舟渡国際法律事務所

池袋ストーカー殺人事件に学ぶ――「ストーカー冤罪」を晴らす方法、警告を取り消す方法

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池袋ストーカー殺人事件に学ぶ――「ストーカー冤罪」を晴らす方法、警告を取り消す方法

池袋ストーカー殺人事件に学ぶ――「ストーカー冤罪」を晴らす方法、警告を取り消す方法

2026/03/28

舟渡国際法律事務所 弁護士 松村大介

はじめに

 

池袋ストーカー殺人事件は、ストーカー被害の深刻さを改めて社会に突きつけた。しかし私はこの機会に、もう一つの重要な問題も伝えなければならない。

 

ストーカー規制法は、冤罪を生む法律でもある。

私が代理人を務めた奈良ストーカー警告事件は、まさに誤解によって女性が一方的にストーカー扱いされてしまったケースだ。悲惨な事件が報道されるたびに「もっと厳しく取り締まれ」という世論が高まる。しかしその圧力の中で、無実の人間が「ストーカー」の烙印を押されるリスクもまた高まっている。

 

ストーカー警告とは何か

ストーカー規制法4条1項に基づく「文書警告」は、警察本部長等がつきまとい等の行為をした者に対して発するものだ。

この警告は、警察庁の公式解釈によると行政指導、つまり「それに従うかどうかが対象者の任意に委ねられるもの」とされてきた。行政指導と解する限り、被害者側の申し出があっても、警察には警告を発する義務は生じない。 

警告を受けても懲役や罰金はない。しかし、その影響は甚大だ。

警告を受けた事実は記録に残り、その後の禁止命令・逮捕へのステップが一段低くなる。就職・資格・在留資格にも影響しうる。そして何より、「ストーカー」というレッテルは社会的信用を根底から傷つける。

 

なぜ冤罪が生まれるのか

私がかつて担当したケースでは、3年にわたり付きまとわれ苦しんでいるのに「110番通報をしなかったあなたが悪い」などと言われ続けて対応してもらえなかった事例がある。他方で、ストーカー行為にあたるか疑わしい程度の学校内での学生間のトラブルで、警告が発せられた事例もある。また、一方的に交際関係を打ち切ろうとした男性が、ストーカー行為をしていない女性に対する警告を求めたと疑われる事例もある。 

つまり警告は、本来保護されるべき被害者が「加害者扱い」されるという逆転現象を生む場合がある。

 

奈良ストーカー警告事件――私が戦った理由

私が代理人を務めた事件では、日本の大学に通う中国籍の女性が、同じ研究室の先輩男性の申し出により、奈良県警からストーカー規制法4条1項の文書警告を受けた。全くの身に覚えのない、誤解に基づく警告だった。

従来の判例・実務では、この警告は「行政指導であり裁判で争えない」とされていた。しかし私はこれに徹底的に異議を唱えた。複数の行政法学者から意見書を取得し、立法過程の内部資料まで分析し、法廷で3年間戦い続けた。

大阪高等裁判所(令和6年6月26日判決)は、警告に法的効果が存在することを正面から認め、地位確認請求についても警告の存否を巡る紛争が現在の法律関係に関するものであることを認め、警察側の主張を全面的に排斥した。欠格事由たる地位変動は、後続処分ではなく、警告によって生じるという画期的な判決を獲得した。 

この判決により、「ストーカー警告は争えない」という従来の常識が覆された。

 

警告を取り消すための具体的手段

では、不当なストーカー警告を受けた場合、どう対処すればよいか。

① 早期の弁護士相談

警告の手続きが進む前に弁護士に相談することが最重要だ。警告発令前であれば、差止めが可能な場合がある。私が担当したケースでも、ストーカー規制法の法律論を徹底的に主張した結果、文書警告の発令を阻止できた事例がある。

② 警察への異議申し立て

警告を受けた段階で、警察に対して事実関係の説明と異議申し立てを行う。この際、弁護士を通じて書面で行うことが効果的だ。口頭での弁解は「全く相手にされない」ケースが多い。

③ 行政訴訟(取消訴訟・当事者訴訟)

奈良事件の大阪高裁判決により、一定の場合に警告の取消しを求める訴訟が認められることになった。警告の処分性が認められれば、取消訴訟の提起が可能だ。

④ 国家賠償請求

違法な警告によって損害を受けた場合、国家賠償請求訴訟も選択肢となる。

⑤ 刑事事件化の阻止

警告に続いて刑事事件化が見込まれる場合、刑事弁護人として早期に介入し、事件化を防ぐことが重要だ。立法資料・内部資料を取り寄せ、法解釈の誤りを徹底的に主張する。

 

一般論として――規制のバランスが重要な理由

「川崎ストーカー事件を契機にストーカー規制法は規制が強化されるはずです。同時に忘れてはならない視点は、規制の網を大きく広げすぎると、かえってストーカー冤罪を生む温床にもなり得るということです。」 

一般論として、過剰な規制は私的領域への国家の過剰な介入につながる。適切な証拠・手続きなしに「ストーカー認定」が行われることは、監視社会への道を開くおそれがある。被害者保護と適正手続きの両立こそが、ストーカー規制法の目指すべき姿だ。

まとめ――身に覚えのない方は必ず相談を

ストーカー警告・禁止命令を受けた方、あるいは受けそうな方は、一人で抱え込まず早急に弁護士に相談してほしい。

「争えない」と思わないでほしい。奈良事件が証明したように、徹底的に戦えば道は開ける。

 


松村大介(まつむら だいすけ) 舟渡国際法律事務所 代表弁護士 第一東京弁護士会所属。慶應義塾大学法科大学院修了。 令和6年、大阪高裁でストーカー警告の処分性を認める画期的判決を獲得。NHK「未解決事件」取材協力、岩波書店刊行物へのコメント提供。被害者・加害者双方の代理経験を持つストーカー規制法の第一人者。 📍 東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階(高田馬場駅徒歩5分) WeChat ID: matsumura1119

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