でお困りの方】ストーカー規制法4条1項の警告を取り消す方法
2025/09/03
この記事では、ストーカー規制法4条1項の警告を受けてしまった場合に、これを取り消す方法について解説します。
ストーカー規制法の仕組みについて解説します。
ストーカー規制法上のつきまとい行為等を行なったとされる場合、
ストーカー規制法に基づき、口頭警告、文書警告、禁止命令、ストーカー行為罪での立件が予定されています。
この記事では、行政措置である、口頭警告、文書警告、禁止命令のうち、文書警告を争う方法について取り上げたいと思います。
ストーカー規制法4条1項によると、文書警告は、以下の要件を満たす場合に、発令することができるとされています。
①警告申出者(被害者)からの警告を求める旨の申出があること
②つきまとい等又は位置情報無承諾取得等をして、その相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせたこと
③当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認められること
日本の行政訴訟では、行政の行為の全てを争うことができるものではありません。
裁判で争うことができるのは、処分性がある行為に限られるとされています(当事者訴訟の議論は除外します。)。
処分性というのは、当該行為が、「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」と解されています(最判昭和39年10月29日判決)。要するに、処分性とは、行政の行為のうち、法的効果がある行為に限られるとされています。
従来の実務的な解釈では、文書警告は、法的効力を有しないもの、すなわち「行政指導」であると理解され、処分性はないものとされてしまっていました。確かに、ストーカー規制法の枠組みだけをみる限り、文書警告に従わなかった場合には、刑罰等直接的な制裁措置はないので、行政指導ではないかと考えられていました。
ところが、平成20年の銃刀法改正によって、文書警告を受けた場合、銃刀法上の所持許可を絶対に受けられない法的地位の変動が生じることになりました。このように平成20年銃刀法改正によって、何ら法的効力のなかったはずの文書警告に紛れもない法的効果が生まれてしまったのです。
私は、この問題点を見抜き、ストーカー冤罪を晴らすため、文書警告の取り消しを求める行政訴訟を提起しました。それが奈良ストーカー警告事件です。
令和6年6月26日大阪高裁判決は、私の見解を採用し、文書警告には法的効果を有するところまで正面から認めました。上記の処分性の定義に照らすと、この時点で本来な処分性は認められるべきなのです。
しかし、上記大阪高裁は、「行政処分としない立法がなされたものと捉えられる」と解釈して、結論として、処分性を否定したのです。
しかし、この大阪高裁判決は、日本国憲法の制定に伴い淘汰された明治憲法下の議論を復活させるものであり、致命的な論理矛盾を犯しているのです。
処分性を立法(国会)が個別に決定するのは、戦前の列記主義の時代の発想であり、日本国憲法下ではすでに淘汰されている見解です。
このように、文書警告は銃刀法の規定を別としても、単なる行政指導にはとどまらない強力な威力を秘めているものと言わざるを得ません。
ストーカー対策を適切にすべきことは言うまでもありません。
しかし、そのような強力な効力があるならば、被行為者に適切に反論の機会を付与すべきであると考えます。ストーカー対策が叫ばれる中、その背後には、事実無根でストーカーに仕立て上げられてしまった多くのストーカー冤罪の被害者が存在することを忘れてはなりません。
文書警告の処分性を認めさせる訴訟については、次の訴訟で更に徹底的に戦っていきたいと思います。
結論として現在の実務では、一度、文書警告が出てしまった場合にはこれを裁判で争うことはできないとされています。そうであるからこそ、文書警告を受ける前に、弁護士に依頼して、事実上、文書警告の要件を満たさないことを反論して、文書警告を未然に防ぐ必要があるのです。
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