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【判例解説】貸金業者監督指針に基づく警告の処分性

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【判例解説】貸金業者監督指針に基づく警告の処分性

【判例解説】貸金業者監督指針に基づく警告の処分性

2025/09/12

1 はじめに

 弊所では、社会の耳目を集める数々の難関事件や従来の実務を乗り越える先進的な訴訟を手掛けています。これらの案件は実務に一石を投じたものも少なくありません。

 中でも弊所の代表的な案件として「奈良ストーカー警告事件」を挙げることができるでしょう。

 現代では、一見すると「行政指導」等の事実行為とも思われる行為が、事実上の強制力を持っている法的仕組みも少なくありません。この記事では、このように事実上の強制力を持って実施される行政行為に対する司法的統制について論じてみたいと思います。

 

2 奈良ストーカー警告事件

 事実無根のストーカー規制法に基づく文書警告に対し、取消を求めて訴訟を提起しました。従来は行政指導とされ訴訟の対象外でしたが、法の構造等を緻密に分析し、これは司法審査の対象となる行政処分であると主張しています。これまで法的効力がないとされてきた実務上の解釈を覆し、警告が持つ法的な効果を認めた極めて画期的な判決です。

 この事件では一見すると「行政指導」とも解されるストーカー警告が、実は行政指導では説明できない法的効果を有することを正面から認めた画期的な事件です。

 

3 貸金業者監督指針に基づく警告の処分性

 事案の概要の要旨は、貸金業法の登録をしていない者が、第三者に対して金銭を貸付け、貸金業に該当する行為を行なっていたところ、財務局長から当該行為を「やめるよう」警告された事案です。

 処分性に関する最高裁判例は、「当該行為によって、直接国民の権利義務を確定し、その範囲を確定させるもの」であるかという基準を採用しているものと理解されます。

 この判例の定式に従う限り、いかに監督官庁からなされるものであっても、そして警告を無視した場合に刑事事件の端緒となりかねない告発が予告されていたとしても、それは事実上の不利益であり、処分性を基礎付けるものとはいえないでしょう。

 さらに私が補足しておきたい箇所は、この警告が「しないよう」に警告するという部分です。法令用語の場合、厳格に使い分けてしようされています。

 内閣法制局の使用法によると「してはならない」は「不作為の義務を課す」場合に用いられる用語です。これに対して、当該行為の履行を自発的に求めるものの場合には、「しないよう」「しないよう」との文言が用いられるのです。一般的な「警告」「勧告」「指導」「助言」は「しないよう」「しないように」との文言が用いられることが多いのです。このような観点からも当該警告の処分性は否定されるべきです。

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