舟渡国際法律事務所

日本で不法就労・資格外活動の疑いで逮捕されたら

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日本で不法就労・資格外活動の疑いで逮捕されたら

日本で不法就労・資格外活動の疑いで逮捕されたら

2026/03/22

日本で不法就労・資格外活動の疑いで逮捕されたら

中国人当事者・雇用者・ご家族へ

本記事は法的アドバイスではありません。個別の事件については、必ず刑事弁護士にご相談ください。

1. はじめに――こんな事件が増えています

2026年2月、都内の中華料理店で在留資格外のスタッフとして外国人を雇用していたとして、中国籍の経営者が入管難民法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕されました。経営者は「日本の法律違反ではないと思っていた」と述べたと報じられています。同種の事件は飲食店・製造業・マッサージ店など様々な業種で相次いでいます。

「知らなかった」「悪意はなかった」という状況でも逮捕される点が、この種の事件の最大の特徴です。当事者・雇用者・ご家族は、日本の入管法と刑事手続きの両面から早急に対応する必要があります。

 

2. 不法就労・資格外活動とは何か

日本では、外国人が働くためには在留資格に定められた活動の範囲内であることが必要です。以下の3つが「不法就労」に該当します。

 

類型

具体例

不法滞在・被退去強制者が働く

在留期限切れ、密入国した状態での就労

就労許可を受けずに働く

観光ビザ(短期滞在)での就労、許可なしの留学生アルバイト

許可された範囲を超えて働く

「技術・人文知識・国際業務」の資格で飲食店調理補助に従事、留学生が週28時間を超えて勤務

 

3. 不法就労助長罪の過失認定は非常に厳しい

「知らなかった」では済まされない——これが不法就労助長罪の核心です。

 

根拠条文:入管法第73条の2第2項

入管法第73条の2第2項(条文)

前項各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。

ただし、過失のないときは、この限りでない。

(出入国管理及び難民認定法第73条の2第2項)

 

この条文が意味するのは、次の2点です。

  • 原則:「知らなかった」は免責事由にならない
  • 例外:「過失がなかった」と証明できた場合のみ処罰を免れる

 

問題は、この「過失なし」の立証が実務上極めて困難な点です。警視庁も「在留カードの確認をしていない等の過失がある場合は処罰の対象となります」と明示しています。在留カードの確認を怠るだけで過失ありと判断される傾向があり、適切な確認手続きを踏んでいなければ、主観的に「知らなかった」という事実は助けになりません。

 

「過失がない」ことを立証するには何が必要か

確認事項

具体的な対応

在留カードの有効期限

採用時・定期的に在留カードを目視確認し、コピーを保管

就労制限の有無

在留カード表面の「就労制限の有無」欄を確認

資格外活動許可

裏面の「資格外活動許可欄」も必ず確認

在留カードの真正性

出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」サービスで確認

業務内容と在留資格の一致

採用後の業務が在留資格の許可範囲内か継続的に確認

 

実務では、たとえこれらの確認をすべて行っていても、「偽造カードを見抜けなかった」「業務内容の確認が甘かった」と判断され、過失ありとされるケースもあります。不法就労助長罪は「やったかやっていないか」ではなく、「防げたか、防ぐ努力をしていたか」が問われる犯罪です。

 

4. 外国人が不法就労助長に問われると退去強制のリスクがある

不法就労助長罪は、日本人の雇用主にとっては刑事罰の問題です。しかし、外国人が同罪に問われた場合には、刑事罰に加えて退去強制(強制送還)という深刻なリスクが生じます。

 

刑事罰と退去強制——二つの手続きが並行して進む

手続き

根拠法

過失の要件

結果

刑事罰(不法就労助長罪)

入管法73条の2

過失あり→処罰、過失なし→免責の余地あり

懲役・罰金

退去強制(行政処分)

入管法24条3号の4

故意・過失を問わず適用(現在の実務)

強制送還・再入国禁止

 

最重要:退去強制は「過失なし」でも適用される

刑事手続きでは「過失のないときは免責」という条文が存在します。しかし退去強制については、入管法24条にそのような規定がありません。現在の実務および裁判所の解釈では、退去強制事由としての不法就労助長には故意も過失も必要とされていません。

つまり:不起訴になっても、無過失が認められても、退去強制される可能性があります。

 

5. 衝撃の判例――無過失・不起訴でも退去強制(東京高裁2025年7月)

この問題が社会的に注目されたのが、2025年7月24日の東京高裁判決です。

 

事案の概要

X氏(中国籍・女性)の事案

  • 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で関西の人材派遣会社に契約社員として勤務
  • 管理部門に所属していたが、会社の都合で派遣登録希望者の面接も担当させられた
  • X氏の業務は提出書類の受領・不足確認にとどまり、在留カード確認の指導は受けていなかった
  • 2021年、X氏が面接した就労資格のないベトナム人が採用され、不法就労が発覚
  • 大阪府警の捜査を経てX氏は2021年12月に不起訴処分(起訴猶予)となった
  • しかし入管が別途調査し、2023年10月にX氏を「不法就労助長」として退去強制の対象と認定
  • X氏は退去強制処分の取り消しを求めて提訴。一審・東京地裁(2025年3月)は請求を棄却
  • 控訴審・東京高裁(2025年7月24日)も一審を支持し、退去強制処分を「妥当」と判断
  • X氏は現在、最高裁に上告ないし上告受理申立て中

 

高裁での代理人・松村大介弁護士(舟渡国際法律事務所)のコメント

高裁審理からX氏の代理人を務めた松村大介弁護士(舟渡国際法律事務所)は、弁護士JPニュース(2025年9月15日)のインタビューで以下のように語っています。

 

Xさんはもともと採用部門ではなく『管理部』の人でした。日本語の能力が万全ではないにもかかわらず、当時社長だったB氏の都合で、訳も分からないままに『あれもやれこれもやれ』と指示され、それに従わざるを得なかったという背景があります。……仮にXさんに過失があるとしても、退去強制処分という著しい不利益を伴う制裁を甘受しなければならないほどのものだったとは考えられません。

松村大介弁護士(弁護士JPニュース 2025年9月15日)

 

『不法就労助長』等にあたる行為の中には、『うっかりミス』もあり得ます。ましてや、過失すら要求しないとなれば、Xさんのように容易に退去強制処分を受けたりするリスクを抱えることになります。これでは、外国人は日本で安心して働けず、企業側も雇用することができません。……このままでは日本は外国人労働者に選んでもらえない国になり、社会経済の深刻な停滞を招く。

松村大介弁護士(弁護士JPニュース 2025年9月15日)

 

この判決が示すこと

この判決は次の重大な事実を確認しました。

  • 不起訴……刑事手続きで不起訴となっても、入管は独自に退去強制手続きを進めることができる
  • 無過失……刑事手続きで過失なしと評価されても、退去強制手続きでは故意・過失は問われない
  • 重大不利益……在留資格に基づき生活の基盤を築いてきた外国人に対し、それを奪う処分でも過失不要とされた

 

毎日新聞の報道(2025年7月24日)

外国人に不法就労をさせた場合、過失がなくても強制的な国外退去(退去強制)の対象とする入管法の解釈が妥当かどうかが争われた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は24日、「妥当」との判断を示した。……刑事罰としての不法就労助長罪は「故意や過失が必要」と規定しているのに対し、行政処分の退去強制にはこうした規定がなく、訴訟では故意や過失がない不法就労助長も退去強制の対象となる法解釈の是非が争点となった。

(毎日新聞 2025年7月24日付報道より要約)

 

6. 逮捕後の手続きと「不起訴が最優先」の理由

逮捕から最長23日間の身柄拘束が続きます。刑事手続きと入管手続きは並行して進みます。

 

段階

内容・期限

逮捕

身柄拘束。逮捕直後は弁護士以外との面会不可

検察庁へ送致

48時間以内

勾留請求・判断

24時間以内(裁判官が判断)

勾留

原則10日、最長20日まで延長

起訴 または 不起訴

不起訴→前科なし。ただし入管手続きは別途進行

入管手続き

刑事結果にかかわらず退去強制手続きが始まる可能性

 

注意:勾留中に在留期限が切れる場合

逮捕・勾留中に在留期間が満了すると、その時点でオーバーステイ(不法残留)となります。不起訴・無罪になっても、オーバーステイを理由に退去強制される可能性があります。弁護士を通じた在留期間の更新申請が必要です。

 

不起訴を目指すことが最優先である理由

刑事結果

入管上の影響

不起訴

前科なし。入管手続きでの在留特別許可を求める際に有利な事情となる

有罪(執行猶予付き)

退去強制事由に該当する可能性あり(詐欺・窃盗・偽造等の場合は特に)

有罪(実刑)

退去強制はほぼ確実。服役後に強制送還

不起訴でも(入管が独自認定)

上述の東京高裁判決の通り、退去強制となる可能性がある

 

外国人にとって「不起訴」が特別に重要な理由

不起訴処分となれば前科がつかず、在留特別許可を求める際に「刑事責任を問われなかった事実」が有利に働きます。有罪判決(たとえ執行猶予付きでも)は退去強制事由と直結する可能性があります。日本人なら「執行猶予で済んだ」と安堵できる結果が、外国人にとっては帰国・家族離散を意味する場合があります。不起訴獲得こそが、日本での生活を守る最前線の防衛ラインです。

 

7. 弁護士に依頼するメリット

① 早期釈放・勾留阻止

弁護士は勾留請求への異議申立てや準抗告ができます。入管法違反事件は比較的軽微なものも多く、早期に弁護士が動けば釈放の可能性が高まります。

② 不起訴処分の獲得

「在留資格の範囲を知らなかった」「確認義務を果たしていた」などの事実を丁寧に立証することで、不起訴処分を目指すことができます。特に過失の有無の主張・立証が弁護活動の核心となります。

③ 在留期間更新の代理申請

勾留中に在留期間が満了する場合、弁護士が出入国在留管理局への更新申請を代理で行うことができます(申請取次の届出をした弁護士に限ります)。

④ 入管手続きへの対応

刑事手続き終了後も、退去強制手続きの中で在留特別許可を求めることができます。弁護士が代理人として口頭審理に立ち会い、事情説明や主張を行います。東京高裁判決が示す通り、不起訴になっても入管手続きは続きますので、入管法に精通した弁護士への依頼が不可欠です。

 

8. ご家族・雇用者がまずすべきこと

  1. すぐに弁護士に連絡する 逮捕の知らせを受けたら24時間以内に、刑事弁護と入管法の両方に対応できる弁護士を探してください
  2. 中国語対応の弁護士を確認する 日中両語に対応できる事務所、または中国語通訳が手配できる事務所を優先してください
  3. 在留カードの有効期限を確認する 勾留中に在留期限が切れないよう、弁護士に更新手続きの代理を依頼してください
  4. 雇用の記録を保全する 雇用契約書、在留カードのコピー、業務内容の記録、給与明細など過失がなかったことを示す証拠を保管してください

 

9. よくある質問

Q. 「在留資格があれば何の仕事でもできる」と思っていました。違うのですか?

在留資格はそれぞれ活動できる範囲が定められています。例えば「技術・人文知識・国際業務」の資格を持つ人が、許可外の単純労働に従事すると資格外活動となります。在留カードの「就労制限の有無」欄を必ず確認してください。

Q. 不起訴になれば退去強制されないのですか?

必ずしもそうではありません。2025年7月の東京高裁判決が示す通り、刑事手続きで不起訴になっても、入管が独自に不法就労助長の認定を行い退去強制手続きを進める可能性があります。不起訴は入管手続きで有利な事情となりますが、完全な防御にはなりません。入管法に詳しい弁護士への相談が必要です。

Q. 採用時に在留カードを確認していれば不起訴になりますか?

在留カードを確認し適切な業務に就労させていれば、過失がなかったとして刑事処罰を免れる可能性が高まります。ただし、在留カードの偽造も増えているため、出入国在留管理庁の確認システムの利用や業務内容の継続的チェックも必要です。

 

まとめ

不法就労助長罪の過失認定は非常に厳しい——「知らなかった」は原則として免責されません(入管法73条の2第2項)。「過失がなかった」と証明できた場合のみ例外的に免責されますが、その立証は容易ではありません。

外国人が不法就労助長に問われると退去強制のリスクがある——刑事手続きでは「過失なし」で免責の余地があります。しかし退去強制については故意・過失は問われないというのが現在の実務・判例の立場です(東京高裁2025年7月24日判決)。

不起訴でも退去強制されうる——2025年の東京高裁判決はこの厳しい現実を確認しました。松村大介弁護士(舟渡国際法律事務所)はこの事案で「外国人は日本で安心して働けなくなる」と警鐘を鳴らしています。

不起訴獲得が最優先——在留資格に基づき日本で生活する外国人にとって、有罪判決(執行猶予付きでも)は退去強制に直結しかねません。刑事弁護と入管法の両方に精通した弁護士に逮捕直後から相談することが最も重要です。

「まず弁護士に連絡する」——これが最も重要な第一歩です。

 

本記事は公開情報をもとに一般的な解説を行ったものであり、個別の法的アドバイスではありません。具体的な対応については、刑事弁護の経験を持つ弁護士

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