【不法就労助長行為】行政処分に過失は不要との一般論は不法就労助長行為に妥当しない
2025/11/02
1 はじめに
本記事は、入管法に基づく退去強制の原因となる「不法就労助長行為」をめぐり、その成立要件に「過失」が必要か否かという憲法上の論点を最高裁判所に問うた上告理由書の内容を要約したものです。
2 事案の概要
上告人は、ある会社で翻訳業務を行う契約社員です。この会社では、採用業務は正社員の責任者と代表者のみが行うと定められていました。
上告人は、業務部の採用担当者に共有する前に、臨時にベトナム人の採用希望者から履歴書等を受け取る作業を行いました。後にこのベトナム人は就労資格を持たず、他人の在留カードを借用したなりすましであったことが判明しましたが、上告人を含む誰もが不法就労であることを認識していませんでした。
この行為が、入管法第24条第3号の4イの「事業活動に関し、外国人に不法就労活動…をさせる」に該当すると判断され、上告人は退去強制の危機に瀕しています。これが「本件違反認定処分」です。
3 憲法31条違反
上告人の主な主張は、以下の点に集約されます。
本件違反認定処分は、上告人の生活基盤を剥奪する「制裁的行政処分」である。憲法31条が保障する「責任主義」は、刑罰だけでなく行政制裁にも妥当すべきである。ベトナム人が不法就労であることを全く知らず、かつ採用業務の実質的な権限もなかった上告人に対し、何ら責任がないのに制裁的処分を行うことは、憲法31条に違反するのではないか。
上告人は、行政処分であってもその制限を受ける権利利益が極めて重大(在留資格・生活基盤の剥奪)であり、かつ、入管法が達成しようとする公益の目的が「不法就労助長行為の抑止」にあることから、過失のない者にまで処分を課しても「抑止」の効果が期待できないと主張しています。
この点について、上告人は、過料処分を行政上の秩序罰と捉え、「抑止」という制裁的機能に着目して過失の必要性を正面から認めた横浜市路上喫煙条例事件の判例の考え方を援用し、本件違反認定処分にも過失を要求すべきだと論じています。
原判決は、不法就労助長行為の成立に過失を要するとの上告人の主張を無視し、過失を要しないと判断した点で、憲法31条に違反する違憲違法な判断である。上告人には、不法就労の認識を欠くことについて何ら過失が認められないため、入管法第24条第3号の4イの不法就労助長行為は成立せず、本件違反認定処分は違法である。よって、原判決は破棄・取り消されるべきである。
4 最後に
弊所では憲法訴訟に勢力的に取り組んでおり、これまでの案件の中には実務に一石を投じたものも少なくありません。この不法就労助長訴訟については、外国人の人権を蔑ろにする危険性を孕んでいるものでもあり、引き続き徹底的に戦っていきたいと思います。
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に民事事件に対応
東京を中心に刑事事件の弁護
東京にて企業法務をサポート
東京にて行政事件に関する対応
----------------------------------------------------------------------
