【不法就労助長】制裁的行政処分には過失が必要
2025/11/04
1 はじめに
この記事では、制裁的行政処分の成立要件として過失が必要であるとの立論につき解説をします。
この訴訟は、令和7年(2025年)の私の代表作として位置付け、引き続き最高裁の判断を仰いで参ります。
2 事案の概要
相談者は、ある会社で翻訳業務を行う契約社員です。この会社では、採用業務は正社員の責任者と代表者のみが行うと定められていました。
相談者は、業務部の採用担当者に共有する前に、臨時にベトナム人の採用希望者から履歴書等を受け取る作業を行いました。後にこのベトナム人は就労資格を持たず、他人の在留カードを借用したなりすましであったことが判明しましたが、上告人を含む誰もが不法就労であることを認識していませんでした。
この行為が、入管法第24条第3号の4イの「事業活動に関し、外国人に不法就労活動…をさせる」に該当すると判断され、上告人は退去強制の危機に瀕しています。これが「本件違反認定処分」です。
後記3で述べるとおり、従来の判例に照らせば、本件違反認定処分は行政処分に位置付けられることから、上記の相談者が訴える事情は、本件違反認定処分の成立との関係では、何ら考慮要素とはならないものでした。
相談者を救済するために行った立論こそ、「制裁的行政処分」の理論です。
3 従来の判例学説の理解
従来の判例では、行政処分の成立要件としては、客観的な違反事実のみが問題となり、行為者の主観は成立要件とならないとされるものが多数でした。
これに対して学説では、制裁的行政処分の理論に代表されるとおり、一定の不利益を課す行政処分はその成立要件として行為者の過失が要求すべきとするものが多数的な見解です。
裁判例の中には、横浜市路上喫煙事件に代表されるとおり、制裁的な行政処分には、行為者の過失があってはじめて制裁としての抑止効果が期待できるとして、制裁的行政処分の成立要件として行為者の過失を要求するものも出現していました。
4 不法就労助長違反認定事件における立論
・入管法の規定自らも、「他人の行為に巻き込まれた場合には」、退去強制事由として明文がない場合であっても、行為者の過失を要求する(法務省の公式解釈、法務省OBの解説書でも同旨)。
・制裁的行政処分には過失が必要。
・本件違反認定処分は、相談者の日本での生活基盤を剥奪し強制送還に直結するものであり、この不利益の重さに鑑みて、行政処分一般の議論は採用すべきではない。
5 最後に
排外主義の流れが進んでいます。
真に制裁を受けるべき外国人はこの訴訟の結果に関わりなく、故意・過失が認定され、強制送還の対象となることに変わりはありません。
この訴訟の意義は、過失がないような事案の場合に救済手段を開拓することにあるのです。この訴訟は、令和7年(2025年)の私の代表作として位置付け、引き続き最高裁の判断を仰いで参ります。
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